第25話 溺愛にとろかされて

 波乱のパーティから一年。


 あれから雪兎さんは変わらず会社で働き続け、春、新年度から新しく社長に就任した。

 雪兎さんが社長になって忙しさが増しても、彼は変わらずに私のことを大切にしてくれたし、私も、雪兎さんを支えようとそれまで以上に仕事に向き合った。


 そして今日。

 私たちはたくさんの証人が見守る中、変わることのない確かな愛を誓い合った。


 誓いのキスがファーストキスになろうとは、一年前は思いもしなかった。


『結婚まで口へのキスはしない』

 そんな今時珍しい堅物な雪兎さんの方針で、私達は健全なお付き合いを重ねてきた。


「ふふっ」

「どうした、海月」

 入浴を終えて新居の寝室に足を踏み入れた雪兎さんが、ベッドに座って思い出し笑いをする私を見て首を傾げた。


「誓いのキスの後の雪兎さんの顔を思い出してしまって。ふふっ」

「笑うな」

 誓いのキスで赤く染まった雪兎さんのあの顔は、私にとって一生忘れられない思い出になった。


「雪兎さん、可愛かったです」

「お前なぁ……そういう事言ってると──」

「ひゃぁっ!?」


 ドサリ──。


 私の身体は雪兎さんによって押し倒され、ふかふかのベッドの上へと沈んだ。


 目の前には色気を孕んだ雪兎さんの顔。

 胸元から覗く白くたくましい胸板。

 ほのかに香る私と同じシャンプーの匂い。


「もう、我慢はしないから。覚悟しろよ? 花嫁さん」

「~~~っ」


 そして私は、この不器用で分かりづらい溺愛にとろかされるのだ。


 永遠に、変わることなく。



END

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私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~ 景華 @kagehana126

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