第8話
山に仕掛けてあった虎ばさみにツキノワ熊が捕まっていたらしい。
町内放送で大きく放送されていた。その一匹だけとは限らないので山には入らないように。山近くを通るときは音の出るものを持って行くようにとのこと。
でもなぁである
他の目撃情報によると国道付近にもいたって。
虎ばさみは動物虐待や、間違って人が大けがをする可能性があるから禁止されているのだが、こんな村里近くに熊が出たほうが問題だし誰か知らないがよく仕掛けていてくれたとの評価する声のほうが大きい。
誰か知らないって言っても本当は誰かは大体わかっている。禁止されているって言っても20年も昔ではないし、猟銃を持っていない者にとって害獣除けに必要って意見も無いわけではない。猿だけでなく、イノシシ、鹿。でも間違って挟まれて足を切る大怪我をすることも昔はあったみたいだから法律で禁止されるのも無理はないのだ。
それはともかくとして、荒れて草が生い茂っている場所は住宅地にも多くクマが近づいても出会うまで気が付かなかったって事もありそうなことだ。
「ここは大丈夫だよ。」「その根拠は?」「俺が結構まわってるから。こんな感じで。」
「ちょっと、急に本体に戻るのはやめてよ。怖いって。」
ふいっと消えて変わった本体は結構大きい、とぐろを巻くと特にでかい。わかっててもやっぱり苦手だ。『これでも標準サイズなんだがな。』「いや、本当の大蛇サイズのほうが私的には増しってか、いや変わらなくていいから。」くくっと笑う声が頭の中で響く。この姿だと頭に直接出ないと話せないのは知ってるが久々なのでなんか変な感じだ。ちょくちょくいなくなってるとは思っていたけど本体に戻って散策していたらしい。クマよけ?こいつくらいになればカラスや猫なんて恐れることは無いだろうけどクマ?
『なんだ知らないのか、クマは俺たちとは相性が悪いんだ。余程のことがない限りは近寄ってこない昔からな。』「余程って例えば?」『頭に血が上れば人間だって見境なくなるだろう。変に刺激しなければ普通は大丈夫だ。』「それならまぁ」
『お前は妙にそそっかしいところがあるから重々気を付けるんだな』「怖いこと言わないで、本当になったらどうするの。」
「まぁ気を付けることだ。」またククッと笑って草の中に消えていった。怖いけど有難く思って神棚に対するように祈っておく。それにしても。田舎も物騒になったもんだ。人口減退がここにも影響してるんだろうな。
子供の頃は山に遊びに行くなんて普通だったけど、山里に家も多かったし子供も多かったしなぁ。荒地も少なくてそう言うのも害獣が出てくるきっかけになってるんだろうけど。
頑張って警備してくれてるんだから今日の夕飯はあいつの好きなものでも作ろうかな。生きの良いアカバナ買ったし。市場直送の魚屋があるって助かる。トラックで売りに来てくれる店なんて昔は無かったなぁ。昔は市場で誰でも買えたみたいだけど、今は漁業組合員じゃないと買えないみたいだし、でも魚が好きな蛇ってどうなんだろう。本体だけの頃食べれなかったから海の魚が好きって生態的にはどうなんだろうな。人化してると食も人間寄りになるのか。私としてはそのほうが助かるけど。あ、茗荷もあったな。刺身の付け合わせは茗荷と大葉の芽、うん、天婦羅でも美味しいんだろうけど油の始末が大変だから刺身のつまでいいや。
日々是平穏 ひなか東湖 @norifuku0679
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