第五章 結末
1 英国本土での休戦。そして将来。
1940年8月、ロンドンの影で激動の時代が進行していた。ヒトラーは、イギリスが完全に降伏したと信じ込む一方で、現実には彼の見積もりが大きく外れていたことに気づかないままだった。休戦協定が調印された直後も、イギリスは決して完全に屈することはなかった。国内では疲弊しながらも戦う者たちが、抵抗の意志を失わずに残っていた。そして、イギリス政府は同盟国、特にアメリカとの連携を強化し、国外での攻撃的な戦術を展開し続けた。
ヒトラーは、自身の世界制覇の夢がいよいよ実現に近づいていると信じていた。二正面戦争の恐怖が去り、彼は新たな戦略を練り上げていた。彼の次なる大きな目標は、1941年のソビエト連邦への侵攻であった。レーダー提督の海上戦略計画「スフィンクス作戦」が進行し、地中海を支配し、イタリアと連携して中東の重要な石油供給源を掌握する計画が着々と進められていた。
ヒトラーの野心は、すでに東南アジアに進出していた同盟国日本との協力によって、アメリカと対決するという新たな段階に向かっていた。彼の豊かな想像力は、未来に向けて計り知れないほど輝かしい展望を描いていた。彼は、自身が描く大帝国の地図に思いを馳せながら、確信に満ちた眼差しで次の戦略を練っていた。
しかし、ヒトラーの楽観的な視点は現実の複雑さを十分に反映していなかった。イギリスの抵抗、アメリカの介入、そして世界中で広がる戦争の渦巻く中で、彼の夢が果たして実現するかどうかは、まだ未知数であった。戦争の終息を迎えず、前途多難な道が続く中、ヒトラーはその先に待ち受ける運命を見据えながら、次なる一手を打つ準備を進めていた。
そして、ヒトラーの野望がどこへ向かうのか、世界の未来がどう形作られるのかは、歴史の深い闇の中にまだ隠されている。
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