第4話

僕は普段通り、友達Sと帰っていた。僕はいつも通り、生返事しかできなかった。そこで急にSが声を荒げた。

「しっかりしろよ!彼女が死んだ事実を受けとめろ、彼女はもう戻ってこない。いつまでくよくよしてんだよ。彼女のことに気づくことができなかった。それだけだ」

「………」

「彼女へのお前の好意はどうしたんだ!彼女がこんなこと望んでいると思うのか。前を向け!下を見るな!ただひたすら目の前の道を進め!」

彼の言葉は、荒々しく尖っているように感じられたが、その中には確かに僕を心配する優しさから来た励ましが含まれていたように感じた。

 彼はその後は何も言わなかった。僕も何も言えなかった。彼は去り際にこんな事を言った。

「強く生きろよ」

僕は彼と別れた後、電車に轢かれて、自殺しようとしたり、高台から飛び降りようとしたりした。でも、そのたびに彼の「強く生きろよ」という言葉が頭の中で反芻されて、結局僕はできなかった。

 僕はなんとか家にたどり着いた。ふと、ある写真が僕の目に写った。それは、彼女と僕が写っていて、真ん中には調理実習のときに作った料理が写っていた。写真に写る彼女は満面の笑みだった。僕は歯にしぶとく残っていた魚の骨が抜け落ちていったように感じた。僕は泣き出していた。醜くわんわん嘆きながら、涙がとどまることをしらないのか、大量にこぼれ落ちていた。涙が枯れきって、僕は思った。Sがあれほど励ましてくれたんだから前向いて、頑張らなきゃな。くよくよしてられないよな。ありがとう、僕の偉大なる親友S。次に僕は、彼女のことを想った。僕は君のことが好きだった。大好きだった。君が抱えていたものを、僕は気付けなかった。僕は情けないやつだった。でも、僕は、、、君の分まで今から精一杯生きるよ。ありがとう。ありがとう。ありがとう。僕は君の笑顔に何度も何度も救われたよ。

次は、、、僕がみんなを救っていく番だよね。君の笑顔を忘れない。絶対に、絶対に、絶対に。


本当にありがとう。

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