ムシムシ大決戦

白川津 中々

◾️

虫が好きだった。


カブトムシクワガタムシコガネムシミジンコアメンボアブハエハチクモムカデゴキブリ益虫害虫問わずなんでも好きで見かけたら部屋に連れ込んでは一匹一匹よく観察し個体特徴にちなんだ名前をつけ愛していたのだがすぐ死んでしまう。俺はそれが悲しかった。なぜもっと寿命が長くないのか、同じ時を生きられたらどれだけ素敵か、虚しい妄想に暮れていた。


神が現れたのは、そんな風に飼育していた虫が死んで涙に濡れる夜だった。



「虫を巨大化し長生きにしてやろう」



変な夢だと思った。

だが、起床し夢ではない事を知る。屋内でやけに風を感じると思ったら家が吹き飛んでいた。飛び起きるとあたり一面に巨大な虫達。奴らが寝ている間に開放的なリフォームをしてくれたのだなと合点がいく。



「これは……凄いぞ……!」



歓喜、興奮、抑えられない高揚。股間が腫れ上がり二度三度果ててなお熱を帯びている。なんという光景、なんという世界。求めていた夢が現実になった。心が満ち足り続け思わず「びゃあ!」と叫ぶ。喉が張り裂け痛みが走ったがそれさえ快楽的だった。縦横無尽に動き回り飛翔する虫たち。駆除のために出動した戦闘機や戦車が逆に駆逐されていく。ゴキブリに齧られる10式。ハエに集られるF-35。全てが魅惑、極地。神様ありがとう。俺は満足です。


空を見上げるとブゥーンとB-21が飛んでいた。そろそろ爆撃が始まるか。虫と人類、どちらが勝つか。見届けられないのが残念だ。

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