爆乳姫子さんは世界樹まつりに夢を見る(後編)

世界樹まつりの前日


小中学生が集まって参りました。高校生もいらっしゃいますよ。みなさん楽しみにしていただきありがたく存じます。

明日には笹を立ち上げてしまいます。短冊を飾るには今が一番良いのではないでしょうか


§


「雪ねえさま お手伝いさせてください」


美少女が手伝いに来てくれました。私を姉と慕ってくれる中学生の百合さん


黒髪も私と同じように腰まで伸ばして前髪を切りそろえております。

過去に色々とございまして彼女から『世界樹の聖女』として崇められているのです。

ここまで慕われると可愛がるのは当然の義務でしょう。百合さんの可愛らしさを語り始めれば夜を明かす自信がございます。しかし残念ながら今はお祭りの準備がございますのでまたの機会といたしましょう。


それでは可愛らしさを生かして短冊受付をお願いしましょうか



「このサインペンは姉さまに『聖女の術』をかけてもらったからね。ないしょのひみつだよ」(小声)


「わかりました。姫子お姉さん ないしょのひみつですね」(小声)



そこのおふたりは何を話しているのですか 姫子さんもお仕事いたしますよ。



§



「普通のお願いはこっちの黒いサインペンを使って、恋愛のお願いは『恋愛用サインペン』を使ってもらうの」


「短冊はどちらも同じもので良いですか」


「恋愛のお願いはサインペンと同じ色の短冊を使ってね。赤い短冊には赤いサインペンを渡すんだよ」


「同じ色では書いても見えませんよ」


「見えないから本音を書けるでしょ」


「姫子お姉さんは天才です」



なるほど本音を書けるのは魅力ですね。これが『七夕の発明』ですか

でもあのインクを足した意味がありませんよ。


「ちょっと試してみようか 百合ちゃん 短冊に『ひーくん』って書いてみて」


「あのっ 姫子お姉さん 恥ずかしいです」


この可愛らしい妹はお付き合いをしている愛しい殿方がいらっしゃるのです。

みんなが知っている仲なのですから思い切って書いてみましょうね。



「・・・書けました。 ・・・けど本当に見えません。ちょっと残念かも」


恥ずかしくてもみんなに自慢したい 可愛らしい乙女心でございます。



「大丈夫 ここに姉さまの聖なる光を当てるのですよ。ほら」


ちょっと姫子さん 聖なる光ってなんですか 

紫外線を出すハンディライトですよね。殺菌作用がありますから聖なる光と言えなくはないですけど・・・


『ひーくん 大好き』ですか


本音が書けるのも悪くはございませんね。真っ赤な顔の百合さん お可愛いことです。



「雪ねえさまには隠し事は出来ないです。さすが聖女さまです」



百合さん 聖女は関係ありませんよ。化学反応ですからね。不思議な力ではありませんよ。


姫子さん 何か吹き込みましたね。目をそらさないでください。



§



「片思いの相手がいる人はこの短冊セットを使ってください」


徐々に増えてきたお客様を相手に短冊とペンを配る百合さん


妙にピンポイントで配っている所を見ると内情を把握しているようです。乙女ネットワークは学校、学年を超えてつながっているようです。まあ 私も大抵の事情は把握しておりますが・・・

