なぜ上司は無能なのか

みそたくあん

なぜ上司は無能なのか

 何故こんな無能が上司をしているのだろうか?


 社会に出ると、少なからぬ人が直面する疑問であろう。

 およそ愚物としか言いようのない無能が、上司として偉そうな顔をしてふんぞり返っているのである。


 創業者や経営陣の血縁という、わかりやすい例ならいい。いや、良くはないが、理解はできる。

 社会に出すと恥になるから、自分の縄張りの中で飼い殺しにし、メンツがあるからヒラではなく役職を与える。

 そういった意図で無能が上司になるのは、部下にとっても会社にとっても不幸ではあるけども、プロセスを理解することはできる。


 しかし、それだけでは説明しきれないレベルで、無能な上司というものが多過ぎるように思うのだ。

 これは個人的な意見だが、体感では、上司の八割は無能である。まともなのは二割以下だ。


 何故なのか?

 とあるコメンテーターは『人は自分の能力が及ばなくなるまでは出世でき、その地位に至ると能力が足りなくなるため無能と判断されるようになる』という見解を示していた。

 なるほど、それはそれであり得そうな話だ。だが、ちょっと待ってほしい。

 その場合、無能と判断しているのは上司の上司なのではないか?

 任せた仕事が期待以上にはこなせていない。だから無能。そういうことではないか。


 しかし、ここで問題としている無能とは、そうではない。

 部下からしてみても、明らかに能力に疑問を感じるほどの無能な者が上司になっている。それが何故なのかという疑問なのだ。


 前置きが長くなって申し訳ない。

 何故上司には無能が多いのかという疑問に、筆者なりの見解を示そうと思う。

 これはあくまで個人的な考察と人生経験による一例であって、全てのケースに当てはまるものではないことを先にお断りしておく。


 何故上司には無能が多いのか。

 それは『無能でなければ出世できないから』である。


 では、分かりやすく例を挙げて解説しよう。

 まず、普通の上司、有能な部下、無能な部下の三人がいるものとする。この三人は縁故採用ではないものとする。


 普通の上司は業務で結果を出さなければならない。

 通常、管理監督者は実務を行わない(行えない)ので、部下に仕事を割り振ることになる。

 この場合、全ての仕事を有能な部下に任せるのが最も効率がいい。

 とはいえ、無能な部下を遊ばせておくわけにはいかない。無能な部下にも仕事をさせなければならない。

 しかし無能な部下は失敗するので、単独では業務を任せられない。必然的に、有能な部下と組ませて仕事をさせることになる。

 これで仕事は問題なく進むが、実際に仕事をしているのは有能な部下だけであり、無能な部下は何もしていないか、足を引っ張っているだけである。


 さて、仕事をすると、その内容についての評価が行われる。これは出世や昇給の指標になる、社会人にとっての重要事項だ。

 その評価であるが、多くの場合、ほぼ全ての企業において、直属の上司が行う。この例では普通の上司だ。

 もしこの上司が有能であれば、有能な部下を高く評価し、引き立て、自身もより高い地位へと上がったことだろう。

 しかし、普通の上司はそうしない。チームで仕事をしたのだからと、有能な部下にも無能な部下にも等しい評価を与える。


 そしてこうも考える。

 有能な部下を高く評価すると、いずれ自分の地位が脅かされるかもしれない。出世させたくないと。

 現実として、有能な部下は自身の中に明確な指針があるので、無意味だったり的外れだったりする仕事には反発することがある。

 一方、無能な部下は言われたことしかしない。それすらもできないことは多々あるが、普通の上司としては、無能な部下のほうが使いやすく可愛いと感じるようになる。


 必然、有能な部下の評価は辛くなり、無能な部下の評価は甘くなる。

 それでも仕事は滞りなく進んでいくので、普通の上司は評価されて出世し、その後釜には上司の地位を脅かす心配のない無能な部下が座ることになる。

 一方、有能な部下は正しく能力が評価されない会社に嫌気が差し、能力を正しく評価してくれる別会社に転職するか、やる気をなくして腐っていく。


 その後、有能な部下を失った普通の上司は仕事をこなせなくなり、晴れて無能な上司の仲間入りをする。

 無能な上司に引き立てられた無能な部下は新たな無能な上司となる。

 こうして、会社には無能な上司しかいなくなるのだ。


 いかがであろう?

 これはひとつの例である。しかし、非常に起こる確率の高い例だ。

 この構造の恐ろしいところは、この流れが次世代にも連鎖することである。有能な部下が搾取され、無能な部下が出世していくのだ。システム化してしまうのである。


 多くの企業で、部下は上司を選べない。不幸な連鎖は企業にとっても大きな損害である。


 では、この例で最も罪が重いのは誰なのか。誰が一番無能だったのか。


 それは無能な部下を採用した人事部である。無能を採用さえしなければ、この負の連鎖は起こり得なかったのだから。


 会社は人が動かしている。

 その人を採用する人事部は、会社を作っている部署だと言っても過言ではない。

 人事部には責任感を持って活動してほしいものである。

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