第2話 転生そして妹がいた!
転生しますか?
▶︎YES ▷YES
暗い空間にコマンドが現れた。ド○クエやF○みたいなものだ。選択肢がイエスしかないことからこれを作った人は意地でも転生させたいらしい。
とりあえず悩んでても埒が空かないから左のYESを押した。するとこんなコマンドが出てきた。
種族を決めてください
▶︎人間 ▷獣人 ▷魔族 ▷亜人
これはおそらく選択したらランダムになってしまうのだろうか。だとしたらハズレになったら嫌だな。待てよ、種族を決めろとしか言ってないよな。別に4つから選べとは言っていない。つまり言葉で種族を決めれば当たりが引けるかもしれない。
…チッ
ん?舌打ちが聞こえたような。まあいいか。とりあえず喋ってみることにする。
「あー、あー。聞こえますかー?」
《よくぞこの罠を乗り越えましたねクソが。仕方ないから好きな種族に生まれ変わらせてあげましょう》
口悪いなこの人。誰なのかはさっぱり分からない。白い球体が浮かんでいるだけなのだ。てか好きな種族言われても何も知らないんだけど。
《主な種族のステータスを確認しますか?》
コイツ、心を読んできてやがる。えーとなになに。
種族 ドワーフ
破壊力 A
精密動作 B
スピード C
魔力操作 A
種族 エルフ
破壊力 C
精密動作 A
スピード B
魔力操作 S
獣人(猫科)
破壊力 A
精密動作 C
スピード S
魔力操作 B
人間
破壊力 B
精密動作 B
スピード B
魔力操作 B
ステータスの書き方が完全に奇妙な冒険しているのは置いといて、やはり基準があると選択がしやすい。だがしかし、ステータスには偏りがあるので真剣に悩まなければならない。決定事項としてはとりあえず俺は人間をやめるぞー!
奇妙なステータスだとドワーフ辺りが1番バランスが良い気がするがエルフも捨て難い。昔は色んな事にお世話になりました。さてと、悩みに悩むが結局特化型も強いが、バランス型が1番強いと思っているから俺はこの種族にする!
「ドワーフとエルフのハーフでお願いします」
《は、はぁ!?ハーフとか初めてなんだけど!なんでそこまでしなきゃならないんですか!?》
種族を選べと言っていたが別にハーフは駄目とは言われていない。つまりこの2つの種族の子供ならバランスの良い最強のステータスで生活できるわけだ。こんなチャンス滅多にない。自由すぎるゲームでも流石にドワーフとエルフのハーフ種族は無かったしな。
《仕方ないですね、選べとしか言っていない自分が悪いので今回は承諾します》
よっしゃ、一応鍛えていた俺の体が無くなるのは残念だが致し方あるまい。ドワーフとエルフなんてファンタジーでは必ずいる種族に生まれ変わるのだ。人間の肉体よりもそっちの方が良いに決まってる。これからの人生。いや、なんて言うんだろドワーフとエルフ生?長いな。まあいいかとりあえず楽しむか。
「そういえば今の俺の体ってどうなってるんです?転生させる気満々ですけどヤバいんですか?」
《あー、あなたの肉体はもう使い物にならないですから。頭蓋骨損傷、脳損傷、右眼球が飛び出てその後千切れて、肋が粉砕、臓器破裂などなど吐き気が出るほどにヤバい状態です。しかし幸い気絶しているので戻りたかったら戻してあげますよ》
確かに前の肉体で転生したらヤバい事になってたなこれ。体を鍛えていても結局ヤバい事にはなるんだな。
《じゃあ意識を向こうの肉体に宿らせますね。納得いかなくても文句言わないでくださいね。いちいち聞くのもダルいんで》
本当にコイツ性格終わってる気がするのは俺だけなのだろうか。と思っている間に俺の意識は一度途絶えた。
「おおっ目を開けたぞ!立派な男だぞ!」
見た目は20代後半から30代前半つまりアラサーのような見た目をしている男が叫んだ。褐色肌で顔に傷が多数ある。髭は無いようだ。羨ましい、俺は毎日2分くらいかけて剃っていたというのに。勝手な推測だがこの男はドワーフだろう。耳がとんがっていないしな。
「もう少し落ち着きなさいよ。びっくりしちゃうでしょう」
見た目は高校生くらいだ。容姿は整っていて耳が尖っている。おそらくエルフだろう。ドワーフらしき男は前世の記憶にあるような低身長ではなく、だいたい170センチくらいの大きさだ。そしてこのエルフは150から160くらいだ。そして何よりおっぱいがデカい!素晴らしいよ異世界!流石だよ巨乳エルフ!
「おい、この子全然泣かないぞ。赤子は泣くものだと思っていたが違ったか?」
「そうねぇ確かに泣かないわね。エルフとドワーフの子だから強いのかしら」
おっと泣かないから不思議そうに、いや、怪しそうに俺を見てる。違うっ泣きたくても泣き方を知らないんだよ!だから変な子を見るような顔をするのはやめてくれ!
