7歩目 必要な知識


 次の日、彼らは森に来ていた

「野ネズミは新鮮な方がいいだろうし、帰る時に獲ろうか。それまで森で知りたいことは教えてあげるよ!」

 昨日の事は気にしないようなフリをして、ククルは元気よく言った

「…食べれる草、教えて」

 そのククルの気遣いに気づいたクリス

 だが、クリスは気づかないフリをしていつも通り平坦な声で言った

『その食べれるは、死なない程度の毒がある草も含まれてるってことでいいよね?』

 少し笑みを含んだ声が、クリスへと向けられる

『……なーんて─』

「うん、それでいい」

 ククルが冗談だという前にクリスが頷いた

『ま、待って!?毒だよ?死なないとしても体に害はあるからね?分かってて言ってる?』

 ククルは慌てて止めようとするが、無駄に終わる

「死ななければ、別にいい。…空腹を感じないなら」

『いや…でも…』

「ククル。僕に知識、くれるんだよね?」

 この1人と1匹の契りがある

 ククルが教えないのならば、この契りの条件に背くことになる

『ッ!?……はぁ、分かったよ。けど!いくらお腹空いても僕が駄目って言ったのは絶対に食べないでね!』

「…………分かった」

 長い沈黙の後、視線を逸らしてクリスは言う

『本当にたべないでね!』

 ︎︎本当に食べるんじゃないかと危機を覚え、ククルは焦りながら大声で言った

「まだやることある…から、死なない」

 ︎︎幼く、冗談にも聞こえる言葉も、クリスの力強く真剣な声色と目で語られ、ククルは何も言えなくなった

『なら、いいよ。とりあえず食べれる薬草とかから始めるね』

「ん」

 ︎︎ククルは、定位置となった肩から降りて、近くにあった草の説明を始めた

『これはこの辺りでよく生えている薬草、ミドリソウ。苦いけど食べると傷の治りが早くなるよ』

 その言葉でクリスは一枚を食べる

「…苦い?」

 知らない言葉だが、昨日食べた青い実と同じで次は食べたくないような味だった

『だから言ったのに。まあ、その怪我だと食べた方がいい、よね…』

 怪我の話になり、空気が少し暗くなる

「他は?」

 クリスが先に空気を変えようとする

『あ…えっと。こ、こっちはコウソウって言って、匂い消しの薬に使われる薬草だよ』

「…もぐ」

『食べるの早くない?説明終わってないんだけど…』

 少し引き気味に言うククルを無視して食べ続ける

『薬草に比べたら結構食べれるでしょ?』

「うん」

『そのままだと効果はないけど、よく見ればたくさん生えてるからお腹は満たせるんじゃないかな?』

「…あれは?」

 クリスは昨日食べた草を指さしながら聞いた

『んー?あぁ、魔力草だね』

 クリスが指をさした方向に走り、少し考えてから言った

「魔力草?」

『うん。魔力を養分として育った植物だよ』

「魔力って、どんなの?」

 ︎︎ククルの言葉に難しそうに首を傾げながらクリスは問う

『うーん、なんて言うのかな。空気中にある、生き物に必要なもの…かな?生き物の体にもあって、多いと体が丈夫だったり、病気にも耐性が付いたりするんだよ』

「…少ないと?」

 ︎︎クリスは自分が少ないであろうと考え、デメリットを聞く

『体の成長が遅かったり、力が弱かったり…他にも色々だね。まあ稀に、魔力が多すぎたりして制御出来ずにこうなる人もいるらしいけどね』

「ふーん」

 クリスは自分には関係ないと分かり、中途半端に話を聞き流す

「僕の魔力、どのくらい…ある?」

 不安そうな瞳でククルを見つめる

『…僕には分かんないよ…。まぁ、まだ子供だしなんとも言えないんじゃない?少なくても、上手く使えればある程度は戦えるらしいから。もし少なかったとしてもその辺りの知識も任せて』

「ん…任せた」


 その後、クリスは森での知識をある程度覚えることができた───

 

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