ブラックボックス
ゆったり虚無
生命体Xの報告書
この報告書はとある星の生命体が制作した報告書である。
以下、訳したものをここに記すこととする。
私は、他星研究家のX(仮称)である。
今回、私は「青い星」と言われる場所に行くこととなった。
理由としては、過度な文明の発展により急成長を遂げつつあったからだ。
他星研究家としては見過ごせないサンプル、そう考え私は注文していた変装用の被り物をもって向かった。
被り物は前回、この「青い星」へと調査に赴いた研究家の報告書や文献を参考にして作ってもらった。
私は早速それに着替えて「青い星」の小さな島へと降り立った。
そこは島の規模としては小さく、身を隠す場所も多い場所だった。
都合がいいと思った私はすぐさま現地の自然について観察した。
ここではその観察の報告については省かせてもらう。
また後日、ほかの報告書にて詳しくまとめておく。
一通り観察の終えた私は、この星の生命体を探すことにした。
遠くに集団で動く生命反応があったので、私はそこに移動することにした。
ここで特筆すべき点はその生命体の数の多さだ。
まるで一つの生命体のように、しかし個々に不規則な動きをもって見事に視覚の不協和音を奏でていた。
見た目は派手なものもいれば、地味なものもいる。
なぜこんなに見た目が違うのか、この星の生命体の一つの特徴といえるだろう。
精神分析により集団の感情を読み取ったが複雑に入り組んでいて理解するのに時間がかかった。
しかし、よくよく分析するとなんのことはない。
それぞれの感情が少しずつ違うのでその時は気が付かなかったが、ほとんどのものは利己的な欲求と不満だった。
このように高い身体能力を持たない種族にも関わらず協力の感情を持たず、こんなにも不満の多い生命体を私は初めて見た。
これは驚きの事実である。
高い文明を築き、急成長をしたにも関わらず、この生命体は種として様々な欠落がみられるのだ。
過去の報告書に書いてある星に違いはないのだが、生命体だけが変わったようだ。
かつての報告書によると、この種族はその団結力と投擲という能力により他の追随を許さない生存圏の拡大に成功したはずなのだ。
だが今やどうだ。
その能力のうちの団結力はもう見る影もない。
私はここでこの生命体の限界を見て取った。
なんて憐れな種であろうか。
そして最後に、過去の報告書と大きく異なる箇所の報告を以て〆とする。
かつての「青い星」の生命体の見た目はご存じであろう。
頭があり、手足が二本ずつ。
完全自立型の二足歩行であったと。
しかし、もはやその生命体は絶滅したと言っても過言ではない。
今あの星の生命体は謎の「ブラックボックス」に支配されている。
過半数を超える生命体がその「ブラックボックス」によって操られているのだ。
以上のことが「青い星」の報告である。
最後になるが、技術班には例の「ブラックボックス」を変装用の被り物に追加することを強く要望する。
ブラックボックス ゆったり虚無 @KYOMU299
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます