エピローグ
大学を卒業してから私はやりたい事がなくてこの陽だまりを始めた。
もう開いてから8年が経つ。始めは1人でやっていた店は2人に増えて、常連客も出来てきた。
ここは近くの大学病院に行く時に寄り道をするように入ってくる人が多い。
人生と命。それは限りあるもの。私もお客さんたちもいつかは死ぬ、絶対に死ぬ。年齢なんて関係ない。それは1人のお客さんから言われた言葉。「もしもの事に備えてあなたに伝えるわ。」と笑いながら私はお客さんの持つ病気と人生について教えてもらった。
人生とは、ブドウのようなもの。みんな同じ時期に、同じ場所に実を作るのに、食べられる時は人間の気まぐれで時間が前後する。人も同じ、同じ年に生まれて、同じ環境で過ごしてきても神様の気まぐれで私たちに試練を与えるの。気まぐれにも勝てない私は挑戦者ねと、そのお客さんは楽しそうに、何かを決心するように口にした。
人生楽しんだもの勝ち。過去は見るだけでいいの、未来は想像しながら作るだけ。今を演じ続けるのよと、その言葉を最後にそのお客さんの背中はピンクのじゅうたんが広がる外へ、照明と太陽の作る光の中へ姿を消した。
そしてもう一つ、今まで一緒に働いていた結さんからも病気の事についてと人生について質問をもらった。
「翠さんの、生きる理由は何ですか?」
最初は結さんが、死ぬことを望んでいるのでは無いかと思ったけれど、それは違うと言うことを、結さんが仕事をやめてから数ヶ月後に、まだ中学生だった実里さんから聞くことになる。
妹を無くした実里さんは、人生のどん底に落ちて生きたくなくなったから結さんに、酷いことを言ってしまったと。でも結さんは実里さんに、生きたくないと死にたいはイコールじゃない。と伝えたらしく、その言葉についてよく考える。生と死。それは対局に位置するものだが、確かに生きたくないと死にたいは対局には位置しない。生きることと死ぬことに理由を求めるのであれば、きっと死にたくないからと生きたくないからになるだろう。涙交じりに話してくれた実里さんの言葉は、まるで結さんが私に病気のことを初めて話してくれた時みたいだった。
人生とは桜みたいなものね。チャンスは一年にたったの1ヶ月しかなくて、あとの11ヶ月は準備期間。自分の外見から中身まで全部リセットして、その時に最高な姿を見せられるように嵐の中でも絶えぬくその強さは全員が持っているのに求めてしまうもの。みんな他人を見るだけで、自分のことをみていない。自分が選択し続けて作り上げた自分を見ない。ないものねだりが上手な私たちに春はいつやってくるのだろうか。
時空 瑠璃色 @yusu1227
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