第4話 うっすらと腹筋が割れてる女の人にエロを感じる




「俺、なんか沢山スキル持っちゃってる!?」



 翌朝。


 俺は自分の体調を確認がてら〈神の眼〉で自分を調べたところ、大量のスキルを獲得していることに気付いた。


 まあ、理由は間違いなくスキルの果実をドカ食いしてしまったからだろう。


 驚きはしたが、反省はしない。


 あのまま何も食べなかったら餓死してたのは俺だからな。



「それにしても何というか、地味なスキルばっかだな」



 俺が獲得したスキルは〈裁縫〉や〈伐採〉など、あまり強そうなイメージが湧かないものばかりだった。


 いわゆるハズレスキルである。


 十個食べた果実のうち九つが銅色だったし、ハズレスキルの数もちょうど九つ。

 つまりは銅色の果実はハズレスキルの果実ってことになるな。


 しかし、一つだけ俺は銀色の果実を食った。


 その果実を食って得たスキルはおそらく、このスキルに違いない。





◇スキル 〈合成〉


◇ランク 5


◇効果 対象を選択し、合成する。成功率は合成対象の内包魔力量に依存する。





 他のスキルがランク1〜3に対し、〈合成〉がランク5だった。

 エルテンシアが作った虹色の果実はたしかランク10+の〈惑星崩壊〉だったから……。


 銅、銀と来ていきなり虹というのはソシャゲだとかなり変だ。


 銀と虹の間にもう一色、金がありそう。


 仮に金色の果実があるとして、色別に以下のようになるはず。



 ランク1~3 銅色


 ランク4~6 銀色


 ランク7~9 金色


 ランク10~ 虹色



 って感じだと仮定しよう。


 この場合、金や虹は多分レア物なので食べちゃダメだろう。


 後でエルテンシアに怒られるのは嫌だからな。


 今後、空腹に陥った時に食べるなら銅色、多少の贅沢をしても銀色の果実だな。


 え? また食べるつもりなのかって?


 そりゃそうよ。こっちだって餓死は御免被るし、俺の食事や住まいを用意してくれないエルテンシアに問題がある!!



