第6話 パイパイでお支払い
「しくしく、私はなんて可哀相な女神なのでしょう。人間にコキ使われて、こんな姿を見たらお母様が悲しむわ……」
「じゃ、もう一回水汲んできて」
「鬼!! 悪魔!! 人でなし!! 普通は美女の涙を見たら動揺するものですよ!?」
俺は労働力改め、エルテンシアを好きに使っていいということになった。
水を運ばせるだけでもかなり効率が変わる。
その証拠に俺はスキルの種に魔力を込める作業に没頭できるため、一日に植えられる種の数が十五個になった。
今のところは順調だ。
ただ一点、エルテンシアが泣き言ばかりなのが少し鬱陶しくはある。
「うぅ、どうして女神の私がこんな目に……」
「アグリア様も言ってただろ。お前のやらかしたことは世界が滅びかねない大事だったって。魔力を封印してスキル農園を手伝わせるだけとか十分な温情だろ」
これはアグリア様からも聞いたから間違いない。
エルテンシアのやったことはまじで第八世界と地球で全面戦争が起こってもおかしくないことで、許されたのは奇跡とのこと。
俺がここで働きたいと言ったのが大きかったのだろうか。
と、そんなことなど関係ないと言わんばかりにエルテンシアが騒ぎ始める。
「ついにお前呼ばわり!? そんな、ニートと同格扱いされるなんて!!」
「おいコラ。今は働いてるからニートじゃねーよ、この駄女神!!」
「駄っ!? 私はこれでも数百万の信者を抱える超すごい女神なのですよ!? それを言うに事欠いて駄女神などと!!」
「え、じゃあ他になんて言うんです? 戦犯女神ですか? 犯罪女神ですか? 魔力も封印されて力を使えないお前なんか怖くねーんだよ!! この顔と乳と身体にしか取り柄のない駄女神が!!」
「――っ!!!! 言っちゃ駄目なこと言いやがりました!! 女神侮辱罪です!! 死刑死刑!!」
「うるせぇ!! こちとらテメーのせいで飢え死にしそうになったんだぞ!! そっちこそ殺人未遂だろうが!! 働いてその身体で罪を償えバーカ!!」
「馬鹿って言った方が馬鹿ですー!!」
ああ言えばこう言う。
どうやらエルテンシアは魔力を封印され、不思議パワーも使えなくなったらしい。
普段からその力に頼っていたからか、エルテンシアは息を切らしながら水の入ったバケツを運んでくる。
「はあ、はあ、もう無理ですぅ」
肩で息をするエルテンシア。
その頬を紅潮しており、汗の滴る色白な肌が綺麗だった。
なまじ顔と身体がいい分、妙にエロい。
特にエルテンシアの着ている女神服は布面積が小さくて結構肌を露出しているのだ。
俺は視線を気取られぬよう、チラ見しながらスキルの種に魔力を込める。
しかし、何度か見ているうちに視線がバッチリと合ってしまった。
「竜季さん、何を見て――ははーん? 分かりましたよ? さては私の溢れ出んばかりの神聖な女神オーラに見惚れてしまったんですね?」
「神聖さの欠片もないだろ。俺が見てたのはお前のデカ乳だ」
「!?」
おっと。
あまりにも見当違いなことを言うので本音を言ってしまった。
「ふ、ふふふ、そうですね。この手がありました!!」
「は?」
「竜季さん、私のおっぱいを好きにしていいのでぇ、今日はもう働きたくないなーって」
「……ふむ」
一瞬だけ思考がフリーズした。
しかし、それは時間にして一秒にも満たない本当に一瞬の出来事だ。
何故なら俺はノータイムで揉みに行ったから。
「ひゃんっ!? ちょ、え、揉むんですか!?」
「お前が揉んでいいって言ったんだろ」
「言いましたけど!! たしかに言いましたけど!! 躊躇がなさすぎですよ!!」
「親父から『女の乳は揉める時に揉め』と教わってな」
「このろくでなし親子!! そこは童貞ニートらしく『でゅふ、ば、馬鹿なこと言うなよ、女神様』とか言うところですよ!!」
黙っていれば顔はいいし、乳もデカイし、エロいから観賞用にはいいかも知れないが、いちいちニート呼ばわりしてきて腹立つ。
「お前、喧嘩売ってんの? 買うぞ? 親父を馬鹿にすんのはともかく、俺をニート扱いするのはそろそろやめてもらおうか!! お前の乳を二十四時間引っ張って垂れ乳にしてもいいんだぞ!!」
「セクハラです!! 世の中の女性を敵に回しますよ!!」
ここは神域。
俺と神様以外に誰もいないし、その神様からはエルテンシアを好きにしていいと言われている。
中にはエルテンシアのやらかした事が事なのでいっそ性奴隷にしてもいいという意見まで神様間で出たとアグリア様が言っていた。
