第11話 そして別れと旅立ちと。

森の深部調査は簡単に行くものではないらしく、十分に時間を取って調査を行うとの話であり、一度部隊を再編、またキャンプ地も強化する事で本腰を入れるそうだ。


俺たち村人としては騎士団が本腰を入れた事に対する安心感と共に、騎士団が本腰を入れなくてはいけない局面を迎えている事に不安を抱えることとなった。



森の異変が村に与えた変化は騎士団の動向だけではない。

むしろこっちの方が村にとっては一大事だった。




幼馴染であるルミの教会所属、それに伴い村を出て王国内教会支部の本拠地への移動が決定したのである。



俺としては急に何があったらこうなるんだ。と困惑したが、知らない所で色々話が進んでいたらしかった。


なんでもフィーナ司祭による魔法勉強会後、俺が帰った後にルミは教会所属について聞いていたらしい。


回答としては

『光魔法に対する適正、女神信仰の有無』との事。

属性の中で光属性にのみ人によって適正があるらしく、光を属性として選んでも上手く使える者と使えない者がいるらしい。


また、信仰心もその適正に大きく影響をもたらすとかなんとかの条件が合わさる。


その上に教会の権威と技術の独占、といった利権が絡む事により、教会側としては適正のある者しか所属を認めていないとの事だった。



本来、ある程度の大きさの教会支部による面接のようなものを経て教会に所属できるかどうかが決定するのだが、今回この村にはイレギュラーが起きた。



森の異変である。



今、俺たち生活を脅かしている森の異変は周辺の魔力にも多少干渉しているらしく、光属性適正がある者は干渉された魔力に気づいてしまうらしい。


そして異変のある魔力に慣れていない者は体調に異変をきたす。言い換えればに陥るとのことだ。



定期検診で魔力酔いが発覚したルミは、面接を吹っ飛ばして教会所属が可能になったのである。



本人にも所属の意思があった為、魔力酔いが酷くならない内に移動しよう、ととんとん拍子で事が進んだ結果が今日の見送りの日であった。



因みに村の人達は事情を多少聞いていたらしく、一部を除いてそこまでの騒ぎはなかった。



では一部にフォーカスを当てよう。



まずは村長。


目に入れても痛くない可愛い可愛い孫娘が村を出るのだ。都市部の教会という、村とは比べ物にならないほどの安全性とは言え、まだまだ幼い。不安も察し得る、というものだ。


因みにルミの両親は本人の意思を尊重するらしく、不安ではあるが娘を信じ見送るそうだ。



そしてもう1人。




俺である。



何故か村の中で俺だけ知らされていなかった。

父さんも母さんも知っていた。誇張盛りなく俺1人だけが知らなかったのである。


なんでも俺には直接伝えるから黙っていてほしい、とルミが根回ししていたらしい。



…伝えてもらってないですがな。


そりゃあ驚くというものである。


「今日は大切な日だし稽古はやめておこうか。ほら、着替えて着替えて?」


なんて父さんから言われた時は何事かと思った。何か忘れていただろうかと記憶を引っ張り出しながら支度をしていた今朝である。




「ルミ、なんで教えてくれなかったんだよ?」


「言おうと思ったんだけど、思ったんだけど〜…」



渋る幼馴染。

なんも分からん…



「ルミ?時間をあげるから少し2人で話しておいで?」


とはルミのお母さん。

ルミに似た顔立ちの美人さんである。将来ルミはこう成長するのだろうか。



「ルクスくん、ちゃんと話すからこっち来て?」



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所は変わり村長宅。

a.k.a ルミの家である。


「黙っててごめんね?言おう言おうとは思ってたんだけど勇気でなくて…」


「それはもう気にしてないから理由を教えてくれるか?なんで急に教会所属したいなんて思ったんだよ?」


「うん…実はルクスくんがきっかけなの。」




…why?俺なんかしたっけ?




「ルクスくん将来冒険者になるんでしょ?村の人に聞いたの。


私、ルクスくんの力になりたいなって…

ルクスくんのパパさんと剣振ってるとことか、シュルクさんと森に行ってるの見てね?今の私じゃルクスくんの力になれるわけないなって思って…

私剣も振れないし、魔物とか怖いし、何もできない…から…


私がルクスくんの隣に立てるようになるには何かできなきゃなって…それで光魔法なら、って思ったの…」



どうやら本当に俺が理由だったらしい。



「なんでそこまでして…?」


「それだけは内緒!!ルクスくんについて行きたいの!ばか!」



怒られた。

いつも怒られるなぁ。



それも今日で当分お預けになるが。




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「ルミも覚悟を決めたんだよな。」


「うん、ついてく為だもん、私、頑張りたい。」


「なら笑顔で見送んないとな。さっさと力つけて俺を助けてくれよ?」



村から街へと向かう道の始まり。

俺を含む村民は迎えに来てくれたフィーナ司祭とルミ、そして教会の護衛を乗せた馬車を見送りに来ていた。



「ルミをどうかよろしくお願いします…。」


「安全な旅路になるよう全力を尽くします。お任せください。」


ルミの両親と護衛が挨拶を終える。

なんでもランクが高い信頼のおける冒険者との事だ。



「ルクスくんが何もしなくても魔物が逃げちゃうくらい強くなっちゃうから!村で私の活躍が伝わってくるのを待っててね!」


「それじゃあ冒険者になる意味がないだろ…」



お互い笑い合う俺たち。



女子の目には覚悟の炎が灯っており、

男子はいつでも帰ってこいよな、と軽い言葉をかける。




出会いも別れも突然なのである。


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