【実話】庭にどんぐりの木が生えた話

琉生⊿

第1話【実話】

私が幼稚園児ぐらいの、こう、特に意味もなく、ただただ無限にどんぐりを拾いたいお年頃だった時まで遡る。


その日も飽きることなく、ビニール袋がパンパンになるまで無造作にどんぐりを詰め込んで帰った。


家に帰ったらすぐに捨てればいいものを、ビニール袋にいれたまま放置してしまった。悲劇の始まりである。


虫が大量に出てきた。最悪だ。もう慌てに慌てて、何も考えずに庭に埋めた。虫たちよ、成仏してくれ。南無。


これで一件落着かと思ったが、数日後―


「芽、出た」

【となりのトトロ】で観たそのままの風景がそこにあった。

流石にたくさんの芽が1つにまとまって大木になることはなかったが、メイたちが目覚めて庭を見た時の、小さな芽が大量に出ているあの感じが目の前にあった。

「あれは物語の中だけの描写じゃなかったんだ……」

家族全員が思った。


「記念に2本だけ残そう」

かなりの量の芽が出たが、とりあえず2本だけ残すことにした。


―数日後―

「なんかものすごいスピードで大きくなってる。やっぱり残すのは1本にしよう」


公園で無作為に拾ってきただけのはずのどんぐり達の生命力に驚く。


その後も特にこれといって水やりはしなかったし、ましてや大きくするための剪定なんて一切しなかった。

だが、どんぐりの木はぐんぐん伸び、数年後には2階建てを超えるほどにまで成長した。


「流石にちょっとコンパクトにしようか」

2階まで伸びているのは流石に困る。それに横にも伸びているから近所迷惑にもなってしまう。


「結構コンパクトになったんじゃない?」

かなり切り落とした。そのはずだった。


―夏―

「嘘でしょ」


また2階あたりまで成長している。冬にあんなに切ったのに。栄養どころか水すらあげてないよ。どうなってるんだ。


また小さくした。

夏、また戻った。


こんなことを多分20年ぐらい続けた。


その間にどんぐりの実がなったのは1年だけだった。本来は複数植えないと実はならないんだと思う。クヌギだった。


「流石に毎年こうだと身体に堪える。切り株にしてしまおうか」

本当に大変だった。少し名残惜しかったが深く切り込んで様子を見た。


どんぐりの木が切り株になってから数年が経った。かなり朽ちてきている。あれだけあった生命力も尽きたようだ。



ホームセンターなどで植木のご購入を検討中の方で、木の種類にこだわりがなく、できるだけお金をかけたくないという場合は公園で拾ってきたどんぐりを埋めればば実質タダで巨木になります。



ここまで読んでいただきありがとうございました。

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