高校受験に失敗して不本意入学したら、近くの机の上に座るギャルのパンツがよく見えるんだけど
フィステリアタナカ
高校受験に失敗して不本意入学したら、近くの机の上に座るギャルのパンツがよく見えるんだけど
誰にでも失敗はあると思うが、僕は本当に嫌な失敗をした。それは高校受験を失敗したことだ。合格発表で周りが喜ぶ姿を見ている中、何とも言えなかった。そして僕は、違う高校に不本意入学をすることになった。
「帰りにマクバーガー寄らね?」
「あたし、お金無いから無理」
「臨時収入があったから俺が奢るよ」
「ホント! マジ
「マジ卍って何だよ」
「ノリで言った」
五時間目の終わり、二つ前の席で陽キャと呼ばれる男女グループが楽しそうに話をしている。まあ、それが何だって話なんだけど、僕にとってはドキドキする時間だ。
(一ノ瀬さん、またパンツが見えている)
席替えでこの席になって一週間。机の上に座るスカートの短い彼女を見るとパンツが見えている。見ないようにしなきゃと思いながら、悲しき男の
「夏美、見られているよ」
「えっ、何?」
「パンツ、あの男子に」
「あっ」
「アイツ何かキモイんだけど」
「うん。でも悪いのはあたし。こんな座り方しているから、見られてもしょうがないよ」
「そう思うならそこに座らなければいいのに」
「なあ夏美、俺にもパンツ見せてくれよ」
「あんたなんかに見せるわけないでしょ」
「減るもんじゃないし別にいいだろ」
「良くない。変態!」
バツが悪い。彼らの話を聞きながら、早く六時間目が来ないかとそう思った。
◇
六時間目。さっきの見た映像が頭から離れない。まるで白昼夢を見ているかのように、一ノ瀬さんの艶めかしい姿が脳裏によぎった。これは僕が悪いわけじゃない。水色のパンツを見て、下着姿からムフフなイメージが――、僕は変態なんだろう。
「ごめん、あたし先生に呼ばれてる。先に行ってて」
「わかった。じゃあ、夏美先に行くな」
「うん」
放課後、教室の掃除をしていると陽キャグループの会話が聞こえてきた。「まったく。掃除サボるなよ」そう思いながら手を動かしていた。
翌日も一ノ瀬さんはいつもの机に座る。気になってチラっとみると緑の縞パンが見えた。見てはいけないという気持ちはあるが、彼女の「でも悪いのはあたし」その言葉にいつも甘えてしまう。黒や赤、毎日色が変わる布切れを見て、それが楽しみになっている自分がいることに気がついた。そんなある日の放課後。
「あっ、忘れた」
カフェオレを飲んでから帰ろうと、自販機の前で財布を探すと財布が無い。きっと教室の机の中に置き忘れたのだろう。職員室へ行き、教室の鍵を借りて教室に行くと陽キャグループの話している声が聞こえてきた。教室の中には入らずその会話を聞く。
「人通りの少ないところでオヤジ狩りをしたいんだけどな」
「別にいいじゃん。弱そうなヤツ捕まえて狩れば」
「まあ、そうなんだけどよう」
「夏美達に
「それはかわいそうじゃね?」
「でもアイツらも金使って遊んでいるんだから、そのくらいやらせてもいいんじゃないか?」
「うーん。なあ、お前はどうだ?」
「俺達だけなのは不公平だから、いいんじゃね?」
「じゃ、あとでアイツらに言うわ」
僕はその会話を聞いて、その場に居たくなかった。アイツら何を考えているんだ。職員室に鍵を返し、そのまま図書室で時間を潰すことにした。
「あれ?」
図書室には意外な人物がいた。一ノ瀬さんだ。彼女は僕に気がついて、手招きして僕を呼んだ。
「一ノ瀬さん、勉強?」
「うん。英語の復習」
「何か意外だな」
「勉強しない人だと思ったの? 失礼な」
「ははは」
「ホント村井君って」
「えっ、僕の名前知っているの?」
「知ってるよ。あたしの記憶力なめんなよ」
「それで英語を勉強していると」
「綴りが覚えられないんだよね」
「そうだよね」
「だよね。村井君座ったら」