「さて、と。腹も膨れたし、一眠りして魔力も全快した!! スキルの種を植えまくって食料確保兼、スキルの果実作りじゃい!!」



 俺は種に魔力を込めまくり、ひたすら耕した土に植えていく作業をした。

 まだ家庭菜園程度の広さだが、最低限自分の食える分が作れるくらいには拡大したいところだな。


 しかし、俺一人では限界がある。


 せめて湖から水を汲んできてくれる人が一人いるだけでかなり楽になるんだがなあ。


 そんなことを考えながら作業に没頭する。



「うーむ。今さらながら、スキルの種に込める魔力の量とスキルのランクって関わりがあるのか?」



 少なくとも種に込める魔力の質が影響するのは分かっている。

 だってエルテンシアが魔力を込めた種はとんでもないスキルの果実を実らせたからな。


 気になるのは適当に魔力を込めた最初の十粒だ。


 俺はその全てに同じくらいの魔力しか込めていないが、一つだけ銀色の果実が実った。



「まさか完全ランダムってことはないだろうし、色々試してみるか」



 というわけで今日は、一粒の種にすべての魔力を込めてみた。


 パッと見では変化はない。



「……ま、植えてみたら分かるよな」



 俺は全魔力を込めた種を植え、あとは畑の側に座って二、三日目にスキルの種を植えた場所をぼーっと眺めて時間を潰す。


 と、その時だった。


 ポコンとスキルの種を植えていた場所の土が盛り上がったのだ。


 そして、にょきにょきと芽が出てきた。



「昨日のことといい、スキルの種って急激に成長するんだな……」



 昨日、俺が食った果実は畑に転がっていた。


 スキルの果実を実らせたであろう木は役割を終えて朽ちたのだろう。


 昨日見た時には果実だけがあった。


 普通の植物とは違って見ていて面白いが、一つの実を実らせて朽ちる木というのは非効率極まりないと思うのは俺だけだろうか。


 と、俺はそこで芽が成長を止めたことに気付いた。



「一気に成長するわけじゃないのか? なんか木ってか、葉っぱみたいになったな」



 その後もしばらく見ていたが、そのスキルの種は成長する様子を見せなかった。


 気になったので、近づいてよく見る。



「……おい、まさかこれって……」



 俺は成長を止めた葉っぱを掴み、勢いよく引っこ抜いてみた。


 なんとびっくり。


 引っこ抜いてみたら土の中から大根のような形をした実がでてきたではないか。



「ちょっと待って!? スキルの実って根菜のパターンもあんの!? 統一しろよ!!」



 ダメだ。


 スキルの種の成長に全く規則性がなくて困惑してしまう。



「取り敢えず収穫したけど……」



 収穫したスキルは全部で五つ。全て銅色だ。


 〈神の眼〉で詳しく調べてみると、やはり全てランク3以下のハズレスキルだった。


 腹が膨れている今、あまり高価なものを食べるのは忍びないのでランク1スキルの果実だけを俺の食事用に取っておこう。



「美味い。……美味いけど……」



 銀色の果実よりは甘味が少ない。


 もしかしたら、ランクの高いスキルを宿した果実ほど味もいいのかも知れないな。



「……虹色はどんな味なんだろ?」



 別に世界の均衡を崩すようなスキルがほしいわけではないが、味が気になってきた。


 でもそれは流石に食べられないよな……。


 俺の魔力じゃそもそも作れないし、想像するだけ無駄か。


 ……ふむ。



「……〈合成〉でスキルの果実を合成したらどうなるか気になるな……」



 気になったらもう止まらない。


 俺は〈神の眼〉を使うのと同じ要領で〈合成〉を発動し、手元に残ったスキルの果実を合成した。


 その結果――



「うぇ!? 合成失敗した!?」



 最悪な事態に陥った。


 合成は失敗したら素材に使ったものが消滅してしまうらしい。


 今日食べるはずの果実を失ってしまった。


 俺はその場で膝を折り、地面に拳を叩きつけて泣き叫ぶ。


 

「オゥノゥ!! 次の果実が実るまで待たなきゃいけないのかよー!!」


「おいおい、急にデカイ声出すなっての」


「え?」



 急に知らない声が聞こえて、俺は辺りをキョロキョロ見回した。


 しかし、誰も見当たらない。



「どこ見てんだ。あたしは目の前だぞ」


「ひやえ!?」


「くっくっくっ、ビビリすぎだろ」



 いつの間にか目の前に女性が立っていた。


 燃え盛るような真っ赤な髪と獰猛さを隠すつもりのないギラギラした黄金の瞳。


 肌は焼けた小麦色をしており、肩やへそ、胸元や太ももが露出したやたらとエッろい格好の美女だった。


 腹筋がうっすらと割れている……。エロい。


 しかし、その女性は長身で、おっぱいが大きくて柔らかそうだった。



「あ、あの、どちら様……いや、多分神域にお住まいの女神様というのは分かるんですけど」



 俺はそのおっぱいをチラ見しながら言う。


 女性は俺の視線を意に介していないのか、胸を持ち上げるように腕を組み、おっぱいを強調した。



「ああん? お前、あたしのこと知らないのかよ」


「す、すみません。エルテンシア……様からは聞いていなくて」


「チッ、あの女……」


「ひゃひっ!?」



 女神様(推測)が舌打ちをした。


 めちゃくちゃ美人なのに、その表情が凶悪で手足が震えてくる。


 この神様、綺麗だけど怖い!!



「あー、クソッ。わりぃな、ちょっとイライラしちまった。あたしはアグリア。十二神柱の一角で、戦の女神だ」



 俺がビビり散らかしていることに気付いた女神様改め、アグリア様がバツの悪そうに謝罪する。


 あ、あれ? 怖いけど、怖くない?



「あ、え、お、お気になさらず」


「おう、じゃあ気にしねーことにする。それより、お前ここに来てどれくらいだ?」


「一週間と少し、です」


「ああ? 一週間? ちっともスキルを作ってねーじゃねーか!! 何してんだよ!!」


「……その、食べちゃって……」


「は?」


「じ、事情を!! 事情を聞いてください!! 俺は悪くないんです!! 全部エルテンシア様、いやもう敬称なんか要らねぇ!! エルテンシアのせいなんですぅ!!」



 俺はありのままを話した。



「……つまり、テメーは飢え死にしそうになってスキルの果実に手を出した、と?」


「すみませんすみません!! でも仕方なかったんです!! 死にたくなかったんです!! 悪いのは全部エルテンシアです!! 奴が諸悪の根源です!!」



 俺は如何に自分が被害者であるかのように語り、必死に言い訳した。


 親父直伝『都合の悪いことは他人のせい』作戦である!!


 すると、俺の話を聞いたアグリア様は――



「あの女ァ……。スキル農園に人間を放置した挙げ句、食料や寝床も用意してねーだと? しかもスキルを密造しようとして上位天使を破壊しやがった、だと? 昔から色々やらかす奴だとは思ってたが、それは知らねーぞ!! 経年劣化だとか適当なこと言いやがって!!」



 どうやら上位天使を破壊した犯人がエルテンシアということを、アグリア様は知らなかったらしい。


 アグリア様が何故か俺を脇に抱えた。



「行くぞ」


「え、あの、どちらに?」


「エルテンシアの家だ。お前にあのアマをぶん殴らせてやる」


「え? いや、あの、別に――」



 刹那、アグリア様が地面を蹴った。


 ビューン!! という凄まじい勢いで空を舞い、俺はエルテンシアのいる浮島まで連れて行かれるのであった。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「腹筋バキバキの美女もいいけど、うっすら割れてるくらいが一番好き」


山村「分かる」



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