第16神話(前書き)   そうぞう神

ーー数年前、とある神々が集まる場所にて




「んー………」




 けたたましい目覚まし時計の音が鳴る前に体が起きてしまう。

 目覚まし時計の電源を切っておいて鳴らないようにして、目をこすりながら目を開く。

 自慢の白髪の髪はもつれてしまって、髪に触れると指が絡め取られてしまう。




「……はぁ」




 溜め息を吐くと同時にベッドから抜け出し、共同生活をしている人間に限りなく近い女性型ロボット(秘書)と目が合う。


 


「マケ様、おはようございます。」




「ハァ〜…ウワ、おはよう。」




 あくびを混じえながら、相手の名前を呼んで朝の挨拶を返す。




「…ご飯出来てますよ。あと、服そこの机の上に置いときますから。」




「ありがとう。」




 机には畳まれて置かれた白衣があった。


 それを見ると寝起きも相まってストレスが溜まり、上司からの暴言や嫌味ったらしい説教をまたもや思い出してしまう。

 それに加わる周りの目。




「………ごめん、ハウワ。今日は朝ご飯いらないや。」




 そう言いながら寝巻きを脱いで下着を履く。

 勿論そんなことを秘書が許してくれる筈もなく…




「駄目ですよマケ様。ここ数年まともに朝ご飯食べれてないじゃないですか…」




 朝から作ってくれたマケに申し訳ないとは思う。でも本当に喉を通らないのだ。




「神は食べないだけじゃ死ぬことはないから大丈夫。」




 そう言っていつものTシャツとその上に純白の白衣が体を覆い、正装へと着替える。


「メイク!」


 そう言うと自前で創った複数のメイクロボットを呼び出し、一瞬で髪をとかして顔に水をかけてタオルで拭き取る。

 寝癖はヘアアイロンをロボットが持ってきて、絡みまくっていた髪が一瞬でサラサラな髪へと直った。

 後はファンデーションだのなんだのを適当にやってもらいこれで準備は完了した。


「で、でも!人間のことをより分かるために、小さな所から触れるのが大切だって言ってくれたじゃないですか!」



「そうなんだけどさ……本当に無理だ。ごめん。」



 そう言って私は机に置いてあった資料を持ち出し、この部屋からおいとまする。



「ま、マケ様…!」


 扉を閉じる際に後ろ姿を見ていた秘書が見える。

 彼女は機械ながらも、表情筋が悲しい顔で固まっていた。




「今日も頑張らないと…あいつに良いとこ見せなきゃ……」




 今日もこの場所で自分の目的の為に、職務を全うする。


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