第5話 恐るべきドロップアイテムの正体?

 さて、ポイズンスライムに襲われ、すっかり肝を冷やしてしまったイッ君…辛うじては避けられたようです。

「じゃぁ、ドロップアイテムを回収するとしましょうか。」

 ポイズンスライムが辿ってきた跡、焼け焦げたように爛れた草の道を歩き始めるキャッシー。

「ドロップアイテム?」

 イッ君、首を傾げる…ドロップアイテムであれば、ポイズンスライムを倒した際に出現するのでは?と彼は思っていた。


 焼け跡を辿り、平原の外れにある林へ何の迷いもなく進んでいくキャッシー。

 その後ろから、周囲を警戒しつつあとに続くイッ君。


 やがて、平原の陰が消える頃、何かに気づいたキャッシー。

「当たりね!」

 そう言って駆け出し、背の高さほどある雑木の間を抜け、少し開けた所に出る。


 眼前に広がるのは、商隊らしき馬車群の名残と大量の荷物。

 商人をはじめ、商隊の護衛だった者たちの骸ろが転がり、ワンコ山猫ニャンコ禿鷲ハゲドリのような動物が商隊に群がっている。


「さっさと払い除けないと、他の連中を呼び込んでくるよ!」

 バスターソードを構え、群がる動物たちを駆逐し始めるキャッシー。

 剣を振り回すキャッシーに臆すること無く、襲いかかってくる動物たち。


『チクショー!

 あいつら人間ヒトの味を知ってやがる!

 イッ君、キャッシーの背中に回り込むんだ!』

「はっ…はぃぃ…。」

 18号に促され…もとい、憑依され有無を言えぬままにキャッシーの背後に陣取り18号を振り回し始めるイッ君。


「あら、坊や。

 なかなかの剣捌きね♪」

 ワンコ山猫ニャンコの胴を袈裟斬しながら陽気に語りかけるキャッシー。

「そりゃ、ど~も。」

 急降下してくる禿鷲ハゲドリの首を正確に切り落としていくイッ君。


 見る間に動物たちの躯が折り重なり、ようやく動物たちも撤退する。


「さっ、お宝、おっ宝ぁ!

 イッ君は周囲の警戒と遺留品を確認してねぇ♪」

 イッ君へ指示を出し、商隊の馬車内や、周辺に散乱した木箱などを物色し始めるキャッシー。

 イッ君は肩を竦めた後、先程まで争っていた動物たちの躯の周辺から、観察を始める。


 動物たちの躯に混じって落ちているのは、食い散らかされた人間ヒトの手首や足首が見える。

『やはり、人間ヒトの味を知っていたか…。』

「なにか問題でも?」

 ピント外れの質問に、溜息をついてしまう18号。

『大有りだ!

 こんな奴らが団体で村に押しかけた日には、村が!』

 青ざめるイッ君。

『まぁ、今回はこれまでだが…。

 逃げた連中も人間ヒトの味を知っている可能性がある。

 ギルドへ報告の上、報奨付きの討伐クエストを…。』


 そして地面には二振りの聖剣が手首とともに落ちている。

『ついでにの死亡報告もしなければね。』

 帰れる希望も有ったであろう故人の遺品に、背筋に冷や汗を感じるイッ君だった。


 不意に隣の藪が揺れた気配…耳をすませば、ガサガサと物音がする。

 思いっ切り藪を切り裂くイッ君!眼前には二匹のゴブリンが、大きなズタ袋を棍棒で突付いている。

『ヤツラの喉を潰せ!』

 言うが早いか、ゴブリンを一閃するイッ君!無事、二匹のゴブリンの首と胴体はサヨナラした。

『叫ばれると不味いんだよ!』

 飄々と語る18号と、身体を利用されて固まるイッ君。


 事態を察知したキャッシーがイッ君の下に駆け寄り、状況を見て溜息をつく。

「ゴブリンが出張ってきたか…潮時ね。

 荷物まとめたら、トンズラするわよ!」

 そう言って、ゴブリンの首を持ち、馬車へと戻るキャッシー。

「イッ君、そのズタ袋も持っていくよ!」

「へ~い。」

 イッ君がズタ袋を持ち上げると底が抜けて…

「あらら、中身が出ちゃったか。」

 呆れたキャッシーの視線の先、イッ君の眺めているモノは、亜人を含めた子供ばかり五人居る。

 全員が恐怖したまま強張り、瞬きが出来ているのか不安なくらい微動だにしない。


「取り敢えず、全員を馬車に載せちゃいな!

 イッ君は、前に回ってね♪」

 キャッシーは三人の子供を抱き上げ馬車に向かって走る。

「へっ?」

 イッ君、キャッシーの最後の一言に疑問符を打ちながら、子供二人を肩に担いで走る。

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その聖剣の名前は『グルメの18号』 たんぜべ なた。 @nabedon2022

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