第5話 労働力(駄女神)をゲットする
俺は何を見せられているのだろうか。
「ち、ちちちち違うんですぅ!! 私は何も悪くないんですぅ!!」
「遺言はそれでいいんだな? ああ?」
一見すると、柄の悪い美女が清楚な美女をカツアゲしている光景に見えなくもない。
ここは神域にあるエルテンシアの住まう浮島。
立ち入ると同時に周囲の景色が真っ白な空間へと変わってしまった。
どことなく最初に来た謎空間に似ている。
「おかしいと思ったんだよ。普段から面倒臭がりなテメーが珍しくスキル農園の問題解決に積極的だったことがな」
「そ、そんな!! 私はただ地上の人々が安心して暮らせるように願っていただけなのです!!」
「テメーが上位天使を壊したことはもう知ってんだよ!! そっちの――あー、わりぃ。おい、人間。てめーの名前を聞いてなかったな」
「あ、すみません。山村竜季です」
「おう。よろしくな、タツキ。で、そのタツキから諸々の事情は聞いたんだよ!!」
アグリア様がエルテンシアの胸ぐらを掴み、ブンブンと揺する。
「なっ、わ、私より竜季さんの言うことを信じるんですか!? 竜季さんが私を陥れるために嘘を吐いている可能性もありますよ!! ほら見てください!! 人間の浅ましさを濃縮したような汚れた目をしています!!」
「このクソ駄女神、本性を現しやがったな!!」
確かに俺が浅ましいのは否定しないが、今のエルテンシアからは最初に会った時のような女神っぽさが欠片もない。
前は猫を被っていたのだろう。
もう絶対に許さん!! その無駄にデカイおっぱいを引っ張って長乳にしてやる!!
「竜季さんがやたらと嫌らしい指の動きをしている!? な、何をする気ですか!? 助けてください、アグリア!! 私、人間に汚されてしまいます!!」
「テメーのやらかしたこと考えりゃ当然だ。こいつ飢え死にしかけたんだぞ」
「へ? 飢え死に?」
「……はあー、本気で意識してなかったんだな。いいか? 人間は飯を食わなきゃ死ぬんだよ!! あと寝ないと疲れが取れねーんだ!! テメー本気でスキル農園をどうにかするつもりあんのかコラ!?」
……ふむ、何故だろうか。
見た目や言動はエルテンシアの方が王道清楚な女神っぽいのだが、アグリア様の方が遙かに女神っぽい。
「つーかよぉ、エルテンシア。タツキはどう見てもこの世界の人間じゃねーよなぁ?」
「ギクッ。い、いや、そ、そんなこと、ないと思いますけど……」
「おい、タツキ。お前はどこの世界の出身だ?」
「地球です。地球の日本育ちです」
「……は?」
俺が地球という名前を出した瞬間、アグリア様から表情がストンと消えた。
「おい、エルテンシア」
「ひっ、な、なん、なんですか?」
「地球の神から、許可は、取ったんだよな?」
「……と、取り、取りまし、た……」
視線を彷徨わせながら言うエルテンシア。
俺はハッとして、ここぞとばかりにアグリア様にチクる。
「嘘です!! 俺がスキル農園の話を断ろうとしたら地球の神様にバレる前に始末しようとか言ってました!!」
「あ、ちょ、竜季さん!! 今は余計なこと言わないで――」
「――お゛い゛」
ドスの効いたアグリアの声にエルテンシアがビクッと身体を震わせる。
「よりによって、第一世界の、地球の人間を無断で連れてきた上に断ったら殺すと脅して一週間も放置しやがったのか?」
「え、ええと、そ、それは、そのぉ」
「……そうか、よーく分かった」
その次の瞬間だった。
エルテンシアは手足をピンと伸ばしながら、頭から地面に垂直に刺さった。
デカすぎるおっぱいが引っかかって地面に埋っているのは首だけだが、凄まじい勢いで突き立てられたのだろう。
ギャグ漫画でしか見たことのない感じでエルテンシアが地面に埋まっている。
アグリア様がやったのだろうか。
速すぎて俺には何も見えなかったが、やっぱり戦の女神だからアグリア様はめちゃくちゃ強いのかもしれない。
