ここから始まる青春奇譚
たいおあげ
第1話 そんなバナナ
「ここで何をしているんです?」
少女は、河川敷に1人座っている少年に話をかける。
その少女は、少し風変わりな姿をしていた。首にはしめ縄が巻かれており、顔も狐のお面をしていてよくわからない。そのしめ縄には古びれたお札が垂れ下がっていた。書かれている文字は滲んでいて読むことができない。
身長は、さほど高くは無く良くて中学生、いや小学生ともとれる。立ち振る舞いからは大人びた印象をうける。
服装は、着物のミニ丈といったこれまた珍しい格好をしている。その着物は、とても上質な物だ。やはり、どこかの良家のお嬢様ではないだろうか。
「さぁ、何してるんだろうね」
「では当ててあげましょう」
「3分待ってあげる」
◇◇◇
3分後
「カチカチカチカチピピピピー。時間だよ」
「……。あなたがタイマーなのですね……。まぁ、いいでしょう。そうですね。無難に『ここで黄昏る俺かっこいい』と思ってたというのはどうでしょう」
「ぶぶー。残念。また次回」
「答えはないんですか?」
「残念。1日1回」
「わかりました。また、挑戦しますね。ではまた」
「うん。またね」
そう言って、少女は去っていった。
少年は、その少女を目で追うこともなくただただ川を見ていた。だが彼の目には川など映っていなかった。その目には何が映っていたのか。はたまた何も見ていなかったのか。
◇◇◇
次の日
「昨日ぶりですね」
「……はぁぁぁ」
「あらあら、大きなため息ですね」
昨日の少女は昨日と同じ場所へとまたやってきていた。だが、それがお気に召さなかったのか、彼はご不満な様子。
「お前が何でいるのか、わかんねえの」
「はて? 何のことやら」
「で、何?」
「あなたこそ本当はわかっているでしょう?」
「さぁな」
お互い腹の探り合いときた。お互い何を考えているのかわからない。少女の場合、お面で顔が隠れているのが主な原因だが。
「あ、そうですよそうです。私のご尊顔みたいですか?」
「いやいい」
「えー。そこは見たいとかいうやつですよ。あとツッコんでくださいよー」
「どうせ美少女とかなんだろ」
「いやいや、案外グロテスクな顔かもしれませんよ?」
「なおさら見なくていいじゃんか」
「はぁぁぁ。あなたは全然わかっていませんね」
「わかる気がしないから大丈夫」
この少年にとりつく島などありはしない。全てなんだかんだで上手く受け流され、会話を強制終了させられそうになっている。
「さてさて、薄々勘づいてますよね?」
「さぁな」
「あなたは意地悪です」
「よく言われる」
「自覚があるなら治すべきですよ」
「これが性に合ってるからそのままにしとく」
「まぁ、いいです。ささ、本題ですよ」
少女はわざわざ彼の視界に入る位置まで移動して、話を始めた。彼は少女を見てはいるがどうでも良さそう。
「今日の解答はこれです。じゃじゃん」
「……」
「もうちょっと興味持ってくださいよ。というか、昨日のあなたの真似ですからね。ね? ね? 側から見るとイタイですよね?」
「それに俺はどう応えろと?」
「応えなどいりませんとも」
「まぁいいや」
やっと、彼は少女の事に興味を持ったのか、彼女のお面をまじまじとみている。いや、彼女自身をまじまじと見ている。
「なぁ」
「どうしました?」
「それコスプレってやつ?」
「いやいや、これは歴とした正装ですとも!」
「ふーん」
「いや、そこは『そんなバナナ』とでも驚いてくださいな」
彼は少女の発言を冗談としか捉えていないのか、真にうけていない。いや、そういう人もいるのかと多様性を感じているのか。
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初めまして。
息抜きに書いてありますので、更新はかなーり遅めになりますが、楽しみにしていただけたら。
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ここから始まる青春奇譚 たいおあげ @tai3939
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