最悪なふたり
霧江サネヒサ
最悪なふたり
「昨日の女どうだった?」
大学で、先輩がニヤニヤしながら訊いてきた。
「あー。あの女、先輩が寄越したんですか? いやー、ロマンティックではなかったですね」
いや、それより今日のアンタがなんなんだよ、と言いたかったが、俺は堪えた。
「ははは、ロマンティック! ああいうのは好みじゃなかったか!」
好みなのは、アンタだよ。最悪なことに。
「そうですね」
やっぱり、俺は何も言えなかった。
◆◆◆
何故、先輩のことが好きなのだろう?
「なあ、お前がいつ女と付き合えるか賭けてるんだけどな、俺は一週間以内に賭けたから、よろしくな!」
何が、よろしくなだよ、クソ野郎。
最悪な男を好きになってしまったと思った。
今にして思えば、この時にすでに俺に女を押し付けるつもりだったのだろうな。
彼女と先輩は、寝たことがあるのだという。
それを聞いて、俺も寝ておけば良かったと思ってしまう自分が嫌だ。
◆◆◆
先輩は、無神経で無遠慮だけど、バカじゃない。というか、勉強は出来る。
「勉強? いくらでも教えてやるよ」
この時ばかりは、頼りになる先輩といった感じだ。クソ野郎の癖に。
先輩と隣り合って勉強をするのは、至福のひとときである。
だけど。
「そういえば、この前、同じゼミの女と飲んだ後にヤったんだけどさぁ」
相変わらず、話題選びは最悪だ。
◆◆◆
例の女と、寝ることにした。
ベッドの上には、先輩もいる。
俺は、女を挟んで、先輩を見つめている。先輩の熱だけを感じている。
ヤリ終わってすぐは、最悪な気分にもなったけど、先輩との疑似セックスは良いものだった。
女は帰り、先輩はベッドで眠っている。
「先輩……」
好きです。そっと、先輩に口付けた。
最悪なふたり 霧江サネヒサ @kirie_s
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