とある探検家の発見

@KYOMU299

日記

 Bは、初めてこの活動に参加した。

前から興味はあったがなかなか抽選に当たらなかったのだ。

人気の高いイベントらしい。

だが今回、たまたまではあるが当選した。

詳しくは知らないがどうやらフィールドワークをするようだ。


 現地についたBは、なぜこのイベントの人気が高いのか理解した。

とある遺跡を探索するのだが、そこで見つけた取得物は持ち帰ることができるようなのだ。

そして、ここには価値のある書物やアクセサリーなどが多く存在するそうだ。

つまり、一攫千金のチャンスがここにはあるのだ。


 さっそくBは建物の中に入った。

建物自体はほとんど崩れかかっていたが、かろうじて原型はとどめている。

入り口には、様々な履き物が散乱していた。

少し先に進むとそこには木材が転がっていた。

なるほど、たしかに価値のあるものばかりだ。

Bは一人納得しながら上へと移動した。


 そこは下よりもひどい惨状だった。

Bは踏み場のない部屋を見まわしながらめぼしいものを探していた。

だが、きれいな状態のものは見当たらなかった。

もうここは引き上げようと思ったとき、ある日記が目に入った。

状態は悪くない。

どうやら中は無事読めるようだ。


以下、その日記から抜粋する。


「7月25日 今日から夏休みだ。学校に行かなくていいだけでうれしくなります。」


「7月27日 まだまだ休みが長い。なんかテレビでは大人がさわいでいるけどなんなんだろ。」


「8月15日 今日は終戦記念日らしい。テレビではずっとそのことについて話している。そんな昔の話して楽しいのかな?」


「8月22日 なんかどこかの国で核?が落とされたらしい。お母さんは心配そうにテレビを見てたけど、私は学校のほうが心配。」


「8月31日 いまテレビは戦争で持ち切りみたい。だけど、私には関係のない話。」


「9月1日 やっぱり田中さんたちがいじめてきた。私はなにもしていないのにいつもいじめてきた。」


「9月3日 世界は変わったけど、私の世界は変わらなかった。戦争は激化して日本も兵隊さんを集めているらしい。なんだか私も世界も大変みたい。今日はお母さんとたくさんお話しできてうれしかった。」


「9月4日 遺書は残したし、私をいじめた人の名前も書いた。」



 日記はここで終わっている。

Bには、あまり何を書いてあるの理解ができなかったが、専門家によるとこれは非常に貴重な文献なんだそうだ。

内容は個人と集団を破壊するまでの記録だと教えられた。

Bは、「地球」と言われる星のフィールドワークを終えて、救いようのない星だと吐き捨てた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある探検家の発見 @KYOMU299

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