墓石
義為
本編
祖父の行き先を知っている。赤なのか青なのか分からないけれど、とても眩い炎に焼かれて無機物の灰になる。そして、20年前には少し足りないくらい前、祖母のために作った墓へと向かうのだ。
私はよく覚えている。11月末、あのどんよりと曇った火葬場の空と、名前も知らない親戚のお姉さんがくれたMAXコーヒー。祖母の死は、当時幼かった私の前では甘い香りで隠されていた。穏やかな死に顔で、微笑みながら眠るその顔に花を手向けた。
あれから、20年。祖父の死に顔は、やはり眠るようなものではあったが、この暑さ残る曇夜に、酸素を求めるように口を開けて硬直していた。心停止を知らせるブザーが鳴り続ける病院の一室で、私は涙を目に溜めるも、零す資格はないと思っていた。認知症の進行で言葉を発しなくなった祖父に会うのが嫌で、怖くて、理由をつけては遠ざけていたことを、悔やむことすら疑いない本心ではない。やはり嫌なものは嫌で、怖いものは怖かった。
死。初めて見る、剝き出しの死。大柄であった祖父。徐々に痩せ細る姿を見ていた。その最後の温もりに、私はついに触れることなく、冷たい灰色の石室に、物言わぬ灰色の祖父を仕舞い込むことになるのだ。
墓石 義為 @ghithewriter
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