8歩目 森の危険
河川敷にて……
「できた…!」
クリスは最後の野ネズミの解体を終わらせる
『お!終わったかぁー』
近くの大きめな石で日向ぼっこをしていたククルは、伸びをしながらクリスの方向へと近づく
『ちゃんと血の匂い落とせよー』
「…ん?…なんで」
心底不思議そうな顔をしてククルに問う
『血の匂いにつられた魔物に襲われるぞー。こう、ガオー!…って感じに』
ククルは凶暴な魔物の真似をしてクリスを驚かそうとする
が、クリスは無表情に戻り、1、2回瞬きをするだけだった
『…ゴホンッ!』
わざとらしく咳払いをして、話を変える
『狼とか鼻の良い魔物には襲われやすくなるから、匂いはできるだけ自然に近い匂いの方がいいな』
「分かった」
頷き、血のついた顔や腕をよく洗った
『うん。よし、とれてるな。…帰るか!』
ククルは肩まで飛び乗り元気よく言った
クリスも帰ろうとして一歩踏み出し、止まる
「…どっち?」
『…あっち』
静かに指をさす
「ん…」
『クリス、1人で森には行かないでね…』
森を出て真っ直ぐ歩いてついた川で、クリスは迷った
「…なんで?」
『こんな短距離で迷うからだよ!』
「………分かった」
だいぶ間をおいてから、クリスはしぶしぶという様子で了承した
『…クリス!息を潜めて屈んで!』
ククルは勢いよく命令する
クリスは素早く草むらに身を潜めた
「…どうし──」
『静かに!!』
ククルに口を塞がれる
『…魔物がいる…絶対に動かないで』
目を見合わせ、コクンと小さく頷く
「─グルルゥゥ」
狼の魔物の低い声が辺りに響く
その声でクリスたちは慌ててそちらを向き直り、その姿を大人しく見続ける
『…すぐに離れるはずだから、耐えて』
今度は目を合わせず頷く
狼の魔物は獲物を探すよう辺りを見回す
「…グルルゥーー」
その声が遠くなり、気が抜けたクリスは声を出しそうになるがククルに止められる
『…まだだよ。まだあいつは聞こえる』
クリスは口に手を当てもう一度気を張り直す
『うん。もう大丈夫だよ』
「─ふぅー」
その言葉を聞き、大きく息を吐く
『うーん。こういう時とか、人がいる時とか、話せないと不便だね』
「不便って?」
『めんどくさいし、大変だよねってこと』
「あぁ。そうだね」
『たーしか、このマークを使えばいけるはず』
消えていた手の甲の印が出てきて、光出す
「どうやって?」
『ここに意識を集中して、僕に伝われー!って感じでするといけるはず!』
あまり知らないのか、他より曖昧に説明する
「…………分かった」
あまり理解出来ていないが、とりあえず挑戦する
手に意識を集中?…なんかここを中心に考えて、えっと…ククルに伝える。
…聞こえる?…だめだな。聞こえろー!違うなぁ。
それにしても、………リス肉って美味いのかな?
『美味しくないよ!!』
予想外のタイミングで返答が返ってきて驚く
「いつから、聞こえた?」
『─ても、リス肉って美味いのかな?辺だより。集中して考えるほど僕の肉食べたいの?』
少し顔を青くしながらクリスを見上げる
「…できたし、帰るか」
『待って!返事して!僕もう今夜寝れない!!』
「ガキンチョじゃねーか!おかえり。お、罠できたんだな」
今日もガウルに出迎えられる
「ん」
クリスはまだガウルに素っ気ない態度を取る
「その肉食ってデカくなれよー」
「……ん」
その言葉になんとも言えない表情で返事をする
その日の帰り……
『肉食べろって…』
家への帰り道、契りを通して会話をする
『待って、おかしいでしょ。今のは完全に野ネズミの中の話でじゃん!明らかに僕を食べる話じゃないって!!』
『何肉かは…言ってない』
『真顔で言うのやめて!冗談か本気かわかんなくなるって!』
2人の会話は、初日の義務のような硬い会話ではなくなっていた
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どこまでも青い空の下で 黒丸 @kuromaru0522
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