手術を終えて…完璧な女性へ生まれ変わるーーー

 俺は肩と腕がまだ完治していなかった為、2週間遅れての手術だった。


「それでは、はじめます」


「谷口さん、力を抜いてリラックスしてください」


手術室で全身麻酔を打たれた俺の目には天井がライトの光に反射して

ぼんやりと映っていた。

そして、瞼は一気に深い眠りへと吸い込まれていたのだった―――ーーー。


痛みなど、殆ど感じない……。


それから数時間が経過し手術が終わっていたことにも気づかず俺は

麻酔が切れるまで病室のベットで寝ていた。

俺が目覚めた時、時計の針は午後3時を過ぎた所だった。


身体に違和感がまだ少し残っている。


「失礼します」

担当医師が病室に入ってきた。

「谷口さん、具合いはどうですか?」

「ああ、先生」

雅也は身体を起こす。

「なんか、まだ、少し違和感が……」

「そうですか。まだ、完全に麻酔が切れていませんからね。

麻酔が完全に切れれば違和感もなくなるでしょう」

「あの、先生、手術は……」

「無事に成功ですよ。俺を…いや、俺達を誰だと思っているんですか?」

「神の手……」

「そう! 谷口さん、ご自分の胸を触ってみてください」

「え…」

雅也は自分の胸に手を当てる。

あ…この感触は…。ふっくらした胸が雅也の手の中にすっぽりとハマった。


俺の憧れだった胸……。


「谷口さんの理想の胸の形ができました。いや、今まで俺達が手掛けた中で

最高級の形に仕上がっています」

「あの…色々とお世話になりました」

「それじゃ、ゆっくりと休んでくださいね」

「はい」

 

担当医師は病室を出て行った。


その夜、俺が久しぶりにスマホを手に取ると、武人から留守番電話

メッセージが何十件も入っていた。


あ、武人だ……。


俺は武人からの留守番電話メッセージを聞いて、涙が溢れ出してきて

止まらなかった。


武人に会いたい…。会いたい…。


俺は何度も繰り返し、武人からのメッセージを聞いていた。

武人の肉声に俺は癒されていた。


「はははは…」


次第に俺は泣いているのか笑っているのかわからなくなっていた。


武人、寂しいけど、今はまだ会えない……。


麻酔が切れた当初は痛みもあった俺の身体は女性ホルモン注射で

少しずつ女へと近づいていった。

術後、安静のための3ヵ月の療養とリハビリを終えると晴れて

女の美しい体を手に入れることができる。


異性とセックスだってできる。


俺はこの激痛にも耐え、適度の運動と美容整形で憧れだった

完璧な女性へと生まれ変わったのだった。










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その左薬指に結婚指輪をはめたなら……… 神宮寺琥珀 @pink-5865

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