メイドロボットを買い替える。
葵流星
メイドロボットを買い替える。
幼い頃、お姉ちゃんが居た。
小さい頃から、彼女はお姉ちゃんだった。
私が幼稚園…いや、保育園…産まれた頃から、彼女はお姉ちゃんだった。
私は、黒髪ロングのメイド服を纏う、巨乳のお姉ちゃんにやたら甘えていた…。
というよりも、ただ母に怒られたりした時は、彼女の長いスカートに抱きつき、仕方ないと言われながらも、彼女は私を抱き、時には𠮟り、それそれは本当の姉のように私の姉で居たのだ…。
そんな彼女は、私が小学生になった頃にどこかに行ってしまった…。
私は、うろ覚えではあるが家族でお別れ会をしたこと、そして、写真スタジオで撮った家族写真…。
その写真の中央に佇む、フリルのついた白い帽子をつけて、幼い私の横で椅子に座っている彼女…。
ただ黒く、モノクロ…でもなく、健康的な肌で優しく微笑む女性…。
それが、私のお姉ちゃんであり、アンドロイドでもあり、家族であり、私の初恋を奪ったかもしれない…。
それが、私のお姉ちゃんだった。
その後、今度、父と母が連れてきたのは、そんなお姉ちゃんとは違うアンドロイドだった。
元気な感じで、ドジっ子かと思いきや、そんなことはなく、ただ機械としての仕事をこなす、お姉ちゃんというよりは、保育園の先生みたいな…元気娘…だった。
そんな彼女も、かれこれ8年目となった…。
高校生になった私にとって、彼女とは口も聞かない時もあったし、叩いたりもした…。
ここ数年は、わりとそうだった…。
けれども、彼女はただそんな私にとやかく言うのではなく、常に変わらないままだった。
彼女との写真は、既に撮ってあり、私、母、父、そして、お姉ちゃんが居た時は母に抱かれた状態で写真に映っていた妹…。
家族の写真が、そこにはあった…。
庭が広く、私が産まれた頃に作られた大げさな洋館…。
私の実家ではあるが、旧時代のクラシックな見た目をしているだけの設備が当時最新だった住居に、メイドロボット1人という、寂しいとはいえ充分な環境ではあった。
ただ言いたいのは、この家の主は、彼女だったということだ…。
そんな彼女も、もうすぐどこかに行ってしまう…。
一応、製造会社に帰るということだ。
午前中に、2mくらいの大きな荷物が届いた、その荷物を受け取った彼女は、その荷物を自分の部屋…。
使用人の為の部屋というべきか、部屋に運んだ…。
彼女は、その荷物のロゴマークに気がついていた。
「どうかしたの?ミカ姉?」
「いえっ、なんでもありませんよ…。」
彼女は、声をかけた私にそう答えた。
機械が悲しむはずはないので、おそらく私の気のせいだろうが、それでも悲しそうに見えた。
「次は、お兄ちゃんって呼ばれるかもしれないですね。」
彼女は、そう名残惜しそうに言った…。
「たぶん、そうはならないと思うな…。」
私は、そう言ったが噓である、
中身は、スレンダーなろり…。
…である。
サブスクリプションで、父と母が私が大きくなったから、もうなんでもいいかと言う事で最新機種にしたのだ…。
大きくなったら自分の欲しいアンドロイドを買いなさいとその時、親に言われた。
私をなんだと思っているのか…。
彼女、ミカ姉は茶髪で青い目のアンドロイドだ。
そんな彼女も、劣化…酷使したというか…耐用年数的にはまだ余裕はあるのだが、サポートがキレるということなので、お役御免になった…。
世間的には、アンドロイドの買い替えには苦労すると言われているが、私の父と母は、前のお姉ちゃんの件があるので、今回も大丈夫だろうと言っていた。
私は、お姉ちゃんに比べてミカ姉は人間味がわりとあるので少し不安だった。
なんせ、アンドロイドのプログラムによっては…。
いや、ミカ姉に関してはそんなことはないだろう…。
そんなこんなで、お別れの日となった…。
メーカーがやたら重武装なロボット…。
国防軍の戦術ロボットを伴って、回収にやって来た。
向かいの堺さんも、気になってこちらを見ていた。
引き渡しは、思いの他、すぐに終わった…。
家族が口々に彼女に感謝の言葉を言った。
私は、「ありがとう、ミカ姉。」
そう言い、彼女に抱き着いた。
彼女は、「ふふっ、可愛い弟ですね…。」
彼女は、そんな私の頭を昔のように優しくなでた。
妹は呆れ、父は笑い、母は懐かしんでいた。
そして、彼女は、どこかに行った…。
私達は、荷物の荷を時、彼女を起動した。
そして、彼女はこの家のメイドとして、活動するのだ。
私は、大学を卒業するまでに彼女と、その次のアンドロイドと共に生活する予定だ。
だが、この日の夜に事件が起きた。
ニュースで、アンドロイドの逃亡という報道があった。
その中に、ミカ姉と同じタイプのアンドロイドが映っていた。
メイドロボットを買い替える。 葵流星 @AoiRyusei
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