「あぎゃぁぁぁっ!おぎゃっ!あぎゃぁぁぁ!」
ん?今のは俺じゃあ無いぞ。
「おーよしよし。お兄ちゃんは泣かなかったけど妹ちゃんは泣くのねー」
「男だから泣かないのか?いやはや赤ん坊というのはよく分からんな」
分からんのは俺の方だよ。まさかの双子だし妹いるし頑張っても泣けないし、わざとおぎゃあと言ってみるか。
「お、おぎゃあ?ぎゃあぁぁぁ!」
絶叫の様になってしまったが俺の演技に騙されてくれるか?
「おおー!泣いたぞ!おい、フレア!フレアぁぁぁ!」
「泣いただけでそんなに興奮しないでよ。おーよしよしうるさいパパですねー」
ふむ、これはイイ。美女に抱っこしてもらうのなんて初めてだ。頭なでなでされるのもイイ。しかしなんというか恥ずかしくなってくるからそろそろやめてもらいたいとも思ってしまう。
そして、先程喋ってみて分かったことがある。それは、言語をしっかりと使えないことだ。向こうの言葉は分かるのに発音が難しいのだ。さっきのも結局はただ叫んだだけだし。そもそも言語を理解できている事に疑問を持ってしまう。転生補正なのかこっちの世界では当たり前なのか。
転生してから2年ほどたった。前世では赤子はなぜうまく歩けないのか疑問に思っていたがいざ自分も赤子になるとよく理解できる。バランス感覚がうまく掴めないのだ。歩こうにも左右にグラグラしてしまい転んでしまうがそこまで痛くない。体が軽いからかもしれない。
1年くらいで言語は習得できた。一応この世界では一般的に使われる言語らしいので助かる。ただ、日本語よりも使う言葉が少ないのと発音が違うので色々とこんがらがってしまう。英語と日本語を使える人を尊敬しちまうぜ。
俺の家族構成だが、父親はハンスというらしい。種族はやはりドワーフだった。褐色肌で顔に傷があり、髪は黒のワイルドな男だ。見た目は前世の俺と同じくらい若い。父親から受け継いだ鍛治職人をしているらしい。よく武器やら防具やらを作って1人で高笑いをしている変な人だ。
母親はフレアというらしい。種族はドンピシャだ。やはりエルフだった。髪は白く俺たちの前でも胸元を開けるほどデカいエッチなお姉さんだ。ポーションを作ったりハンスの作った武器に魔法を宿らせて魔剣にしたりと魔法に関する仕事をしているそうだ。ハンスとは性格が合うらしく昔から研究仲間だったとか。
そして我が愛しの妹カリン。俺と同じくドワーフとエルフのハーフで髪は母親譲りの銀髪。なんか俺よりも言語習得が早かった自慢の妹だ。なぜか俺をお兄さまと呼んでくる可愛い妹だ。散歩中もよくトコトコと後ろをついてきている。ピ○ミンみたいだ。
そして俺はアストというらしい。髪は銀髪だ。ハンスが嘆いていたが仕方あるまい。遺伝というものには抗えないのだから。更にハンスに追い討ちをかけるかのように肌は白めだった。カリンもそうだった。すまんなハンスよ、いつか日焼けしてくるから。ただ、身長はハンスよりでそこらの子供よりも大きかった。
俺が住んでいるところは洞窟らしきところでドワーフとエルフの2種属が住んでいる。東京ドーム200個ほど(どのくらいかは全く知らんし適当)の面積の大木に穴を開けて生活をしているらしい。人間も多く出入りしていて治安は日本よりも良い。近所付き合いも悪くないし俺たち兄妹のファンクラブまでできているほどだ。
俺たちは生まれた時に魔力測定と呼ばれるものを受けるのだが俺は測定不能らしい。測定不能は魔力が無いか測定範囲を超える量がある場合らしい。後者であってほしいと願うばかりだ。あれ、こういうのってちゃんと説明した方が良いのだろうか。
カリンは上位に食い込むAランクらしい。ハンスはあまり適していないらしくCランクだと言っていた。フレアはこの国では3人目の測定不能で脅威のSランクと言われている。俺は4人目の測定不能者だがみんな俺が魔力を扱っていないのを見ているので魔力は無いと判断している。
それでも扱いを誰も変えないのを見るに優しい人たちだと思える。まあ、まだ2歳だしね。これから成長するよ。うん、きっと。
転生してから3年。今日は俺とカリンの誕生日だ。この世界は日本と同じで1年に一度誕生日を行う。成人は15歳なので少し早い。誕生日は家族だけでなく近所の人も誘って盛大に行うのがこの世界の常識らしい。俺とカリンはデカいホールで数十人の人たちに祝われた。カリンは魔法に関する物を貰っていたが少し申し訳なさそうに俺を見ていた。別に気にしないのに。
賢者と呼ばれる人が俺たちの前に来た。なんでも、初級魔法を教えるらしい。魔力が無いと思われている俺に教えようとは良い度胸だ。賢者はその後炎の初級魔法の詠唱を始めた。
