第2話

「おーい、こっちこっち」


なに、アイツもう遊び始めてるの?


「後ろ見ながら太鼓叩くな。」


水城が今やってるのは昔からある太鼓を叩く音ゲーだ。


「ふふーん、私くらいになると目をつぶってても出きるもんね。」


‥‥‥‥スカッ!


「ああっ!フルコンボが!」


「ほら言わんこっちゃない」


案の定空振った。しかもこれ、曲の序盤だから自己ベストの更新無理だな。


「ふふふ、サヨナラ私の100円。」


「何いじけてんの?お小遣いいっぱい貰ってんだろ?」


「そうだけどさぁ~、100円あれば駄菓子屋で豪勢出きるじゃん。」


こういうところなんだよな。金持ちらしくないところ。でもこういうところに惹かれるけど。


「じゃあ次はクレーンキャッチャーでもやろうか。さっき面白いのがあってさ…。」


「行くから一旦落ち着け。はしゃぎすぎだ。」


「あ、これ両替してきて。」


そう言って、

     諭吉をポンと出す

              彼女。


「はぁ?ゲーセンに諭吉注ぎ込むとかアホのやることだろ一瞬で溶けて後悔しか残らんぞ。」


「良いから行ってきて。クレーンキャッチャーとの前にいるから探してね。」


はぁ~。諭吉ってことは100円玉100枚な訳だ。

総重量480g、体積約51πcm²を俺に運べと。

しかも俺が遊ばないことを良いことにずっと俺に持たせるんだろうなぁ。


両替機から鳴るじゃらじゃら音をBGMに一人どうでも良いことを考える。


「早く戻るか。えーと、水城は…、あ!」


見つけたのだがナンパにあっていた。毎度のことだが顔は良い水城は結構ナンパされてる。


「こんなとこいないで俺たちとカラオケとか行かない?」


「キミめっちゃ可愛いね。一緒に遊びに行こうよ。」


「すみませんが、連れがいるので。」


「大丈夫、大丈夫。その連れも一緒に来て良いから。」


「すみません、その連れなんですけど、勝手に人の予定を決めないで貰って良いですか?」


俺が水城とチャラ男達の間に躍り出た瞬間、「なんだ男かよ」と嫌な顔をしたのは見逃さなかったぞ。


「あんなやつより俺らの方が絶対金持ってるし顔も良いよ。一緒にカラオケ行こ?」


バシッ!


水城に伸ばされた手を俺がはたき落とした。


「お前、なんなの?邪魔だから失せて。」


「すいませんが、無理矢理女性にさわろうとするのは少々キモいかと。」


「お前ふざけてんじゃねーぞ!」


やつはそう言って拳を振り上げてくるが、遅い。

そのまま腕を引っ張って体勢を崩したところに膝をいれる。


「すいません、警備員さんはいらっしゃいますか?」


ダウンした男とそれをおろおろ見つめる仲間達を尻目に警備員を探す。


その後の対応は早く、少し話を聞かれたあと俺らは解放された。アイツらは連れていかれた。


「ちょっと両替するだけなのに遅い。」


「はいはい、申し訳ありませんでした、お嬢様。」


「次はもっと早く来てね。」





「……ありがと。」



あっ、可愛い。常人なら聞こえないくらいの声量だったが、俺は視力は悪いが耳は良いため、普通に聞こえた。


ちょっと照れながらの「ありがと。」

別に水城はツンデレって訳じゃあないが、この

ギャップが良い。


「どういたしまして。」


「聞こえても聞こえなかったふりしてよ!」


顔を赤くしながらポカポカと殴る彼女が微笑ましい。


「何笑ってんのよ~!」




______________________



「ただいま。」


「あら雪奈、おかえりなさい。」


お母さんに挨拶だけして部屋に向かう。


「うわぁ~~。」


なんなの?伊東がすごい格好良かったんだけど。


照れ隠しで次からは早く来いとか行っちゃったけど、それは適当にそらして、ちゃんとお礼言ったらきちんと返してくるし。


性格も趣味も全然違うけどあのピッタリはまるような、相手が何を考えてるのか分かるようなのがとても心地よい。


次はいつ遊びに誘おうかな。

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陽気で庶民なお嬢様 @sushi @36-50873

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