主人公の女性の胸の裡が、彼女が見たかつてこの地であった出来事が、とても美しく繊細な文体で紡がれています。 読んでいる間、菊の香りすら感じるようでした。美しさと恐ろしさは互いを引き立て合うことがあるのだと、教えてくれるお話です。
今となっては桃の節句や端午の節句と違い、すっかり人々から忘れられてしまった重陽の節句(すみません、本作で知りました)。奇麗に描かれた世界観がすっと入ってくるので、重厚な文章でありながら読みやすさも兼ね備えています。そしてラストへの展開、読むとどことなく背筋が冷ややかな感覚に襲われます。まさしくホラー。秋に読むのにおすすめの一作です。
祖の存在それは天照か大国主、伊邪那美か伊邪那岐か・・・・・・神々しくも感じる者もいれば、妖々しくも感じる者もある霊媒師が言いました「なぜか好機に感じる、もしくは、怪訝に感じる。その理由はあなたの後ろにいるモノが、そう感じているからです」と私は神々しく感じましたが。あなたは、いかがでしたか?
最後の文を見てゾワッとしました…素敵な作品です。