不穏:二話
進化を促す....
「つまり、どういう事ですか?」
「この世界の事を君は何も知らないでしょ?何も知らないのは別に悪い事じゃない、恥じることでも無い、でもこの世界は君達の世界とは全く違う」
「ここで生きるなら今までの常識はほぼ覆ると思ってほしい」
「その身でこの世界を学んでほしいとは思うけど、私にも夢があってその夢を叶えるには君が必要なの」
「分かった?」
「まぁ、大体は」
名前の理由を聞いた時も思ったけど、人に説明するのが苦手なのだろうか
「それじゃあそろそろ行こうか」
そう言うと太郎さんは森に向かって動き出した。
長い事歩いた気がするが、ここは何処だろう....
暑くは無いが、代わり映えの無い景色を無言で歩き続けるのは辛い
「あの、太郎さん、今どこに向かってるのか知らないんだけど....」
「あれ?言って無かった?」
「はい」
「今向かってるのは私の家だよ、そこで君の進化を促すんだよ」
やっぱり、さっきの説明で『進化を促す』の意味をしっかりと説明出来てると思ってるんだろうな.....
「あとどれくらいで家に着くんですか?」
「いつもは魔法で一瞬で移動してるから忘れた」
「そうですか.....」
瞬間移動かな
「ずっと歩いているって事は今はその魔法で移動出来ないんですか?」
「うん」
「そういえば人の体ならお腹も減るでしょ?大丈夫?」
「まぁ、はい」
急だな....
「ちなみにお腹が減る感覚を忘れちゃったのよね、私」
「そうなんですか....」
そうなんだ....
それから休憩を挟みつつ、周りが暗くなっても歩き続けた、太郎さんは飛び続けているが疲れるという感覚も忘れたんだろうか....
それより、休憩をしても飲み物も食べ物も無いから疲れは取れないな、それに眠たい
周りが明るくなり始めると太郎さんの動きが突然止まった
「やっと着いたんですか?」
「うん、着いたよ」
そう言われて周りを見渡してみたが、家らしきものは何も無い
「もしかして、木の上とかに家を建ててるんですか?」
「半分当たりだよ、この木が私の家」
そう言われて見上げてみたが、家らしき物は無かった
「へー」
本当に木が家なのか?
「それじゃあそこに寝て」
『そこ』と指を差したわけでは無いが、少し奥に大きな切り株がある
「あの切り株で寝ろって事ですか?」
「うん」
そう言われて切り株の方に近づいた
「この変な模様はなんですか?」
切り株に直接描かれている幾何学的と言えるような模様....
「これは魔方陣だよ、魔方陣の範囲内なら君の進化を促していなくても大丈夫」
「へー」
さっき話していた『魔法での移動』は魔方陣が無いのかな?
色々気になる事はあったが、多分一日中歩き続けていたので寝られるのは嬉しかった。
この世界に来る時はベッドで寝たんだが、今度は不思議な切り株で寝る事に....
「ここで寝たらまた違う世界に行く事は無いですよね?」
半分冗談だったが
太郎さんの返しは冷たかった
目を開けると周りが真っ暗になっている
「あれ?」
太郎さんがいない、周りが真っ暗だから見えないのか?
いや、森の中もほぼ真っ暗だったが、太郎さんの姿ははっきりと見えていた
「太郎さん何処に行ったんですか」
大声で叫んでいるが、声の響き方がさっきと違う
まるで部屋の中のような....
「太郎さん何処ですかー」
数分間叫んでいると、後ろで何かが落ちてくる音がした
「太郎さん?」
そう言いながら振り返ってみると机があった
明かりも無く、真っ暗のはずだが何故か机がはっきりと見える
「どういう事ですか?太郎さん‼」
すると
机の上にパンとコップのような物が突然現れた
「食べていいって事ですか、太郎さん?」
あまりはっきり見えないが多分、パンとコップだろう
「食べますよ」
やはり返事は無い....
まずはパンのような物を食べてみる
「うまい」
食感はパンなのだが、匂いは何もしないし、ナッツのような味がする
次はコップに入っている何かを飲む、匂いも味もしないただの水だった、多分
「ごちそうさまでした」
そう言っても誰の声も返ってこない
疲れはまだ取りきれてなかったので再び寝る事にしたが、切り株が無くなっている....
「真っ暗で見えないだけなのか」
だが悩んでも叫んでも答えは返ってこない
ここには多分太郎さんも誰も居ないので、そのまま床で寝る事にした
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