触ってみた感じ


 カノンと一つのベッドを仲良く分け合った。


 起きた時にはカノンが俺の上で寝ていた。


 寝相が悪い人が、一番悪い。


 そう思いながらカノンを抱きしめる。


 人肌の温もりと柔らかい感触。


 下品にも俺の手は腰から下へと伸びていく。


『もっと触って』


 カノンの声がして手の平を吊りそうなくらい伸ばしてから、右の弾んだ足の付け根を鷲掴む。


 弾力的でスベスベの生地に包まれた餅のような。


「もう触っちゃダメだからね」


 カノンはそう言って俺の胸に手を置いて起きる。


「どうかしてました」


 思ったより触り心地が良かった。


 空気を揉んで思い返す。



「これあげる」


 コトンとテーブルに何かが置かれる。


 よく見てみると漆黒の宝石。


「カノンの闇ですか」


「そう、全部使えるようになったね」


「カノンもね」


 とは言っても闇はよく知らない。


「どう使ってるんですか」


「キスする時に使ってる」


「どれどれ」


 カノンに顔を近づけると周囲が黒くなる。


 離れて元に戻る。


「へえー」


「それ以外は知らない」


 程なくして朝食を取った。



 学園に入ると昨日はなかった張り紙があった。


 ダンジョンメンバー募集と書かれている。


「ダンジョンってなんですか」


「貴族や国が領地の外に置く財宝の隠し場所だね」


 税金から逃れた汚れた金を回収するという。


「どうして学園で?」


「学園だって稼がないと」


 危なそうというのが俺の意見。


「トラップとか獣も居るけど報酬も出るよ」


 お金があれば学園でも有利に立ち回れる。


「よし、行く」


「えっ!」


「カノンは来なくてもいいよ」


「ハルカが行くなら……」


 参加を申し出て即席のパーティが組まれた。


 俺とハルカを合わせて五人。


 三人もそれなりに可愛い王子達。


 俺のように剣を持っていて一人は盾もある。


『出発』



 学園の近くで見つかったというダンジョン。


 徒歩で向かうようだった。


『私がザイン、こっちがシエラ、そっちがラー』


「ハルカとカノンです」


 ある程度の作戦と危機的状況に遭遇した場合の振る舞いを取り決められた。


 道中の話を聞く限り、三人は魔法が使えるわけでもない様子。


「ハルカ、疲れちゃった」


「帰っていいですよ」


「まだ疲れてませーん」


 変なの。そう言いつつダンジョンに着いた。



「ふむ……」


 ザインが鉄格子の南京錠に針を通す。


 カチャンと錠が落ちてギィッと開く。


 ラーが松明に火をつけて先陣を切る。


「広いなここは」


 剣を抜いて慎重に進む。


「カノン、剣は?」


「忘れてきちゃった」


 カノンの肩を片手で抱き寄せて歩幅を合わせる。


「もっとギュッてして」


「わざとじゃないですよね?」



 特に罠もなく進行し、一際明るい光を放つ宝箱を見つける。



「あれは!」



 一瞬でダッとなだれ込むように進行する。



 その瞬間、暗闇だった前後左右が明るくなる。



「明るいぞ!」


「違う、壁が生えてきている!」



 ゴゴゴゴと大きな音を立てた四方八方の壁。



 完全に閉じ込められた。


「こんな罠があるとは」


 この空間が密室だとしたら松明に空気を奪われるかもしれない。


「火を消してください」


 ラーが松明を消火して完全な闇に陥る。


 カノンを離さないように身を寄せる。


「ったく、どうするか……」


「待つしかあるまい」


 三人は特に知り合い同士でもないのか、それぞれが個別に頭を抱えているのかもしれない。


「カノン、アレあります?」


「アレって?」


 耳打ちして作ってあげた宝石を出してもらう。


「ちょっと明るい……」


 カノンの手と顔を明るくする程度の光。


「罠は誤作動した時の為に解除する方法があります」


「探してみよう」


 暗い光を頼りに壁と地面をひたすら眺める。


 そして遂に見つけた。


「これにハルカが風を流し込めば……」


 丁寧に文字まで掘られた解決策。


 俺は冷静を保ちながら皆に言う。



『この状況を打開する方法を見つけましたが、風の魔法が必要なようです』


 帰ってきたのは沈黙のみ。



「ザインさんはどうですか」


「私は水」


 二人も風ではない。


 カノンの不思議そうな顔を横目に言う。



『ってことはこのまま国の管理者に見つかって死刑ですかねーッ!』



 それを聞いた三人が一気にザワつき始めた。

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秘密だらけの花園 @1lI

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