第5話

今日は満月だ。

テレビなんかでは中秋の名月だとかでお月見特集のようなものもあった。

お月見なんてちゃんとした事は無い。

せいぜいお酒を飲みながら眺める月見酒もどきくらいで。

だけど今日はお月見をしてみようかと思い、3本100円のお団子とお茶を買って、いつものベランダで部家の灯りも消して月を眺める。

月が綺麗だと言われる相手もなく、今の自分の格好を見て、そんな相手出来るわけないかと少し悲しくなる。

ヨレヨレのTシャツにジャージ姿で好きな相手もない。

憧れはある。

好きな人がいて幸福な毎日というものに。

だが職場はオジサンばかりだし、出会いもない。

憧れてはいるのに諦めてしまった。

大切な人がいる生活はどんな色だろう?

ぼんやり考えながらお団子を食べる。

口に入れた瞬間にスマホが着信を知らせてきた。

名前を見ると学生時代からの男友達から、珍しい。

急いでお茶で流し込んで電話に出る。

久しぶりの友人との会話は、とても楽しい時間だ。

そして結局いつも通り、お月見なんてしないで終わるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小さな物語集 瑚夏 @konatsunatsu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