第5話 這い寄る魔の手
夜が明け、朝食として果実を食した後、開けていた場所を後にした。
「なぁ、一つ聞きたいんだが」
「…………」
「あれ? おーい、聞こえてる?」
「…………」プイッと顔を逸らす。
「あー……イド?」
「うん、なーに?」
名前を呼ぶととても嬉しそうに笑顔でこっちを向いた。おいおい天使かよ。
「いや、こうして君について行ってるが、どこへ向かってるのかなーって」
「今向かってるのはサンリケの森っていう場所でね、ここから3日くらいかかるの。それでねそれでね、そのサンリケの森は普通の森より魔獣が多く生息していて……」
とても楽しそうに目的地とその特徴を語っているイドを見て、なんかテンション高いなと思ったが、実はイドは早朝からこのテンションであり、俺はその理由を分かりかねていた。
昨日名前を考えてやったのがそんなに嬉しかったのか? いやでも自然精霊に名前を付ける習性は無いと言っていたから、自然精霊にとって名前はあっても無くてもいい物ぐらいだと思うんだが、他に特に変わった事はなかったと思うし。
だめだな、さっぱりわからん。
「あー、もう一つ聞きたいんだが」
「なに?」
「こいつらも付いてくるのか?」
そう、こうしてイドと一緒に行動しているのは俺だけではなかった。イドの元に集まっていた動物や魔獣、その半分程が一緒に付いてきていた。
なんならその中に嘆きの獣をいる。お前あの森がテリトリーじゃないのか。
「ええ、一緒に来る? って聞いたらみんな付いてきたの」
「あの森の生態系とか大丈夫なのか?」
嘆きの獣とか明らかにあの森のボスだろうし。
「ここにいるみんなは魔獣も含めて約50匹。生態系は変わるかもしれないけど崩れはしないから大丈夫よ」
「へ〜そういうもんか」
俺が納得すると、イドは声を張って音頭をとった。
「さぁ、目指すはサンリケの森! みんな張り切って行くわよ!」
「おー」
その音頭に動物達も吠えて応えた。
―――――――――――――――――――――――
場所は遠く離れて、ある屋敷の一室。
「
「ええ、貴女が適任です」
その一室で二人の女性が話していた。
一人は赤髪の女性、蠱惑的な雰囲気を醸し出し、服も情欲が
もう一人は黒髪の赤眼が特徴的な女性、和服を着こなすその姿は大和撫子の言葉がよく似合っている。
対照的とも言える二人の女性がいがみ合っていた。
「嫌よぉ面倒くさい、そんなの他の奴に回せばいいでしょう」
「……私の言葉を拒否するおつもりですか?」
「あら、脅す気? 嫌だわぁ、あのお方の寝室にお呼ばれされてる回数が私の方が多いからって、嫉妬する女程醜い物は無いわよ?」
「…………」
和服の女性が黙り込むと部屋が震え始めた。地震ではない、彼女の放つ怒気が部屋を屋敷ごと揺らしているのだ。窓ガラスが全て割れ、用意されていたお茶菓子を盛り付けていた皿やコップも乾いた音を鳴らし割れた。
そしてそんな怒気を至近距離で真正面から受けても赤髪の女性は涼しい顔をしていた。
和服の女性は徐々に怒りを鎮め、深く息を吐くと
「そうですか、この件はそのあのお方から命令された事でしたが、そこまで嫌なら他の人に」
席を離れ退室しようとすると、ガシッと肩を掴まれた。
「もぉ、それならそうと先に言いなさいよぉ。私があのお方の命令を嫌がる訳無いじゃない」
凄まじい程の手のひら返しをし、任務の詳細を問いただした。
「改めて言いますが、今回の任務は
「
「自害したそうですよ、世界の敵になるぐらいならと」
「あのお方の寵愛を拒否するなんて、やっぱりこの世界には低脳しかいないわね」
「そこは否定しません。話を戻しますが、今回捕獲する
「転生体?」
「はい、どうやら
「今回狙うのはその新しく生まれた奴って事?だとしてもそう簡単にいかないわよ。あいつらどこにいるか分からないし前回見つけたのも偶然だったじゃない」
「そこは問題ありません、魔女が対策しています」
「対策?」
「はい、今回とった対策は、自然精霊が転生した瞬間を感知する。という物らしいです」
「へぇ、それで、もう見つかったの?」
「はい、
「現在はサンリケの森方面に移動中です。これを捕らえてください」
「いいわ、了解。全ては天王の為に」
「全ては天王の為に」
二人の女性が話し合う屋敷があるこの国の名は、天王国。
かつては龍国を名乗っていた国だった。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございます!!
衝動的かつ突発的に始めてしまい、完全な見切り発車状態ですが、見守っていただけると幸いです。
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3秒ルールで異世界無双 伽藍堂 @garandou953
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