留守番電話メッセージ

 一方、武人も結婚式の準備と仕事が忙しく、雅也のことは

何も知らずに日々だけが過ぎていた。



 ある日のこと、雅也と『メシでも食おうか』と思い、武人が

【BRIDE】へ立ち寄ったが、店内に雅也の姿はなかった。


奥の部屋でこもって仕事をしているのかと思い、店内の様子を窺っている武人を

見かねた志乃舞が声をかける。


「篠宮さん、今日はどうされましたか?」

「雅也…。いや、店長いますか?」

「店長はリフレッシュ休暇をとって、暫く旅行に行っていますけど」

「え…」

(雅也、ふざけるなよ。俺、何も聞いてねーし)




そして、雅也と会えない日々が続いていた武人はLINEを送るが、

雅也から返事は返ってこなかった。武人は姿を消した雅也のことが

なぜか気になっていたのだった。


たまに武人が雅也のスマホに電話をしても、いつも留守番電話になっていた。


【ただいま、電話に出ることができません。メッセージがある方はピーという

発信音の後にどーぞ。ピー】

「武人だけど、お前、仕事、いつまで休んでいるんだよ。今、どこにいんだよ」

【ピー】

「武人だけど、またメシ食おうぜ」

【ピー】

「お前のマンション行ったけど解約してた。なあ今、どこにいるんだよ?

ったく、勝手に俺の前から消えんなよな」

【ピー】

「武人だけど、引っ越し先LINEしたから、また遊びに来いよ」

【ピー】

「お前、結婚式出れるんだろうな?」

【ピー】

「雅也…ちゃんとメシ食ってんのか?」

【ピー】

「雅也……死んでねーよな? 連絡まってる」


俺が武人からの何十件も入っている留守電メッセージを聞いたのは、

それから二週間も先の事だった――――ーーー。

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