祝杯

白川津 中々

◾️

息子が死んだ。


遺書はないが自殺の線が濃厚らしい。学校では快活で、成績も良く大学の推薦も決まっていたそうだから何故死んだのか理由が分からないとのことだ。影でいじめにでもあっていたんじゃないかと思ったが、それは絶対にないと学校側からわざわざ文章が送られてきた。律儀なものだ。


いずれにしろ別れた女との子供などどうなろうと知った事ではない。三流のホームドラマじゃないんだ。むしろ、養育費を払わなくてよかったなと感謝すらしている。よく死んでくれたと握手を交わしたい。金もそうだが、これでしがらみからも解放される。実に、素晴らしい。


この先の人生、実に楽しみしかない。きっといい事しか起こらないだろう。俺はまた、俺のためだけに生きられるのだ。名前すら忘れた子供のために金を使わなくていい。幸せ。この一言に尽きる。今日は高い酒を買おう。祝杯だ。新たな俺の人生に、乾杯。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

祝杯 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画