第4話 拉致られて狩りに行く?

「さぁ、清々しい朝よ、イッ君!

 空も快晴で、絶好の狩り日和!」

 鎧戸を開き、キラキラとほとばしる朝の陽光に照らされるビキニアーマー女キャッシー

『狩りじゃ!狩りじゃ!』

 18号もはしゃいでいるが

「zzz…」

 部屋の主イッ君は、絶賛爆睡中!

「ほらぁ~、起きなさい、イッ君!」

 優しい言葉をかけ、ベッドへダイブするキャッシー。

「グエェ~!」

 気持ちいいくらいに押し潰され、ヒキガエルのようなうめき声をあげるイッ君。


 閑話休題それはさておき

 見渡す限りの大平原、二人の人影が佇んでいる。

「なぁ、キャッシーさんよぉ。」

「どうしましたイッ君?」

 大平原を眺めるイッ君とキャッシー。


「たしか初級冒険者さんのクエストと言えば、『薬草採取』が鉄板じゃないの?

 クエストの掲示欄も、そんな旨の説明があったはず…。」

「ええ、そんな事も有ったわね。」

「そんな事って…。」

 吹き抜ける爽やかな風に身を任せるキャッシー。

 意気消沈するイッ君。


『狩りじゃ!狩りじゃ!』

 あいも変わらず陽気な声を発する18号。


「可哀想なイッ君の為に、優しいお姉さんが説明してあげよう!」

「は、はぁ。」

「まず、イッ君は初級冒険者さんであることは事実よ。」

「ですよねぇ~。」

「さて、イッ君とパーティーを組んでいる人は誰かしら?」

 すまし顔でイッ君に視線を向けるキャッシーさん。

「鏡を渡そうか?」

 半目開きのイッ君が答える。


「さて、そんな私はどのぐらいの経験を積んだ冒険者でしょうか?」

 おめめパチパチのキャッシー。

「……あぁあぁ~~~っ!」

 イッ君、頭を抱える。


 しばしの沈黙…イッ君が頭を抱えているが流れる。

 ようやく落ち着きを取り戻すイッ君。

「悟りを開いたみたいね。」

 可愛くウィンクするキャッシー。

「ぁぃ。」

 消え入りそうな声で返答するイッ君。


「さぁ、気を取り直して!」

 イッ君の背中を力強く叩くキャッシーさん。

「痛っ!」

 イッ君、本当に痛そう。

「狩りをしましょうねぇ~!」

 再度、イッ君の背中を力強く叩くキャッシーさん。


『狩りじゃ!狩りじゃ!』

 すっかりノリノリで陽気な声を発する18号。


 そんな彼の声に呼応するように、風下から押し寄せてくる、紫色をした粘液質の液体。

「な…な…」

 その容姿を視認したイッ君は息を呑む。

 足元においたズタ袋から、カイトシールドとショートソードを取り出すキャッシー

「最初のお客さんよ♪」

「な…な…」

 状況を理解できないイッ君に向かって、液体が襲いかかってくる。

『オレを呼べ!』

 18号は叫び、イッ君が応える前に自身を彼の手に出現させる。

「は?は?は?」

 戸惑うイッ君の身体を憑依しノットリ、襲ってきた液体を18号。

 両断された液体は、イッ君へ降り注ぐ事無く蒸発する。


「す、すごい…。」

 自分の眼前で起こってしまった出来事に戸惑っているイッ君。

 彼の手には、漆黒にも関わらず、クログロと禍々しく輝く刀身…それが18号の正体。


 そして、液体が辿ってきた跡を見て戦慄するイッ君。

 ナメクジが這ったような跡には、焼け焦げたように爛れた草のようなものがある。

「キャ…キャ…キャッシーさん。」

 冷や汗をかきはじめるイッ君。

「はいはい♪」

 キャピキャピ声で応えるキャッシーさん。

「さっきぶった切った液体って…。」

 震えながら、キャッシーに向き直るイッ君。

「ええ、スライムよ。」

「ス…ス…スライムゥ?」

 イッ君の想像するスライムは、プルンとしたクリのような水色のボディーに目と鼻と口がついてようなものです。


「ええ、そう。

 もっとも、今回襲ってきたのはポイズンスライムよ♪」

「はっ?」

「襲った相手を毒で溶解することは勿論、毒を使って対象を絡め取ることもするのよ…。

 危なかったわねぇ~。

 18号がいなかったら、貴方即死だったわよ。」

 嬉しそうに解説してくれるキャッシーさんに対し、能の処理が|追いつかないイッ君はただ立ち尽くすだけだった。

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