第2話
カイというのは誰なんだろう?
ボクはちぎれた記憶の糸を一本一本
繋ぎ合わせようと試みた。
丹念に丹念にそれこそ白亜紀から
現在までの記憶をたどるように、膨大な
時間をかけて、それを実行しようとした。
しかし無理だった。
土台,ボクには人生における限られた
短い時間しか残されていなかったし、それに
欠けた記憶の断片は容易に復元されようとは
してくれなかった。
ボクはそれでも脳味噌の中のありったけの引き出し
を開けて、カイというワードを探そうとした。
しかしいくら探してもカイという
羅列されたワードは見当たらなかった。
「あなた、いつまでぼやぼやしてるの? 早く
会社に行って」
麒麟が大声で叫んだ。きっと麒麟のボキャブラリーには
会社に行け、というワードしかないのだと
ボクは思った。
消える男 消える女 @k0905f0905
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