「炎の精霊よ汝の力を貸したまえっ!フレイム!」
すると手のひらサイズの火の玉が壁に勢いよくぶつかった。
賢者はカリンにやってみなさいと言いカリンは言われた通りに詠唱した。
「ほのおのせいれいよなんじのちからをかしたまえっ!ふれいみゅっ!」
するとマッチでつけたような火がゆらゆらと漂い消えた。
噛んだ!かわええなぁ。あっ少し落ち込んでる。慰めてやるか。お兄ちゃんだしな。
「カリンよ、失敗は悪いことではないぞ。経験を積んだのだから次は上手くいけるさ」
「お兄さま…うんっ!次こそがんばる!」
破壊力抜群だぁ。おっと次は俺の番だ。周りは結構緊張した顔をしている。ハンスなんてオロオロしてフレアにチョップを喰らっている。
「炎の精霊よー…は?」
まだ詠唱途中なのにすでに火の玉ができている。厳密には頭の中で詠唱をしようと思った時にはすでに出ていた。賢者のやつでも詠唱後なのになんでだ。大きさはだいたいメラゾーマくらいだろうか。火球はそのまま壁に当たり壁には穴が空いた。賢者は尻餅をついていた。
「い、逸材じゃ…無詠唱魔術に測定不能魔力…此奴はいずれ世界を救う魔術師になるぞ!」
何を言っているのか半分しか分からん。とりあえず俺が世界救うでオーケー?いやだよ、俺は妹と平和に過ごすんだから。周りがどんどん騒がしくなっていく。俺が魔力を使えたからだろうか、それともデカい火球を出したからだろうか。もしかして無詠唱で測定不能魔力は禁忌に触れてしまうのだろうか。いや、あのじいさんは逸材と言っていたから多分そんな事はないだろう。
どんどん騒がしくなって次第に俺に驚きの目で見てくるようになった。スリザリンはダメ!スリザリンはダメ!嫌だよっ!なんで転生して3年で犯罪者みたいになっちゃうんだよ。
と、思っていた時期が僕にもありました。よく見るとみんな喜びの顔で見ていた。カリンなんかは『お兄さま、すごい!』みたいな目でこっちを見ている。よかった、アズカバン行きは免れた。
「流石は私の子ね!初級魔法が上級魔法並みの威力で撃てるだなんて!」
嗚呼、顔全体で胸の感触を感じる。これが
今ホールで何が起こっているかは知らんが俺はこの感触を噛み締めているので知ったことではない。今は魔法が使えたことに喜ぼう。
誕生日から半年。今日はハンスから鍛治について教えてもらう。鍛治にも魔力を込める必要があるらしいが、少しでもいいので魔力量が少ないハンスでもできるのだ。ただ、ハンスは1つの武器に自分の魔力を全て使うので1週間に1本から2本が限界らしい。魔力が多く込められているほど魔剣としては良い出来になるとか。
「今、お前たちに剣を打たせることはできない。だからお前たちは俺の打っているかっこいい姿を眺めていなさい」
「父さんそれはクソつまらんです!」
「クソつまらんです!」
何もしないでただ見ているだけの何が良いのだろうか、カリンも俺の真似をして汚い言葉遣いをしているし。
「そう言っているのも今のうちだぞっ!なあ、母さん!母さん?フレアッ!フレアぁぁ!」
「母さんなら市場で今日の夕飯の買い出しに行ったよ」
「行ったよ」
どうやら結構凄いらしい。少し期待してやるか。
正直舐めてました。鉄を打っているのを見て何が凄いんだよって思ってたけどこれは凄い。
金槌で打つたびに魔力が鉄に流れているのが分かる。ここの鍛治職人いや、父さんは結構凄いのかもしれない。カリンも楽しそうに見ている…はず。普通に寝てました。
「どうだ父さんカッコよかっただろう!」
「うん、魔力の流れとか形の変化だったり。あと鉄も変わってるよね?」
「ああ、よく気づいたな。鉄に魔力を込めると魔鉱っていう金属に変わるんだよ」
「カリンも気づいてました!」
「ハッハッハカリンは寝ていただろう?父さんの目は誤魔化せんぞ」
「へへっバレちゃった」
つまらないと思っていたものは案外面白いものだと30年くらいでようやく気づくことができた。これは父さんに感謝だな。
「ただいまーお父さんの仕事ちゃんと見れた?」
「うんっ!まりょくがすごかった!」
「カリンは寝てたでしょ」
その後は夕飯を食べて平和に終わったのであった。これから起こる悲劇に俺は知る由もなかった。
ドワーフの鍛冶職人の息子に転生したけど跡は継がずに旅に出る とんとんちんかん @megaten0609
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ドワーフの鍛冶職人の息子に転生したけど跡は継がずに旅に出るの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます