死なない世界の殺し方

@niwahiyo

OP:絶望の朝


「助けて!誰かぁ!!!」


・・・うるさいな。

昨日は夜中まで飲んでたんだから静かに寝かせてくれよ。


そんなことを思いながら、俺三条桃《さんじょうもも》は目を覚ました。


「痛い痛い!誰か早く助けて!!」


すると再び聞こえる叫び声。

眠気眼だった俺の頭は、冷水を浴びたように一瞬で目を覚ます。


何故なら、その声があまりにも必死すぎて、

ただ事ではないことが容易に想像が付いたからだ。


これは・・・警察を呼んだ方がいいかもしれないな。

俺はそう思いながらカーテンを開けて外の様子を確認する。


そして、そこには想像もしなかった光景が広がっていた。


「おい!やめろ!俺だよ!うわぁ!」


「ちょ!なに!?頭おかしいんじゃないの!やめて!」


俺が想像していたのは、乱暴者に襲われているとかその程度だ。


それがまさか・・・街中の人たちが襲われる光景が広がるだなんて誰も思わない。


最初に声をしたほうを見てみると、女性が複数人の集団に埋もれて四肢を噛み千切られている。


間違いなく痛いはずだ。

痛いどころの騒ぎじゃない。


それなのに、女性は噛み千切られたことなど意に介さずに、立ち上がり始める。


すると今まで彼女を襲っていた周囲も襲うことを止め、逃げ回る別の人を狙い襲っていた。

今度は襲われていた女性も一緒になって。


地獄のような光景を見て俺は思わず後ずさりをしながら、自分の頬をつねる。


・・・痛い。


一体どうなってんだ。

これは本当に現実なのか。


まるであいつら・・・フィクションの世界のゾンビのようだ。

てことは俺もあれに襲われたらゾンビになるんだろうか。


いや、そんなこと考えてる場合じゃない。

逃げないと!でも・・・どこに?


思考が支離滅裂になってきたその時、ドンドン!とハンマーで叩いているような激しい音で玄関のドアがノックされた。


どうやら考えている時間はあまりないらしい。

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