第31話
「大胆なこと、しちゃったな、私」
東条の部屋を離れた小鳥遊は、先ほどの東条とのキスの感触を思い出すように自分の唇に指を当てる。
東条が少しは元気になってくれたようで嬉しかったし、何よりうまく沈んでいる東条の心の隙間に入り込むことができたことに彼女は満足していた。
「これで少しは私のこと、意識してくれたかな…?」
高鳴る胸に手を当てながらそう一人ごちる。
先ほど小鳥遊が東条を元気づけるために紡いだ言葉に、嘘はなかった。
だが小鳥遊は嘘をつかなかっただけだ。
あのようなことをして東条を励ました真意を打ち明けることはしなかった。
小鳥遊にとって、東条が怪人エックスでも構わなかった。
東条が四年前の大災害の原因だろうが、両親や妹を殺していようが、その正体が怪人であろうが関係なかった。
大好きな東条の唯一の心の拠り所に自分がなることで、東条が自分に依存する状態を作り出すことこそが彼女の目的だった。
落ち込んでいる東条に取り入って、自分だけが味方であることを強く東条に意識させる。
そうなればいずれ東条は自分のものになる。
「はぁ…大好きだよ東条くん…」
誰も聞いていない場所で、東条に対する愛を言葉にする。
初恋の相手を自分のものとするために、愛する東条に振り向いてもらうために、彼女は今のこの状況を利用することすら厭わなかった。
「ああ…私ってこんなに性格悪い子だったんですね…」
二度目となる自虐のセリフを小鳥遊は口にする。
だが一度目と違い、彼女の口元にはむしろ現在の自分に満足するような笑みが浮かんでいた。
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ピンチの魔法少女たちを怪人から助けていたらいつの間にかヤンデレハーレムになっていた件 taki @taki210
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