合唱コンクール

エピローグ もう一度

ときは流れて11月。明日はいよいよ合唱コンクールだ。

俺は中村と一緒に過ごす時間が長くなっていた。

朝、俺が智也と教室に行くと、そこに中村の姿はなかった。

どうしたのだろうと思っていたが、朝の会で先生が「中村さんは転校しました」と言っているのを聞いて俺は驚いた。

昨日、みんなで中村あてに手紙を書いたのは、転校するからだったんだ。

待てよ、ということは、中村は合コンに出れないってことか!

「美月ちゃん、転校したんだ」

桜葉が言った。


次の日。

俺たちは音楽ホールのステージに立った。

客席には生徒の保護者や生徒たちが大勢座っていた。

少し緊張した。

『3番目、6年4組。指揮・浅川智也、伴奏・吉野陽介』

アナウンス係の生徒が言うと、会場が拍手の音でいっぱいになった。

俺と智也は客に向かってお辞儀をした。

俺はピアノの前に行き、イスに座った。

智也はクラスメイトの方を向いて両手を上げ、息を吸った。

それを合図に、クラスメイトたちが歌い出した。

俺はピアノの鍵盤を押した。

本当は、中村にいてほしかった。一緒に合唱コンクールに出たかった。

そんな思いが溢れてきた。

もう一度、音楽をしよう。俺はそう思った。


###


中学1年生の春。

俺は智也と登校していた。

「なあ、ヨーちゃん。去年の合唱コンクール、中村も来てたんだって」

俺はその言葉に驚いた。

智也は一体どこからそんな情報を手に入れたのか、と思った。

「でも来てたって、なんで?一緒に歌えないぜ?」

「中村、客席にいたらしい!俺たちの合唱を聴きに来てたっぽい」

「そうなの!?」

観客としてきてたんだ、アイツ。

俺は心の中で、再び音楽と向き合う決意をした。

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青春交響曲 (Aoharu-Ensemble) 𝄢 〜ガキ大将と陰キャ少女〜 迷M _りみ  @mei_m_rimi

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