第11話

「みいつけたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 目の前の木がなぎ倒されていく。横に転がって避け、ベルトにさしてある投擲用ピックを六本手に取る。


「ソイル」


 ピックに土魔法を付与して投げる。緑の影が重なり敵一人一本で広がって飛んでいき、避ける敵を追尾して刺さり、辺りに汚い呻き声が響く。


「ぐあああああああああ」


 武器に魔法を付与するのも特訓の成果で、付与した属性で効果も変わる。土属性なら威力が上がり、風ならスピードが、火なら火を帯び、水なら触れたものを凍らせる。


 だが、覆面の男のうち一人が両手を前に突き出しその手から光線が飛び出す。


「光属性……さっきの光もあいつかッ!ダークガード」


 咄嗟に反対属性の闇属性でかき消すが、片手だった上に所詮は二ヶ月の努力。かき消しきれず、痛みとともに後ろによろける。


「アキカゼ! あいつらの視界を一瞬遮って! その間に距離を詰めて、声のヤツを叩く。ニニが出たらソフィア姉ちゃんも出てくると思うから!」

「おけ。ウォーター、ファイア、ウィンド」


 ウォーターで空中に水を出現させ、火で熱して水蒸気にして、風で拡散させる。


「ありがと! あとニニの特性は治癒だから!」


 スッと体から痛みが消え、力が満ちてくる。風の精霊に力を借りているのか、残像を残してニニが飛び出し、二本の剣を抜きざまに放つ。


「いでええええええ。この野郎おおおおおおおおおおお」


 山賊コーデが曲刀を抜き、応戦する。少し遅れて、ソフィアさんとアルメットさんが出てくる。ソフィアさんは特大剣を覆面の一人に振るい、ワンテンポ遅れて分銅鎖がもう一人を絡める。アルメットさんは短剣のようなもので格闘する。ルルが残りの二人を上空から、地上から魔札で相手をしてくれているので、自分はニニの援護に回る。


 走りながら、短弓をベルトから取り、何本か同時に矢をつがえ、ファイアを付与して放つ。


 狙い通り背中に命中する。走っているのと軌道が不規則なため、位置がばれにくいはず。


「そこだあああああああああああ」


 さっきもだったが少しの物音で気づかれる、耳がいいらしい。想定外で避けられず、直撃する。みぞおちを殴られたような痛みが走り、背中から地面に打ち付けられ、一瞬息が詰まるがすぐに収まる。離れていてもニニの治癒は効くらしい。


 仰向けの状態から体をひねってうつ伏せになり、その姿勢のまま矢をつがえ、矢継ぎ早に何本かずつ放つ。


 声を避けながら、矢を放つ。その後も何本か山賊コーデに刺さり、ニニの剣閃も何度もその体の上を通過しているが一向に効いている様子がない。


「硬いな」


 いくら治癒があるとはいえ、次第に倦怠感を感じる。


「「アルアル~アルゥ」」


 森から奇声を上げながら十数人の上裸の男達が出てきて山賊コーデを素手で殴り始める、よく見るとアルメットさ――


「待たせたね」

「アルメットさん?」


 後ろに服を着たアルメットさんが立っている。


「あれは?」

「私の特性の分身だ、魔法は使えないが武器を与えれば戦力にはなる」


 土煙を上げて上裸アルメットさんから満身創痍の山賊コーデが出てくる。


「ッ……覚えてろよおおおおおおおお」


 山賊コーデが右手に持った石のようなものを砕くと同時に姿が光に包まれて消える。


「転移石か……」

「ひとまず脅威は去ったようだね。覆面の男たちを縛ってから、君たちの家に行こうか」


 みんなが集まってくる。すかさずニニが治癒をかける。


「あれ、ニニ自分のも治せるの?」

「ああ、これは違うやつなんだ。後で追々」


 縛ったり、怪我を確かめたりしているうちに憲兵隊が到着する。面族――名は体を表す。お面を被った、遠い東の島国の種族らしい。お面以外は人族と変わりない――と隻腕の騎士が出てきて、隻腕が話し出す。


「憲兵隊第二師団副長ルキウス・フィリップスだ。こっちは団長のカワウソだ、こいつは口が利けなくてな。さて本題だが、轟音やこの木は君たちがやったのかな? 君たちは何者かな?」

「強者の集いという集団に襲われて、交戦しました。そして僕はアキカゼで、これがルル、ニニ、ソフィアさん、アルメットさんです」

「強者の集いか……何? アルメット、アルメット・フェーズジアか? 死んだんじゃ」

「拘束されていた、強者の集いによってね」


 おかしいな、


「え? アルメットさん今強者の集いによってって言いました? でも監獄には竜人会のマークが」


 アルメットさんの顔が曇り、ルキウスさんの顔は驚きに満ちている。


「こりゃあ驚いたな、当代最強と謳われたアルメットが、強者の集いと竜人会に……そういや竜人会の会長が元老院に入って古い監獄を借りていったような」

「そうか、カーズが……」


 心当たりがありそうなアルメットさん。


「知り合いですか」

「いや、まあそうだな。それはまずいな、ルキウスくん私ににあったことはとりあえず隠しておいてくれ」

「分かった、じゃあ……そうだ、交戦したとかいう強者の集いのやつらは」

「六人いて一人には逃げられました」

「よし五人の身柄はウチが預かろう、逃がした奴の風貌は」

「毛皮のようなコートを裸の上に羽織って、腹には縄を巻いて同じく毛皮のようなものを腰に巻いていました。あと曲刀を下げてました」

「分かった、情報を回しておこう」

「じゃあ」

「ああ、ひとまず帰って構わない。最後にどこに住んでどこで働いいているかだけ」


 住所と小籠包屋「ふ・れすとらん」で働いてると告げ、身柄をカワウソさんとルキウスさんに渡して今度こそ空を飛んで家に帰った。


****


 朝食を食べながら話す。


「そういえば私達は一文無しでね」

「アルメットさん、それならいい職場知ってますよ。一緒に働きましょう」

「ルルさん、せめて店長の許可は取ってからに……」


 結局ふ・れすとらんの従業員が三人増えました。

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群れない陰キャが異世界で群れて頑張る話(仮) クリヲネ @kuri_wo_ne

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