第8話 あ、忘れてた。


「ほのか、頼む! 恥を忍んで言う! お兄ちゃんに10分……いや5分くれないか! お兄ちゃんが悟りを開くお時間をプリーズ!」

「あー! そうやってまたえっちな動画で一人でびゅるびゅるするつもりでしょ! 私達、知ってるんだからね!」

「うっそ!」


 夢の中とはいえ、家族に知られたくない事実№1を突き付けられるのは衝撃すぎる。ていうか葛も知ってるシチュなのはヒドくないか?! というかもうそろそろ夢から覚めてえ?! 


「ほのかでするならいいよ☆」

「できるかあああ!」


 現実でほのかの顔見れなくなるだろ!


「もーしょうがないなあ。罰ゲームはこれでいいや、密着ぎゅー」

「……ん?」

「ほのかにぎゅーされて嬉しい?」

「ドキドキだけどな。それなら嬉しいよ」


 これなら何とかなりそうだ。ほのか、甘えん坊だからな。ほのかは下着ちゃんとつけてるし! ほぼ全裸密着なんてしてないしてない、うん。


「お兄ちゃんは何でそんなに自己評価低いの?」

「そういえばさっきもそんなこと言ってたな。正当な評価だろ? ラノベとゲームオタな陰キャだし、彼女いない歴=年齢の僕だぞ?」


 モテた事なんて一度もないしな、ははは。


「お兄ちゃんの良さをわかってないだけだよ」

「僕の良さって何だ?」

「困った時泣いてる時には必ず助けてくれた」

「? そんなん当たり前だろ? 大切な妹分だ」


 ほのかと葛は家族と一緒。二人の為なら僕が全力を出さない訳が無い。僕が何を言われようと変人扱いされようといくらでも我慢できる。ま、変人なんですけど。


「小さい頃から私達をいっぱいいっぱい大事にしてくれた。辛い時にはたくさん頭を撫でてくれた。三人で迷子になった時お金もなくて泣いてたらお兄ちゃんもお腹が空いてるのにほのか達の分だけあんまんを買ってくれてにこにこ笑ってた。三人で子猫を見つけた時誰の家でも飼えないからって泣いてただけの私達の代わりに毎日毎日お母さん猫を探して走り回ってた。ほのかが高校受験する時もいっぱいいっぱい勉強を教えてくれたしお父さんとお母さんが旅行に行ってお兄ちゃんのうちに泊まって寂しくて泣いてた時もギュウってしてくれたほのか達がお兄ちゃんに会いたいって泣いた時はいつもの三倍ちゅっちゅペロペロしてくれて今夜は一晩中寝かせないよ覚悟しなって何回も何回もずんずんされていじわるばかばかお兄ちゃんはえっちなんだからでもほのかと葛には何でもしていいんだよ朝も昼も夜もどこでもいっぱいご奉」

「ちょっと待ってえ?!」


 それこないだも言ってたけど最後の方は事実無根だってば!


「あー! 途中なのにぃ、ぶー」

「怖かったんだもん!」


 ヤンデレ笑顔になってたよ?!


「で、ね? 私達はお兄ちゃんが大好き」

「お、おおう」

「だからお兄ちゃんにふさわしい女子になる」

「え?」

の事、もう少しだけ待っててね?」

「……ああ」

言質げんち取ったあ! おおお!」


 夢の中なんだ、ムキになって否定する必要はないもんな。……そっか、さっきはそれで怒ってたのか。


” 好きな人ができるまで取っときなさい! ”


 好意を持つ相手にそんなこと言われたらキツイよな。恋愛シュミレーションだったら好感度とんでもなく下がりそう、現実では知らんけど。


 今はほのかの気持ち、ありがたく受け取っておこう。あーあ、これが現実だったらな。……ん? 僕今何て言った? それに『私達』?


「頑張ればお兄ちゃんから言質を取れる事がわかったから今日は大収穫! ………あ、忘れてた。夢オチにしないと」

「夢オチ?」


 そういえばさっきもこないだのオシオキの時も似たようなこと聞いた気がする。あ、いいのか。あれも夢だったんだっけ。目の前で五円玉ブラブラされたのには笑ったなあ……あれ? ほのか?


「何か身体摺り下げてないか……ひ?!」

「んー?」

「ほのか、何してんの! そこダメ、イタズラはやめて!」


 すっごいぬるぬるしたもので弄られてる?!


「待って待って待って! これ、目が覚めたら切ない洗濯物が出来ちゃうから! 今そんな弄られ方したら僕我慢できないって!」

「ん。」

「何その肯定?! うわ、ああ、マジやめてぇ! 僕、本当に、出っ、あ、あ、ああああっ」

「ん。」

「あ、あ、あ、ああああああああ!」

「んん! ……ん、ん……んぅ☆」


 目の前がチカチカして……ダメだこれ起きたらパンツが悲惨な事になってるヤバいほのかか葛に見つからないように……しない、と。


 ……………………


 ………………………………


 …………………………………………

 


 ……………………


 ………………………………


 …………………………………………



「………ちゃん」


 ………ん?


「お兄ちゃん起きて! 夜ご飯のお買い物!」

「ふあ。もうそんな時間か」

「そんな緩んだ顔してー。またエッチな夢でも見たんじゃないの~?」

「ふ、馬鹿な事を」

「あ・や・し・い☆」


 そんな会話でごまかしつつ、ズボンの前にこっそりと手を当てる。よかった、冷たくない! せーふ。


 ほのかの顔を見るのが恥ずかしい。でも何かスッキリしてる。エロい夢って時には欲求不満の解消してくれてるのかもね。でもすっごく気持ちよかったなあ、あの感触……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます