第15話 今日も一日ご安全に!
そしてルイスさんに転移魔法で管理を任された物件に送ってもらった。
ルイスさんは建物を見てる。
「あの、その、ルイスさんは『時空神の贖罪を受けし――』のフレーズ見ちゃいました?」
「あーうん」
やっぱりそうだった。
「まあ、この大陸で冒険者登録する人はいろいろあるから……アリスさんの魅了って結構強力だから、多分それと関連してるんじゃないかなって、予想はしてるけどね」
ハンザさんといいルイスさんといい、わかってくれてる人はわかってくれてる!
ちょっと嬉しい。
「わたしの魅了……、本当にコントロールできなくて。だから今回の物件管理は丁度良かったかなって思っていて、そうだ、ルイスさん、あの、この魅了、鑑定と連動してるっぽいんですよ、正直鬱陶しいっていうか疲れるんです。こういうの抑える方法、ご存知ですか?」
「鑑定スキルと魅了スキルの連動? え、何それ聞いたことないんだけど」
おうふ……魔法使い様でもお手上げか。
がっくり。
「それすごい興味あるんだけど、もう遅いから、後日話を聞かせてもらってもいいかな?」
「あ、それは、はい、大丈夫です」
「じゃあ、もうお帰り」
「おうち目の前ですよ。送って頂いて、ありがとうございました!」
「うん。またね」
ルイスさんはそう言って、ひらひらと手を振って、姿を消した。
転移魔法……便利~……いいなあ。
魔法使いは、転生転生を繰り返したどの異世界でもチートだわぁ。
わたしはハンザさんからもらった木枠を壊れてる窓に嵌め込んで、祈る。
――モンスターや盗賊がやってきませんように!
ま、これぐらいの神頼みぐらいはしてもいいでしょ。
自室に戻ると、例のスプリングの怪しいベッドがある。
……ベッドの枠もリメイクしたいけど、とりあえず、ベッドマットだけ今日は交換。
一人でよいしょ、よいしょと古いベッドマットと買ってきたベッドマットを取り換える。
疲れた……脱衣所の床が怪しいけど、お風呂入って寝よ!
翌朝――昨日のつなぎに着替えて、うん……これ、つなぎは予備を作ろう。今日は昨日よりも、もっと汚れるだろうから予備は必要。
一応この家にはふる~い魔導洗濯機がある……。これ、多分前のこの家の主が当時最新式で買ったんだろうな。
動くかどうか試しに何枚か入れて動かしてみよう。
途中で動かなくなったら怖いからちょっとだけ洗濯物を入れて動かしてみる。
おお、無事に稼働。
前の大陸にいた時は、ランドリーメイドがいたから、こういう魔導具はなかった。
強制力から逃れるために大陸移動したら、この大陸の方が、魔法はあるけど、わりとヒロイン転生を繰り返す前の世界に近づいてる感じだよね。
さてさて、残置物整理の為に、この家の中をぐるぐるまわろう!
ハンザさんが大物家具とかも処理してくれるって言ってたし!
二階の自分の部屋以外にも個室が3室あるのよね、多分ご家族用なのかな?
棚とかベッドとかあるだけなんだけど、やっぱ、ベッドマットとかカーテンとかは新しくした方がいい。
ぽいぽいと、アイテムバッグとなった巾着リュックに入れていく。
ベッド自体はリメイクしよう。
棚は意匠が凝ってたり作りがしっかりしてるのは残して、あとは巾着リュック行き。
ぼろ布は雑巾にしよう。古い羽毛と布を取り分けて羽毛は手芸に使いたいな。数があるのよね、とっておこう。
食器はな~。なんかこんなに使ってるの? っていうぐらいあるんだよね。
お食事処だったから数を揃えたんだろうけど……明らかに使わなかっただろうと思われる食器もかなりあるのよ。
整理すると、食器棚一つ分の食器が処分行き、それらを収納していた食器棚も処分行き。
あとは古いソファーやテーブルとかほかにもいろいろでてくる。
せっせと整理していたら、カランコロンと店舗のカウベルが鳴る。
「ハンザ工務店でーす。おはようございまーす」
わわ、もうそんな時間か!
