未来へ

「ねぇ、俊樹君。ここの問題ってどうやって解けば良いの?」


「ん? ここはだな……」


俺と佳奈は現在、俺の部屋で期末試験の勉強をしていた。


東京への校外学習の時、初めは積極的な佳奈に俺は動揺を隠さないでいたが、自分なりに佳奈の事を考える事が出来た気がした。

俺に顔を赤く染めながらも積極的に来てくれる佳奈をとても愛おしく感じて、自分から行動を起こす事もあった。


以前、抱いていた妹の様だと思う気持ちとは、また違う気持ちに初めは戸惑ったが、校外学習が終わってからの一ヶ月という期間で、ゆっくりと自分の気持ちの変化を受け止める事が出来ていた。


俺の中で、佳奈の存在が妹から異性に変化しているのを感じていた。

佳奈と一緒に歩んで行きたい、佳奈に触れてみたいと思うようになっていた。


そう考えていると、佳奈が、「俊樹君、休憩しよう」と、声を掛けてきた。


俺はチャンスだ、と思い、口を開いた。


「なぁ、佳奈、期末試験が終わったら、デートしないか?」


「え? 今、俊樹君、デートって言った?」


驚いた表情をしている佳奈に僕は頷き返した。


「ああ、嫌か?」


「全然嫌じゃないよ! ……その、嬉しい」


俺の言葉に佳奈は嬉しそうな表情をして言葉を返した。


「それなら夏休み初日の午後一時にマンション前に集合な」


「分かった。ところで何処に行くの?」


「それは当日のお楽しみ」


「えー、じゃあ、気になるけど、楽しみにしてよう」


上機嫌な佳奈を見ながら、今まで、佳奈が頑張ってくれた分、俺もそれに応えなければ、と決意を固めるのだった。



そして、期末試験も無事に終わり、迎えた夏休み初日、マンションの前で集合した俺達は、ショッピングモールに移動した。


「懐かしい、よくここで映画を観たり、ご飯を食べたりしたよね」


「あそこのフードコートで良く食べたよな」


二人で思い出話をしながら、フードコートに入ると、佳奈が何かを見つけたのか、声を上げた。


「あ、あのラーメン屋さん、まだあったんだ! 一緒によく食べたよね」


「懐かしいな。安くて、美味しかったよな」


「そうそう。ねぇ、俊樹君、一緒に食べようよ」


俺は佳奈の言葉に頷くと、二人で醤油ラーメンを注文した。


注文してすぐに提供された醤油ラーメンを持って席に移動すると、手を合わせ、「いただきます」と、言って、食事を開始した。


「美味しい。全然変わらないな」


「そうだね。懐かしいな」


その後は、互いに黙々と食べ進め、食べ終えると、佳奈が口を開いた。


「俊樹君、今日はショッピングモールでデートするの?」


「最後は別の場所に行くけど、それまではそうだな。今日は思い出巡りをしようと思ってな」


「そうなんだ。そうしたら、この後、映画が観たい!」


佳奈の提案で映画を観た後は、よく行ったお店を巡り、気が付けば、外が暗くなり始めていた。


「佳奈、そろそろ移動しようか」


「何処に行くの?」


「内緒。行けば分かるよ」


俺は、「何処だろう?」と、考え込んでいる佳奈と共にショッピングモールを出た。


「あ、懐かしい。ここでよく遊んだね」


最後に俺が選んだ場所は俺達が小さい頃によく遊んだ公園だった。


「佳奈、実はこれを用意したんだ」


俺は母に連絡して、俺達が公園に来る直前に置いといて貰った花火とバケツを佳奈に向かって掲げた。


「あ、花火だ! ここでやったよね。懐かしいな」


俺達は、手分けをして準備をして、花火をし始めた。


「俊樹君。……えい!」


「うわ、花火を向けちゃ危ないだろう」


「だって、俊樹君、昔同じ事を私にしたよ?」


「わ、悪かったって」


そんな事をしながら、気が付けば、最後の線香花火も終えた俺達は火の後始末をした後、公園のベンチに座って、互いに花火の余韻に浸っていた。


そんな空気の中、思いを告げるなら、今だと思った俺は口を開いた。


「なあ、佳奈」


「どうしたの? 俊樹君」


「その、佳奈が女の子として見て欲しいって、言ってくれてから、時間が経っちゃったけど、気持ちの整理がついたから、俺の気持ちを聞いて欲しいんだ」


俺の言葉に、佳奈は、「……うん」と、静かに呟いた。


「俺、今まで佳奈の事を妹みたいだと思っていたけど、今はそうは思わない。今は、佳奈の事をもっと深く知りたいと思うし、一緒に並んで歩いて行きたい。……それに、その、佳奈にも触れたい」


「……うん。私も同じ気持ちだよ」


佳奈はそういうと佳奈は俺に視線を合わせた。


俺は佳奈との新しい関係を始めるのに必要な言葉を言う為に口を開いた。


「……佳奈。好きだ。付き合って欲しい」


「……うん、嬉しい」


佳奈はそう言って微笑むと、俺の手にそっと触れた。

俺はそんな佳奈を見て、この笑顔をずっと守っていこう、そう思って、佳奈の手を強く握り返した。




☆☆☆

ここまで、読んでいただきありがとうございます!

私の力量不足により、この先の話をどう展開させれば良いかが思い付かなくなってしまい、唐突で申し訳ありませんが、ここで完結とさせて頂ければと思います。


今作で経験した事を糧に新作も書いて投稿していこうと考えておりますので、投稿した際には是非読んで頂ければと思います。


レビューやコメント、応援や評価をして下さった方々、とても励みになっていました!

ありがとうございます!


最後まで読んでくださり、ありがとうございました!








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可愛くて内気な幼馴染がある日、俺に積極的にアピールをしてくるようになった 宮田弘直 @JAKB

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