つまり、俺のセクハラは正当化されている。何も問題は無いのだよ。
「っと、そろそろ収穫だな」
俺は実ったスキルの果実を拾い集め、それらをカゴに入れて配達先の女神様の浮島に向かう。
今日はアグリア様のいる浮島だ。
いやまあ、今日はというか、しばらくはアグリア様の浮島にしか行けない。
というのも俺はアグリア様から目的地を叫べばその場所に一瞬で移動できるアイテムを貸してもらったのだ。
しかし、このアイテムは一度訪れた場所じゃないと効果を発揮しないそうだ。
神様同士では基本的にテリトリーに立ち入るのが厳禁らしく、アグリア様に連れていってもらうとかはできないとのこと。
スキルの果実を欲した神様に一度スキル農園に来てもらうしかない。
だからしばらくはアグリア様と取り引きだ。
あ、初日にエルテンシアが放射線とか危ないので浮島に極力近寄らない方がいいと言っていたが、あれは全部嘘らしい。
自分を通してスキルの果実を他の神様に転売しようとしていたとか何とか。
もはやエルテンシアが本当に女神なのか疑わしくなってくるな。
「アグリア様の家まで!!」
その一言で景色が切り替わる。
目の前には無骨というか、現代ではあまり見ないレンガの家が一つ。
俺はその家の扉をノックして叫ぶ。
「ちわーす、三◯屋でーす」
国民的アニメに登場する酒屋さんの真似をしながら中に入る。
すると、アグリア様が俺を出迎えた。
「おう、よく来たな」
「へへっ、今日はいいブツが揃ってやすぜ」
「そのキャラ付けはなんなんだよ……」
俺はカゴからスキルの実を取り出した。
銅色が三十二個、銀色が九個、そして金色が一つある。
「おいおい、ランク7のスキルまで作れたのか?」
「はい!! 一日分の魔力を込めた種が実ったらこうなりました!! アグリア様にはお世話になったんで、どうぞ!!」
「あたしは当たり前のことしただけなんだがな。でもま、もらっとくぜ」
スキルの果実の受け渡しを終える。
ここで渡したスキルの果実は、すぐに地上の人々に贈られるらしい。
少し前までは成人した人間全員に渡していたそうだが、現在はスキルの果実が不足しているため、スキルを与える相手を絞っている。
正直、俺が作ってもまだまだ足りない状態だ。
でもまあ、だからといって俺にできるのは黙々とスキルの果実を育てることのみ。
「じゃあ、俺はこれで」
「ああ。……いや、ちょっと待て」
「え? なんです?」
ちゃちゃっとスキル農園に戻ろうとすると、何故かアグリア様に呼び止められる。
「今後もし高ランクのスキル……そうだな、ランク5以上のスキルの果実ができたらあたしに優先的に譲ってくれねーか?」
「え? えーと、いいんですか? そういうの?」
「お前もエルテンシアを見て分かってると思うが、いいスキルを信者に与えたら信仰も集まるし、いいこと尽くめでな。あたしだって母上の後釜を狙ってんだ。できることはなんだってするさ。だからこれは取り引きだ」
「取り引き?」
そう言うと、アグリア様はどういうわけか服を脱ぎ始めた。
ただでさえ布面積の小さい露出過多な衣装だったが、褐色色の大きなおっぱいが「ぶるんっ♡」と姿を現す。
「な、何を!?」
「ずっと目で追ってんのがバレバレなんだよ。ランク5以上のスキルを優先的に譲ってくれんなら、あたしのおっぱい好きにしていいぜ?」
「……ごくり」
いや、落ち着け。
おっぱいならエルテンシアのものを何度か揉んだじゃないか。
今さらおっぱいを揉むくらいで満足しない。
そう思っても、やはり自分を飢え死にさせかけたやらかし女神の乳と恩人のおっぱいとでは価値が違う。
「う、うっす」
「タツキが話の分かる男でよかった。ほら、約束通り好きにしていいぜ?」
俺はその日から、アグリア様にパイパイでお支払いしてもらうことになった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「世の中パイパイでお支払いが出来たら絶対平和になると思うの」
山村「そんな平和あっていいのか」
「親父の教えで笑った」「パイパイは草」「んな平和あってたまるか」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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