僕は椅子に荷物を置き、一ノ瀬さんと向かい合って座る。
「ねえ、村井君のことムッちゃんって呼んでいいかな? あたしのことナッちゃんって呼んでいいから」
「いいよ。ナッちゃん」
「うわ、適応早っ!」
「まあね」
一ノ瀬さんが英語の勉強をしているので、僕も英語の勉強をすることにした。英単語帳を取り出し、黄色のマーカーペンを取りだそうをするとペンを机の下に落としてしまった。
「あっ」
ペンを取るために机の下に潜る。目の前にスカートの短い女子高生。少し開かれた足。こんなシーンは中々ないだろう。僕は思わず彼女の足を凝視する。彼女は紫色の下着を付けていた。そして足が閉じられる。
「ねえ、ムッちゃん見た?」
僕はペンを拾い上げ、机の下から抜け出す。
「見たって何を?」
「あたしの黒のパンツ」
「えっ? 紫じゃん――あっ」
「ふふふ、ムッちゃんのエッチ」
「ごめん」
「大丈夫。いつもムッちゃんに見られているから、平気になっちゃった」
そんなことを言うなんて、ひょっとして一ノ瀬さんは僕のこと好きなのかな? いや、ありえないか。
「そうなのか」
「うん。それにムッちゃん優しいし」
僕は優しいのか? 首を傾げる。
「高校受験のときに三角定規を女の子に貸さなかった?」
「貸した」
そう、受かりたかった高校の試験で、三角定規を忘れてきて困っている女の子がいた。予備もあったからその子に三角定規を貸したんだっけ。
「せっかく貸してくれたのに、あたし落ちちゃったけど」
「えっ、じゃあ――」
「知らなかったの? ムッちゃんと同じであたしも落ちてこの高校に入ったの」
「そうなのか」
何だか意外だ。僕と同じ境遇の人がいるなんて思いもよらなかったからだ。
「ムッちゃんはゴミ捨てを率先してやるし、電車でお年寄りに席も譲るし、駅前の募金箱にお金を入れているし、良い人だよね」
そう言われると何だか恥ずかしい。
「だからムッちゃんにパンツ見られてもいいかな。嫌悪感は特に無いの」
これで興奮しない男はいない。積極的に見にいっても許されるような気がした。それと同時にこんな子をあの陽キャの男子達の傍に居させたくない、そう思った。
「一ノ瀬さん、あのさ」
一ノ瀬さんは僕を真っ直ぐ見る。
「さっき教室で聞いたんだ。一ノ瀬さんといつも一緒にいる男子がオヤジ狩りをしているって」
「そう……」
彼女の瞳は悲し気に見えた。
「僕が言うのもなんだけど、アイツら気をつけた方がいいと思うよ」
「あたし最低だよね」
「最低?」
「そのお金で遊んでいるんだよ。最低だよ」
そんなことは無いと言いたかった。アイツらが悪い、そう言いたかった。
「ムッちゃんさ、あたしどうしたらいいかな?」
「一緒に遊ばないと仲間外れにされてしまうってこと?」
「うん、そう」
僕は素直に思っていることを言う。
「離れた方がいいと思う。教室でアイツらの話を聞いてさ、アイツらは一ノ瀬さん達を巻き込んで美人局をするつもりだよ」
「そうなんだ」
教室ではもうグループが出来上がっている。今、一人になったら学校に居づらくなるのだろう。だから僕は思わず言ってしまった。
「ハブられて教室に居づらかったら、僕のところに来てよ。話相手になるくらいは出来ると思うから」
「そんなことしていいの? まるで彼女じゃん」
彼女。ああ、一ノ瀬さんが彼女になってくれたら嬉しいかな。
「じゃあ、僕は彼氏ってことで」
「ははははは。じゃあ、その時はよろしく」
この後、三十分ほど二人で勉強する。教室に財布を取りに行った後、一ノ瀬さんと昇降口へ行くと、彼女から言われた。
「ムッちゃん、せっかくだから一緒に帰ろうよ」
「一ノ瀬さん、これ彼氏になれるかの試験?」
「そうだね。まあ、そんなところ。あとあたしのことナッちゃんでいいって」
「わかった、ナッちゃん」
「じゃあ仲良くなった記念にアイス奢ってね」
