第2話 高揚(高橋side)

正直に言うと、俺は虐められている。

現在進行形。

毎日、死にたくて死にたくてしょうがない。

でも死ぬ勇気はなくて。


「おいおい、高橋ィ。お前、また飯食ってねぇのか?アァ?」

同じクラスの、男子が俺の口に虫を近づけてきた。

き、気持ち悪い!!

「やめてくれ、嫌だ……!」

他の男子や女子はスマホを持ったり「キモ」と言い捨てたりして、嘲笑っている。

なんで、こうならなくては行けないんだ。

「刃向かってんじゃねぇよ!!」

「ゔっ」

ガッ、と頭を蹴られた。それと同時に虫は握りつぶされる。

血がドクドクと流れていく。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

「なんだテメェ?いつからそんなこと言うようになったんだァ?」

ぶちのめして、ボコボコにしたいのに、怖くて体が動かない。

なんで自分がこんな目に合わなくちゃ行けないんだ。

げしっ、げしッ。と体を蹴られる。


「そこのお前ら、やめろ!」


「えっ。……佐々木くん?」

学校一の人気者。そして陽キャ、優しい、イケメンなどと俺と正反対の人間。

いじめていた人間はその身を硬直させる。

「さ、佐々木さん……!?す、すいません!」

俺をいじめていた人達が一斉に震え出した。

え?何事?

同じクラスで、色々手伝ったりしてくれる佐々木くんは怖い人間?

「ねえ、高橋くん、質問いい?」

「……えっ、あ、はい」

考え事をしていて脳の処理が少し遅れる。

なんだ?もしかしていじめてた人たちが俺に万引きとかの罪を擦り付けてたり?

それで佐々木くんが怒ってる?

そうだとしたら、どうしよう。

「これはそういうプレイかな?」

「そ、そうなんだ!なあ、高橋?いじめられるの好きだよなあ?」

「……えっ」

手のひら返しでいじめてた人たちが同意を求めてくる。

違う、違うだろ。そうじゃない。でも、言えない。怖い。

「高橋、お前虐められるの好きだもんなぁ?」

「そうだよね?」

言わないと、違うって、言わないと。そうしないと。これは、佐々木くんからの救済の手なんだから。

「ねえ、お前らに聞いてないんだけど」

「っ……!ごめんなさ、ごめ」

グチャア

いじめてた人たちの腕が片手づつもぎれて、地面に落ちた。

「え……?」

いじめてた人たちは一斉に雄叫びをあげる。

「グァァァァァ!!ごめんなさい!佐々木様!許してください!!」

「い、いだい、金でも何でもします。ゆ、ゆるじで……」

僕をいじめてた人たちが、泣きわめいている……?


「アハハハハハハハハハハハハハハ!!」


「た、高橋……?」

いつの間にか、笑っていた。

笑いが止まらなかった。

「お前ら、馬鹿みてえ。俺をいじめたのはお前らだろ?」

笑いが、止まらない。口角が下がらない。

面白すぎる。

「高橋くん……そうだよね。信じていたよ」

佐々木くんの顔は、優しい笑顔だった。

はは、幸せだ。

「じゃあ行くよ。ちょっと痛いかも」

「え?……っ!」

バスッ、となにか腕に撃たれた。

一瞬痛みを感じたがそれも無くなる。

「……な、何?いまの」

「いまの?ああ、高橋くんに突然変異種になる薬を撃ったんだよ」

「へ……?」

突然変異種?それは国の殺害対象じゃないか。

さっきの莫大な力、もしかして佐々木くんの!?

そうだ。突然変異種になるには「突然変異種が人間へ突然変異種のDNAを撃ち込むこと」。

「僕、突然変異種なんだよね。だから国へ通報しないし彼らを練習台にやってみちゃってよ!」

「あ、うん……」

手に力を込める。これで、あっていたはず。

佐々木に従ったとかじゃなくて自分の希望。

確か武器とか物にも込められたはずだけどあいにく持ち合わせていない。

「行けっ」

そういうと、ビュンと黄色の光が出てきていじめてきた人達の体に穴ができた。

「ひっ。い、いてぇぇ!ごめんなさい!もういじめません!」

「……知らないよ。死ね」

力の使い方がすぐ分かる。想像した形に動かせるんだ。

体を捻ったり、爪を取ったり、骨を粉砕したり。



「おつかれ。高橋くん、やっぱ期待通り。今使ったのは黄色だから高揚だね。莫大な精神攻撃がポイント」

「そう、なんですか……」

「あ、タメでいいから。だからさ、こういつやつら一緒に殺さない?」


「……もちろん!」

俺は、幸せだ。

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