第2話

2024年9月8日


今日は、近所の公園「H公園」でアイリッシュバンドのライブがあると聞き、ふらりと足を運んだ。ステージは思っていたよりも小さく、観客も二、三十人程度だったが、その分アットホームな雰囲気が漂っていた。


バンドが奏でる音楽は、アイルランドの風を感じさせるような力強いリズムと軽やかなメロディーが心地よく響き渡った。バイオリンがフィドルとして奏でられ、ティン・ホイッスルの音色が加わると、まるで異国の地に旅立ったかのような気分になった。打楽器のバウロンと木製クラリネットも加わり、独特の調和が生まれた。


音楽に合わせて何人かがダンスを始め、会場全体に一体感が生まれていった。最後には、見ず知らずの人たちが手をつないで輪になり、軽やかなステップを踏んで楽しむ場面があった。この瞬間、アイルランドのパブで見られるような、音楽と踊りが自然に人々を繋ぐ様子を実感した。


しかし、ライブが終盤に差し掛かる頃、突然バンドのリーダーが話し始めた。「ここにいる皆さんにだけ、特別な曲を聴いてもらいたい」と。観客は少しざわめいたが、リーダーは続けて言った。「この曲は、実は公には出せない特別な曲で、アイルランドのある小さな村でしか演奏されたことがないのです。その村の長老から受け継いだもので、聴いた者にしかその秘密は明かされないません」、と。


静かに始まったその曲は、今までに聞いたことのないほど深く心に響く旋律だった。まるで時間が止まったかのように、会場全体が音に包まれた。誰もがその瞬間を忘れることはできないだろう。演奏が終わると、リーダーは微笑んで一言、「この瞬間、皆さんもアイルランドの秘密を共有する仲間です」と言って幕を閉じた。


普段は静かな公園だが、今日は音楽に包まれ、まるで別世界にいるようだった。そして、私はあの特別な曲の余韻に浸りながら、帰り道を歩いた。

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徒然 @stranger2ex

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