終章:私のタイトルをココに!
「マキナさん!マキナさぁん!!」
「そんなに呼ばなくとも聞こえてるわ!
...ん?イニティカ?」
目を覚ますと、泣き腫らしたイニティカが目の前に居た。夜が明けてきた頃合いのようだ。
「良かったぁ!ブッ飛ばして戻らなかったらどうしようかと...」
「マスター。私の心配は...」
「わあああぁぁ!!」
いきなりイニティカが飛びついてきた。目はもう真っ赤なのに、依然涙は止まない。
「どうした!?まさかあの
「『おばあ様』は消え去りましたよ!マキナさんのおかげでね!ただマキナさんが無事で本当に良かったんです...!」
よく見るとアタシの肌には無事な所など一つも無かった。あらゆる所で血のシミが固まっている。
「ハッ、アタシの心配はいいけどよお...お前も服着ろよな!」
「はっ...!だって仕方無いじゃないですか!私さっきまで
「新しい服買いに行かねえとな〜。ワンピース以外もお前似合うと思うぜ?」
「今店の経営だけでカツカツですよね!?これ以上浪費したら潰れますよ!」
「同意。今月の売上額を見るにこのままでは食費すらも危ういでしょう」
「ダイジョーブダイジョーブ。国が負担してくれるよきっと」
「「なるほど確かに」」
「何を納得しておるのだ」
ルーブルム公の声がした。ホント神出鬼没だなこの人......というか...!
「何女性の裸見てんだよ!」
振り返るとそこには布のおばけが居た。
「そう言うと思って軍服を持ってきたのだ。さっさと着替えるが良いわ」
「...こんなに要る?」
「なに。余は龍のままだと思っておったのでな」
言われるがまま服を着ていると、馴染み深い声が聞こえた。
「公〜!インヴィディア軍は敗走していきましたよ〜!」
「うむ。ご苦労」
「負傷者も多いんで公の『炎』で慰労料理しませんか?お腹ペコペコですよ!」
「とりあえず汝を強火で炒めようか」
公と大臣の話を聞いて笑っている内に、太陽は顔を出してきた。
「マキナさん」
「ん?どうした?」
「あの時断ってしまってすみませんでした。
マキナさんは私を大切にしてくれてたのに....」
「あの時?...あぁ」
精神世界に居た時のことか。
「私、結局一人で閉じこもって...たくさんの人を怪我させてしまって...どうすればいいんでしょうか...」
「......」
正直、水に流してくれて構わないのだが、そうするとイニティカなりのケジメがつかないのだろう。
「よぉし分かった!お前がこれまでのことをどうしても引きずるってんなら、
これからのことを一つの物語にして書き上げてこい!アタシとの日常でも、自分の成長でも何でもいい!
ただ絶対幸せな物語にすること!お前がそうなるように努力するんだ!」
「同意。書物に遺す行為をすることで、自ずと自分は見えてくると思われます」
陽光がイニティカの頬を照らす。一条の涙がつうっと零れていった。
「そうと決まったら
イニティカは涙を拭い、笑った。
「そんな...マキナさんとの日々は楽しすぎて一つに決められません!だから!」
イニティカは近くの木の棒を取り、地面に書いた。
『タイトルをココに!』
「マキナさんとの日々にタイトルを付けます!」
「良いじゃないか!書く時はアタシも混ぜてくれよ!」
「もちろんです!共作にしましょう!」
そうして、その日は私にとって一生忘れられない日になった。辛い時、苦しい時も振り返ってみると笑い話になるのだから不思議だ。
そしてまた、今日が始まる。
タイトルをココに! 独り湯 @Shiroyagi4681
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