「一緒に帰ろうって、それが目的か」
「うん!」
ナッちゃんと一緒に帰る。途中アイスを買って二人で食べているときに、電車で彼女と同じ駅を使っていることを知った。そして彼女は提案する。
「じゃあ、これから一緒に学校へ登校しない?」
「いいの?」
「うん。また、何か奢ってもらうから」
完全に彼女のペースだ。彼女と一緒に帰る時間が心地よくて、僕はその案に乗っかることにした。
「よし、一緒に行こう。
「そうだね。何時でもいいけど、できるだけ早い方がいいかな」
ナッちゃんと一緒に登校する時間は学校生活の一つの楽しみになった。まあ、一番はパンツをチラ見することだけど。はい、僕は変態です。
◇
「ん?」
ある日のこと。掃除で黒板を消しているナッちゃんは浮かない顔をしている。僕は気になったので彼女に話しかける。
「どうしたの?」
彼女はこちらを見たあと、黒板消しを置き、机運びを手伝いに行った。「何かある」そう思い。彼女に放課後残ってもらうようお願いした。
「で、ムッちゃん何?」
「とりあえず、ついて来てもらってもいい?」
ナッちゃんをつれて屋上に繋がる階段を登る。一番上の踊り場で彼女に聞いた。
「ナッちゃん。今日、元気が無いみたいだけど何かあった?」
彼女は俯き答えてくれない。なのでカマをかけてみることにした。
「美人局のこと?」
彼女はコクリと首を縦に振る。僕は彼女の言葉を待った。
「どうしたらいいかな?」
おそらく彼女の中で答えは決まっているのだろう。僕が言ったことが決め手になるかもしれないし、迷いが深まるかもしれない。自分の本心を彼女に伝えた。
「悪いことを誘う友達は本当の友達かな? 十年後、一緒にいる仲の良い友達になっているのかな? わからないけど、僕は縁を切って違う友達を探した方がいいと思うよ」
彼女は黙ったままだ。
「ナッちゃんさ、久しぶりに一緒に帰らない?」
僕はそう言い、先に階段を降りる。それに続いて彼女も降りるが、考え事をしていた為なのか階段で足を踏み外した。
「うわっ!」
咄嗟に彼女を捕まえ、彼女の下敷きになり倒れた。右腕は痛かったが、左手には柔らかい感触が。
むにゅ
彼女の体を離そうとして、彼女の胸を揉んでしまった。彼女は慌てて体を起こし、僕に言った。
「ごめん、痛かった?」
どうやら、彼女は胸を揉まれたことより、僕が下敷きになったことを気にしている様だった。
「だ、大丈夫」
顔をしかめながらそう言うと、彼女は心配そうに僕を見ていた。僕は起き上がり、制服についた汚れを払う。
「行こ」
彼女と一緒に下校をする。直観で「このまま帰してはダメだ」と思い、帰り道の途中にある喫茶店に寄ることにした。
「ご注文は?」
「カフェオレを一つ。ナッちゃんは」
「あたしもカフェオレで」
「カフェオレ二つですね」
カフェオレを注文し、ナッちゃんが何かを話してくれるのを待つ。カフェオレが運ばれて来た後、彼女はようやく口を開いてくれた。
「ムッちゃんはあたしのこと好き?」
登校するとき感じていた、居心地の良さ。彼女と一緒にいることはとても嬉しい時間。そう僕は既に彼女を好きになっていたのだ。
「うん。ナッちゃんのこと好きだ」
彼女はカフェオレを一口飲み、言う。
「じゃあ、あたしを彼女にしてよ。傍にいてくれる?」
「うん。喜んで」
彼女の沈んだ表情は消え、何かを決意したように見えた。
「あたし、アイツらと距離を置く」
「うん」
「だから休み時間、よろしくね」
「休み時間だけでいいの? 下校も一緒でいいよね?」
彼女はコクリと頷く。
◇
この日から、ナッちゃんは陽キャグループとは徐々につるまなくなっていった。その分、彼女は僕の傍に来て、僕と一緒にいる時間が増えていく。そしてある日、彼女がいた陽キャグループの男達に僕は呼ばれた。
「夏美が俺らを避けているようだけど、お前何かしたんか?」
