尊いラブコメを、読みたい人へ…恋は、カスハラな痛みからよみがえる(こともある)

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 初恋の記憶よ、尊く花開け!「カスハラ」とってもいやなその言葉は、実は、魔法だった(らしい)

 初恋の記憶は、尊い。

 忘れたいのに、忘れられない。

 痛くゆれ動く気持ちが、恐ろしくもあり。

「カスハラブコメ」

 私は、あるコンビニでのある経験をそう呼ぶことにしている。

初恋の人と転校か何かで別れ、ずいぶん経った。

「今ごろ、あの人は何をしているんだろう?」

 そんな寒い気持ちが、コンビニと不思議に共鳴したんだな。

 そうそう。

 コンビニといえば、今、「カスハラ」対策が良い感じ。

「カスハラ」

 それは、カスタマーハラスメント。

 客からの、理不尽な迷惑行為や要求のこと。

「おい!」

「お世話になっております、○○でございます」

「あんた、○○っていうのか」

「どのようなご用件でございましょう?」

「俺の孫が、泣いている」

「…」

「○○さん!孫が泣き止むおもちゃを、持ってきてくれよ」

「も、申し訳ございません。当店では、おもちゃの取扱いはしておりません」

 「…何?最近のコンビニは、何でも売っているんじゃないのか?」

「申し訳ございません」

「配達サービスを、やってくれ!」

「…」

「お客様は、神様だぞ!」

「…」

「○○さん?高齢者と孫を、いたわれよ!」

 わがまま世代。

「…それでは、お客様のご住所をうかがってもよろしいでしょうか?」

「個人情報だから、ダメだ」

「…(泣)」

 全国のコンビニ全従業員の半数近くが、被害を受けているらしい。

そこで、ネームプレートに書く店員の名をイニシャルにしたり、「店長」「スタッフ」「クルー」「アルバイト」などとする工夫がとられはじめられている。

で、私は。

「いらっしゃいませ」

 最近、1人の男性店員が胸にしているネームプレートに釘付け。

「思い出」と書かれていた。

 思い出さんという名前の人なのか、カスハラ対策ネームなのか、ビミョーなところ。

毎日のように、その店で買物。

「あ…。今日も、思い出さんがいる」

 ドキリ。

 彼が、初恋の人と良く似ていたから?

「あの…」

「いつも、ご利用ありがとうございます」

 今だ!

 客が私だけのとき、勇気を出して聞いてみた。

「私…。あ、あの、あなたの名前を知りたいんです。理由は、言えませんが…」

 私の顔、真っ赤。

そこに、キセキ!

彼の顔も、真っ赤に染まっていたのだ。

  「やっぱり、君だったのか。転校して以来だね」








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