第7話 嵐のように過ぎ去る女神







 最近、俺はやる気が漲っていた。


 エルテンシアがぐちぐち言いながら理由を付けてはサボろうとするが、それが気にならないくらいやる気がある。


 何故かって?


 そりゃあ君。働いたら働いた分、素晴らしいご褒美が待っているからだよ。



「アグリア様!! 今日はランク5以上のスキル、三つ持ってきました!!」


「おう、毎日ありがとうな。早速――って、おいおい。まだ脱いでる途中だろうが」



 俺はアグリア様に迎えられると同時に、その大きなおっぱいに抱き付いた。


 アグリア様のおっぱいは弾力がある。


 体温が高いのか、その谷間は常に汗ばんでいて香ばしい匂いがするのだ。


 臭いのではない。


 女を感じさせる芳醇なフェロモンをムンムンに漂わせている。

 このフェロモンこそ、俺がやる気を漲らせている物質だ。



「すぅー、はぁー。すぅー、はぁー」


「くすぐってぇっての。あと二分だぞ」



 俺とアグリア様の取り引きは、ランク5以上のスキルの果実一つに付き一分間おっぱいを好きにしていいというもの。


 その間は揉むも自由、吸うも自由である。


 時々アグリア様が頭を優しく撫でてくれたりするのでまじ最高。



「おい、もう終わりだ」


「あぁ……俺のおっぱい……」



 時間が過ぎ、俺はアグリア様のおっぱいから離されてしまう。


 名残惜しいが、時間は時間だ。


 俺はアグリア様に挨拶して、中央の浮島にある小屋へと戻った。


 この小屋はアグリア様が用意してくれたもので、広くはないが、ベッドとテーブル、簡易キッチンがある。


 まあ、簡易キッチンは一度も使ってない。


 アグリア様からランク1のハズレスキルの果実は好きに食べていいと許可をもらったからな。


 基本的にはそれで食事を済ませている。



「で、アンタは何してんだ?」


「何って、見て分かるでしょう? ゴロゴロしているのです」



 小屋に帰ってきたら、何故か俺のベッドでエルテンシアがゴロゴロしていた。


 ちっ。


 アグリア様の香りが鼻の奥に残ってる間に一人遊びしたいのに……。



「自分の小屋に戻れよ」


「竜季さん!! 貴方は私にあんな犬小屋のような狭い場所で寝泊まりしろと仰るんですか!?」



 エルテンシアの小屋は俺の小屋よりも更に一回り小さい。

 ベッドがあるだけの、まじで寝泊まりするだけの小屋である。



「そうだよ。お前は自分の家で寝泊まりしろ」


「いーやーでーすー!! 女神には女神に相応しい寝床があるのです!! 本当はこのような些末なベッドで眠るのも嫌なのです!!」


「じゃあ退けよ!! その些末なベッドは俺が眠る場所だ!!」


「きゃっ、ちょ、服を引っ張らないでください!! おっぱい出ちゃいますから!!」


「露出の多い服着てるからそうなるんだよ!! このドスケベ女神!!」


「だ、誰がドスケベですか!! 露出が多いのは女神の美しい肌を見せるためで、決して卑猥な意味はないのですよ!!」



 あーだこーだ言いながら取っ組み合いの喧嘩にまで発展する。


 エルテンシアは今、魔力を封じられている。


 しかし、方や俺は最近までニートをしていた非力な男。


 実力はトントンの争いだった。



「ひゃんっ!? 今、私のおっぱいを揉みましたね!?」


「わざとじゃねーよ!!」


「認めました!! この男、女神の玉体に触れやがりました!!」


「うるせー!! 今の俺は荒ぶってるからな、あんま抵抗するなら乳を揉む以上のすんごいことするぞ!!」


「いや!! 来ないでください!! ケダモノに犯されちゃいますー!!」



 と、その時だった。


 リンゴーン、と小屋に取り付けられているベルが鳴る音がした。



「ん?」


「あら、誰でしょう?」


「アグリア様、か? スキルの果実は届けたばかりなんだが……」



 来訪者が誰かは分からないが、出ないわけにはいくまい。


 俺は玄関の戸を開いた。



「……貴方が、ヤマムラですか?」


「え? ええと、はい。俺が山村竜季です」


「……そう」



 玄関を出ると、そこに立っていたのはでっかい女の人だった。


 おっぱいもでっかいが、何よりその身長である。


 エルテンシアは170センチ、アグリア様に至っては180に届きそうなほどの長身だが、目の前の女性はそれ以上。


 2メートル近くあるのではなかろうか。


 青みがかった銀色の髪は地面まで届きそうなほど長く、その顔立ちは恐ろしく整っている。


 太ももはムチムチで腰はキュッと細く締まっており、肌は色白で西洋人形を彷彿とさせる美貌の女性だった。


 エルテンシアやアグリア同様、その身にまとう衣装は露出度が高い。



「私はマリリエッタ。大海の女神。貴方に話があって参りました」


「は、話? もしかして、スキルの果実のことですかね? だ、だったら、浮島まで一度お連れいただいたら明日からお届けしますよ」


「それもありますが、違う用事です」



 そう言うと、女性改めマリリエッタ様がずいっと俺に顔を近づけてきた。


 うお、顔が整いすぎてて眩しい!!



「最近、アグリアが信者に授けているスキルの質がやたらといい。貴方が作ったものですか?」


「た、多分、そうじゃないですかね?」


「……そう。であれば、私にもランクの高いスキルを譲ってほしいのですが」


「わ、分かり、ました」



 うーむ、困ったな。


 高ランクのスキルはアグリア様に優先的に譲る約束だし……。


 ま、別に気にしなくていいか。


 今まで通りアグリア様には高ランクのスキルをお渡しして、程よい質のスキルをマリリエッタ様に渡そう。


 などと考えていると、マリリエッタが何故か俺の顔をまじまじと見つめてきた。



「え、えーと、何です?」


「……貴方から、とてもアグリアの匂いがします」


「ギクッ」



 まずい。


 パイパイでお支払いしてもらっていることがバレるのは色々とまずい!!



「あ、あー、あれですね。さっきアグリア様のお宅にスキルを届けに行っていたので……」


「相当密着しないと、その匂いは着かないはず。何かしてたのですか?」


「ソ、ソンナコトハ……」



 俺は視線を彷徨わせながら、必死に言い訳を考えるが……。


 当然ながら、上手い誤魔化しは浮かばない。


 こうなったらとにかく知らぬ存ぜぬを貫き通すしかあるまい。


 ていうか匂いって何よ!! 犬ですか貴女!!



「……そう。言いたくないなら、構いません。アグリアに聞きます」



 それだけ言い残して、マリリエッタは消えてしまった。


 な、何だったんだ……?



「ま、いいや。それよりそろそろ、アレやるか」



 俺は嵐のように現れては過ぎ去っていったマリリエッタを気にしつつ、前から気になっていたことに手を出す。


 それは、スキルの種の研究だ。


 






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「結構早めに完結しそう」


山村「え? 何故に?」


作者「展開が思い付かぬ」



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