その強い女神様が俺の方に向き直った。
「すまなかった、ヤマムラタツキ」
「え?」
アグリア様が俺に頭を下げてきた。
「お前は必ず元の世界に帰す。エルテンシアにも償わせる。だからどうか、許してほしい」
「い、いやいや、頭を上げてくださいって!! 悪いのは全部エルテンシアなんで!! アグリア様が謝る必要はないですよ!!」
「いや、身内のしでかしたことだ。知らぬ存ぜぬで許されることじゃねぇ」
えーうっそ、アグリア様めっちゃ人格者やん。
ここまで言われて謝罪の受け取りを断るのは流石に良くないよな……。
「分かりました、謝罪は受け入れます。だから頭を上げてください」
「……わりぃな。お前はすぐ元の世界に帰す」
「あー、いえ、その、なんていうか。俺は本当に気にしてないですよ? 危うく餓死寸前でしたけど、スキルの種が育つのは見てて楽しいですし」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどな。お前本人がよくても、地球の神が黙っちゃいねぇ。下手したら第八世界と地球でガチンコ戦争だ。これは面子の問題だからな」
「え、まじすか」
「まじだ」
どうやら事態は俺が思っているよりも遙に深刻らしい。
と、その時だった。
向かい合う俺とアグリア様の間にどこからか一枚の紙切れが降ってきた。
「ん? なんだこれ?」
俺が紙切れを拾うと、そこには誰かからのメッセージが書いてあった。
その内容は――
『本人が許すなら気にしなくていいよん♪ でも次に同じことしたら滅ぼしちゃうゾ♪』
え、地球の神様どこかから見てる!?
俺とアグリア様は揃って辺りをキョロキョロ見回すが、当然地面に埋っているエルテンシア以外に人の姿はない。
すっげー怖いんですけど!!
「あー、えっと、許された、のか?」
「みたいです」
「……じゃあ、その、あたしたちはエルテンシアの馬鹿がやらかしたせいで困っててよ。改めてよろしく頼めるか?」
「うっす」
どこか微妙な空気になりながら、俺はアグリア様と互いに顔を見合わせる。
「で、問題はエルテンシアだな。あいつに与える罰はお前が決めていいぞ」
「え? まじっすか? じゃああのデカ乳揉んでいいっすか?」
「……お前、欲望に正直だな。まあ、そういうのは嫌いじゃないが」
というわけで俺はアグリア様が見てる前で、地面に刺さったまま気絶しているエルテンシアの乳を揉みしだいた。
憎たらしいエルテンシアだが、おっぱいはまさに極上の一言に尽きる。
柔らかすぎて指が沈むのだ。
このままもっとえろい悪戯をしてしまいたいが、流石にアグリア様の前なのでやめておく。
「満足しました」
「お、おう、そりゃよかったな。じゃあ、後のコイツの処遇はあたしらが決めさせてもらうぜ」
そう言って俺はスキル農園に戻され、エルテンシアはアグリア様に連行されていった。
その翌日の出来事。
アグリア様がエルテンシアを連れてスキル農園にやってきた。
「エルテンシアは全魔力を封印することになった。神としての力は一切使えなくなるが、お前の手伝いをさせることができる。労働力としてコキ使っていいぞ。煮るなり焼くなり好きにしていいぞ」
「こんなの横暴ですよぉ!! 私、ちょっとしか悪いことしてないのにぃ!!」
俺は労働力(女神)をゲットした。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「ノータイムで揉みに行くのか……」
山村「逆に行かない理由ある?」
「大体エルテンシアが悪い」「地球の神にバレてて草」「いや、ない」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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