ドアを開けると昨日とは違う人が二名玄関前に立ってる。
「本日屋根修理に来ましたー!」
「はい! よろしくお願いします!」
「棟梁から資材はこちらにあるって聞いてるんですけど」
「あ、はいはい、倉庫にご案内します」
玄関を出て、離れの倉庫に向かう。
「ここ?」
倉庫に近くにある建物は、多分前の持ち主の作業場。
「あーそこは、違うんです。わたしもよくわからなくて、多分、前の持ち主の方の作業場と思われます」
蝶番がギイと鳴き、ドアの中を覗き込む。
「あ、ほんとだ、なんかいろいろ作ってたな」
「あっちは炉があったし」
「棟梁がいうにはここの前の持ち主はドワーフとエルフのハーフだったらしいから、なんか作っていたんだろうな」
ハンザ工務店さんの二人はうんうんと頷く。
「確かにここも手入れしたいんですけど、今はやっぱり住居から」
「ですよね~。なんか棟梁は気になっていたっぽいから」
「棟梁はドワーフだから、なんでも作りたいんだよね、こういう作業場ってやっぱり好きなんだと思う」
へーそうなんだ。
そうよね、ハンザさんならきっとここで何を作ってたかわかるかもしれないし、お友達の作業場なら興味もあるだろうな。機会があれば案内しよう。
工務店の方を倉庫に案内する。
「ここにある資材でお願いします。ハンザさんがここで足りそうって言ってたので」
「了解です。えーと」
「そのー」
なんかお二人もじもじしてる。
……魅了スキルですか……。
「開始の前に一声お願いします!」
はい?
「いや、オレ達ふんわりふかふかベーカーリーでバイトしてるアリスさんに会った事があって」
「あ、はい」
「その『今日も一日ご安全に』って言ってもらった事があって」
ああ~そういえばパン屋のバイトで言ったことあったよ!
そうだよね、今日からリノベーションしてもらうんだもんね。
よし。
「わかりました! それでは今日も一日ご安全に!」
ピシっと敬礼すると、ハンザ工務店さんの人達もピシっと敬礼する。
「じゃ、アリスさん、馬車の荷台にいらない残置物載せてもらっても大丈夫ですか? 大物はオレ達がやりますんで!」
「あ、はい、アイテムバッグから取り出して荷台に乗せる感じにしますね!」
「無理しないでね」
「はーい!」
ハンザ工務店さんが乗って来た馬車って、お馬さんが大きい。
サラブレッドみたいなシュとした感じではないけれど、がっしりしてて、結構な重さも運んでくれそう。ばんえい馬みたいな感じよね。
ほんとはわたしがアイテムバッグをお渡ししちゃえばいいんだけど、アイテムバッグもやっぱりもう一個作るか~。
とりあえず、お馬さんにお水をだしておいてあげよう。
飼い葉はないんだよね、ごめんね、今度何か用意しておこう。
それに、勝手に何かを食べさせてこの馬が調子崩したら大変だし、聞いてからあげた方がいいよね?
残置物を荷台に乗せて、試験的に動かした魔導洗濯機で洗濯したタオルとか干してみる。
よし、これが終わったら、自室の壁紙剥がしからはじめようかな。
それで、今回きてくれた工務店さんのお昼を用意しよう。
サンクレルは港町だし海産物が豊富なので、この間、アサリをたくさん買っちゃったんだ。
クラムチャウダーとパンでいいかな……。
美味しくなるようにこの間作った調理用エプロンを身に着けて作るつもりなんだ。
『うさぎの足跡亭』の女将さんみたいに上手に出来ないかもしれないから、一応、エプロンについた調理のスキル、これで少しは美味しく作れるようになるといいんだけどな。
さあやるぞ~目の前のことに夢中になっちゃって、何かが進まない~なんてことしないようにしないとね!
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元聖女のざまあヒロイン、強制力から逃亡しスローライフをおくりたい! 翠川稜 @midorikawa_0110
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