第15神話   願い③   

 チラ


「……!」

 

 俺はネヴァ達3人の方へ目を向ける。するとすぐに俺の視覚を共有することが出来るせいか、すぐに此方に気付いた。


「……」「……」「叶夢…」

 

 そんな3人は動揺することなく俺に対して堂々とした態度を取る。

 ただでさえ無理ゲーに近しいのに、この3人というサポーターが厄介極まりない。

 この人達の信頼度的にラルバに付くのは仕方がない。だが、この人達が味方に居るのと居ないとじゃ天と地の差がある。

 この3人も繋いでいるということはラルバからの指示を受けることができるし、逆にラルバに危険を報告もできたりもするわけだ。

 今は心を読んでいないとは思うが、この人達は心を読もうとせずとも俺の次に行う動作だったりを的確に当てれる。今は何も俺に危害を加えることは無いが、万が一殺せることが可能な因子でもあれば間違いなく阻止してくるだろう。


「…丁度良い機会だ。ラルバ、少し話を変わっても良いか?」


(……ネヴァさん?)


 ここに来てネヴァへバトンタッチが来た。

 俺的にはこの人なら間違いなく弄ぶようなことはしなさそうなので少し安堵する。

 ネヴァがラルバに要望を呑み込むよう、ラルバはコクコクと頷く。

 それを確認すると、ネヴァは喋り始める。


 受け取ったネヴァはラルバの代替として話し始めた。


「率直に言おう………頼む、お前の力を貸してくれ!私達の友人を助けたいんだ!」


 頭を勢いよく、ネヴァは下げ、俺はその勢いに気圧されてしまいしどろもどろになってしまう。


「…え、えーと…」


 ただこの時、心の中で少しだけ必要とされたことに嬉しさが芽生えていることを感じてしまった。


「きょ、協力って……」


 俺は疑問しか浮かんでこず、頭を整理するために疑問をネヴァにぶつける。


「…私達に都合の良いことだっていうのは理解している。だけど後生の頼みだ!どうか聞き入れてくれないか!」


「ワイやラヴァナからも頼む!協力してくれ!」


 そういってマサルは頭を下げ、それに連れるように頭をラヴァナも深く頭を下げる。こんな光景は前世でも見たことはなかった。


「えっ…えっと……」


 俺はなんと声をかけていいか分からず、戸惑ってしまった。

 そんな最中一人が大きく動く。


「ほら!ラルバも!」


 頭を下げたままラヴァナが言葉を発した。


「え?は?ん?」


 ラルバの方向を見ると、話しかけられるとは思っていなかったのか意表を突かれ、呆けた顔をしていた。俺もだが。


「さっきから黙ってたけど……謝って。流石に意地悪だよ。そんなことしたって叶夢から協力してくれるわけないじゃない。」


 そして口から出たのは謝罪を促そうとする言葉だった。


「……は!?い、いや何で?俺は特に何も……」


(ら、ラヴァナさん…!)


 俺はこの言葉に不意を突かれてしまい、心がジーンとなってしまった。

 ラルバ側の立場にも関わらず、ちゃんと俺に丁寧に対応してくれる姿には感服だ。


「そうやって一々煽るから駄目なのよ。分かる。ほら失礼な態度ことのお詫びをしなさい。」


「う…」


 ラルバは何も言い返せず、言葉に詰まっていた。

 案外にも味方の言葉には弱いようだ。

 いいぞ、もっと言っちまえ!


「叶夢。他にもラルバに何かされたか?」


 ネヴァも俺の味方につき、ラルバは『お、お前まで…』的な顔をしている。


「あ、怪我してる俺を利用して何でも言う事を聞かせようとしたり、俺を弄んで命の危機に晒したり…」


「カスやな。」「最低だな。」


「うっ……」


 二人による連携攻撃がラルバの弱々メンタルを削る。


「うーわまじで?あんた……そこまでだと思ってなかったわ…この!」


「…ッ!!」


「あ、効いた。」


 そしてついにラヴァナにとどめの一撃を加えられ、ソファから崩れ落ち地面に倒れ伏す。ザマミロ。

 にしてもこれごときで折れるとは…よく一緒にネヴァ達といたもんだ。

 暫くは元の精神状態に戻ってくることは無いだろう。

 いやー久しぶりに良い気分だぁ


「…はいはい!さて取り敢えず面倒くさいのは居なくなったから話を戻そう。」


 ネヴァが間に入って先程の流れから、元の話に戻すために間に入りそこから先程の話の続きをする。


「話すと長くなるんだが……」


 その時のネヴァの顔は少しだけ悲しそうだった。話すのも少し躊躇っているようだ。


(………大丈夫か?)


 かなり間が空く。それほどまでにも躊躇してしまう程の心の傷があるのか?


「……昔、仲の良かった友達がいてな……」


 それでも覚悟が決め、口を開けて話し始める。その時のネヴァ達の顔にはただ哀しい表情だった。一つも綺麗な笑顔になることなく、ただただ思い詰めていることだけしか伝わらない。


「そして神達の所為で殺された。」


「なっ……」


 殺された?なら助けるなんて本末転倒じゃ…


(あ…)


 俺は今日見てきた神たちの能力バトルを思い出す。

 考えてみるとあんな強大な力を持つ奴らが死者蘇生が出来ない方が不思議なくらいだ。


「そのためにも過去に戻れるじげんの能力を使って助けたいんだ!だけど…そのためには強大な神通力の器じゃないと駄目だから……」


 成る程…それで俺の中に眠っている神通力を頼ろうって訳か。

 俺は漸くこの人たちの真相へと辿り着いてしまった。


「そう………ですか。」


 この人達の重い真相を知ってしまった俺にはこれぐらいしか考えつく言葉がない。

 生前では誰かが殺されたなんていうのはネットやテレビでしか聞いたことが無い俺にとってはなんと言葉を返すべきか分からなかった。

 変な慰めは余計に相手に嫌な思いをさせるだけだし、かといってそれ以外の言葉を掛けたとしてもただ気が沈むだけだ。この時の俺は変なことを口走らないようにすることだけしか出来ない。

 ただ助けてくれなかっただけで神達を恨む俺とは違い、俺なんかよりもよっぽど願いを優先すべき人物達だ。


「神達は………あらゆるものを融合・錬成・再生させたりしながら、私達のような生物を日々生み出していた…そこには人道なんてものはない。どんな手を使ったとしても1ミリも気に留めないような奴等だった……。」


 俺はこの時相手が自分を誘い出し、何か悪どい計画の為の罠じゃないかと疑うことさえもできなかった。

 あんな顔をされてはそれが本当に嘘だったとしても、嘘だという発想に至る方が難しかった。


「でも……そんな中にくうかんの神や、っていう希望も現れたことは良かった。あの人達は今の神の在り方を否定してくれる人だったからな……。」


「…あのくうかんの神様とは一体どういう関係なんですか?それにそうぞう神って?」


「話すと長くなるな……まぁ、簡単に言えば恩師達だよ。」


 くうかんの神はあのような当たりだったが、実は性根は良い奴なのだろうか?

 そしてネヴァは何か思い返している様子だった。その時のしみじみとした顔は酷く脳裏に焼き付いた。


 


 

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