僕は体育館裏に移動している際中、念のためバレないようにスマホの動画モードを起動し、記録が取れるようにした。
「うーん。何もしていないよ」
「何もしていないわけないだろ! お前、いつも夏美と居やがって」
ああ、こいつナッちゃんのこと好きなんだな。一人で相対峙できなくて仲間を連れてくるなんて情けないヤツだな。
「ナッちゃんは僕と居たいんだよ」
「ナッちゃんって、お前何様なんだよ!」
胸倉をつかまれる。僕は怯まずに彼らに言った。
「お前らオヤジ狩りをしているんだってな。そんなことしているから愛想つかされたんじゃないの?」
「てめぇ!」
拳を喰らう。
「言い返せないからって殴るなんてダサいよ」
「うるさい!」
そこからは防戦一方。僕は殴る価値も無いヤツを殴らないと決めていた。
「これ以上はマズイだろ、そろそろいいんじゃね?」
「わかったよ」
暴行が止まる。痛む体をさすり僕は立ち上がった。
「お前、先生には言うなよ。言ったら全員でボコすから」
彼らが帰ったので、僕も帰ることにした。保健室に寄ることも考えたがきっと保健室は開いていないだろう。一階の廊下を進むと昇降口ではナッちゃんが待っていた。
「あっ」
「ナッちゃん、お待たせ」
「どうしたの! 顔青馴染みが出来てるよ」
「まあ、ちょっとね。帰ろう」
これでいいんだ。きっとこの傷でナッちゃんはアイツらと更に距離を置くだろう。彼女を素行不良なヤツらから守ることに繋がるのだから。そして帰り道、彼女から思っていなかったことを言われる。
「あたし、グループに戻るね」
「えっ」
「あたしのせいで殴られたんでしょ」
もしかして、僕の為に元に戻ると言うのか。僕が想像していたこととは違うことを言われ驚いてしまう。
「ナッちゃん、僕は平気だよ、だから――」
「あたしは平気じゃない……」
「僕はナッちゃんが犯罪を犯す方が平気じゃない」
彼女は悔しそうに口を歪めていた。
「ナッちゃんは僕の彼女。彼氏からのお願いってことで、戻らないでよ」
「わかった……」
◇
あれから特に学校生活で変わったということはない。ただ、いつの間にか陽キャグループの連中を学校で見なくなった。
「そういえば居ないな」
「ムッちゃん」
「ん?」
ナッちゃんが僕に言う。
「警察沙汰になったんだって。お金を巻き上げようとしたら返り討ちにあって男子は病院送り。女子はまわされて、家に閉じこもっている」
そうか。やはり悪いことをし続けたら、因果が巡ってくるのか。女の子達が犯されてしまったことは悲しいことだけど、ナッちゃんが巻き込まれなくて良かった。
その日を境にして、ナッちゃんは違うグループの女の子に誘われ、そのグループの輪に入ることが出来た。僕の方はどうなったかと言うと、勉強のかいあってか学年一位を取ることが出来た。不本意入学だったが僕の高校生活は充実している。これもナッちゃんとの出会いがきっかけだろう。彼女は明るく笑い、いつものように机の上に座る。
「ナッちゃん」
「はーい」
「パンツが見えそう」
「そうなんだ。ニシシシ」
「机の上に座るの止めたら?」
「座らなくていいの? もう見られなくなるよ」
「座ってくだ――ああぁぁぁぁ!」
「ん?」
「学校ではダメ! 家ならいい」
「そうなの? じゃあ、ムッちゃんの家に行くね――勉強をお・そ・わ・り・に」
「……見せてくれないの?」
「どうしよっかなぁ」
彼女は悪戯っぽく笑う。僕はその笑顔を見て、「人間万事塞翁が馬」人生何が起こるかわからないなと強く思った。
「ムッちゃん、パンツが何色か当ててみてよ」
「うーん。黒か赤か水色か緑の縞パン」
「ぶっぶー、残念、全部ハズレ。正解は――」
「何色?」
「はいていませーん」
「穿け」
「ウソウソ、ムッちゃん家に行ったら見せるね」
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