だって乙女なんですもん♪



「特別セットの人は相手の名前を大きく書いてくださいね。自分の名前は書かないでくださいよ」


自分の名前は書かないのですか それで想いは届くのでしょうか

姫子さん 何を企んでいるのでしょう。



「書けた人は笹に飾ってね。本気で想いを届けたい子は出来るだけ低いところに付けると効果的だよ」



意外なことを指示しています。高いところに付けがちですが低い方が良いのですね。

ますますわからなくなってきました。


私にも説明がないのは寂しいですよ。百合さんには何か説明したようですし・・・

親友にないしょなのはどうかと思うのですよ。泣きますよ。



「お嬢なら説明しなくてもわかると思ったのに」


察しが悪くて申し訳ございません。



「当日になったらね・・・ そうすれば・・・ でしょ」


あっ 耳元でささやかれるとぞくぞくしてしまいます・・・ ではないですね。


良き発明です。素敵ですね。驚く顔が楽しみです。


短冊を書いた人は当日の夜に必ず集まってくださいね。出来れば意中の方とご一緒してくださいませ



§



「聖女ちゃん 短冊付ける前にお祈りしてください」


同級生からお祈りをお願いされている百合さんです。学校では『聖女ちゃん』なんて呼ばれている百合さん

お祈りしてもらうと恋が叶うと評判なんですよ。

何と言っても自分の恋を叶えましたからね。説得力抜群でございます。



「雪ねえさまが祈りをささげていますから効果ありますよ。何と言っても世界樹の下ですからね」


自慢気に私を立ててくれるのは嬉しいのですがそれ以上聖女伝説を広げないでくださいませ




「商売繁盛はどれが良いんだい」


商店街の方々もいらっしゃっております。

商売繁盛なら金色の短冊なんていかがですか 金運がよさそうですし



「それじゃあ 聖女の何とかって言うのをこれにもやっとくれ」


おじさままで何をおっしゃっているのですか


§


みなさんがお帰りになった後、謎のスタッフさんがやってきまして色々と設置作業をしておりました。姫子さんが手配した爆乳家関係の方々です。

イベント事に慣れていらっしゃるので作業が早いですね。


笹を囲むように棒状の器具が設置されました。身長ほどの高さがあるでしょうか

明日の夜、笹をライトアップするための照明器具でございます。

配線なども気にならないように綺麗に処理されておりましてプロのお仕事は素晴らしいですね。


そして大きな笹がゆっくりと立ち上がります。

短冊を一つも落とさぬよう慎重にしずしずと


立ち上げてみると笹の大きさを実感いたします。

親バカの暴走の末にここまで大きい笹を用意した父

恥ずかしくもありますが、愛情を感じます。

じゅうななさいなりに感謝しておりますよ。


笹の位置が決まると照明の微調整 ここでもプロのこだわりが見えます。

すべての短冊が願いが浮かび上がります。


そして姫子さんの『七夕の発明』

・・・お見事です。

明日 みなさんに驚いて頂きましょう。



    §    §    §


旧暦七月七日 世界樹まつり当日の朝となりました。


午前中からお祭りは始まります。

今年はご近所有志の方々によりみたらし団子のお接待がございます。


当家からも冷えたお茶を提供いたします。暑いですからね。

ミスト装置も完備しましたが気をつけてくださいよ。


商店街の方からはかき氷が提供されます。昔ながらの大きなかき氷装置を持ち込んでの本格派

人気を博しております。一杯百円の破格ですからね。


ヨーヨー釣りに射的まで安価に提供されました。一回10円 

材料費も出ませんよ。


みなさまありがとうございます。


§


夕刻になってようやく暑さも落ち着いて参りました。この広場は丘の上

そよ風を感じる程度に風が吹いて参ります。


笹も揺れて良いですね。


日没を待って点灯式が行われます。司会は爆乳姫子さん

選ばれた小学生の男の子が点灯ボタンを押しました。


ため息のような歓声 綺麗でございます。


点灯の大役を果たした男の子 姫子さんにナデナデされております。

ちょっとした笑いの起こる中、ひとりだけちょっと不機嫌な女の子がひとり


あらあら嫉妬ですか お可愛いことです。

男の子は気が付いていない模様 前途多難な恋でございます。


§


いつの間にか空の明るさは無くなり星がちらほらと見られます。

七夕さまの星も見えていますね。

夜空に描く恋の物語 昔の方も粋ではございませんか


そろそろ姫子さんの『七夕の発明』披露いたしましょう。


「みなさんにお願いがあります。今から音楽が流れます。その間だけどうか私語を慎んで頂きたいのです。お許し頂けますでしょうか」


姫子さんの呼びかけにみなさんが拍手で応えます。


~♪


広場は静かになりました。そして静かな音楽が流れ始めます。


「これからお見せするのは恋の想い ある人を恋する気持ちが輝きます。どうぞご覧ください」


照明が落ちます。

代わって青紫の照明が当てられた笹飾り


あの恋愛用サインペンで書かれた「好きな人の名前」が暗闇に浮かび上がりました。


「高い位置にある短冊は小さくて見えないかも知れません。低い位置にある短冊は想いを届けたいと近くに付けられました。御自分の名前を見つけた方 声を出さないでくださいね。あなたは誰かに想われていますよ。受け止めてあげてくださいね」


約束を守って静かに笹を見上げるみなさん


青白く浮かび上がった名前たち こんなに恋の数があるのですよ。


「ここで恋が叶うように『白百合の聖女さま』に祈りを頂きましょう」


ほんのりと照らされる百合さん 姫子さんにお願いされていたのでしょう。迷うことなく胸の前で指を絡めて祈りの姿勢


「この想いが届きますように 世界樹のご加護がありますように」


ゆっくりと照明が落とされ暗闇になった後、通常の照明に戻りました。


みなさん放心状態です。サプライズは成功したようですね。


自分の名前を見つけたのでしょう。胸に手を当てて静かに目を閉じる女の子

意中の方を見つめている男の子


見つめ合っているご夫婦もいらっしゃいます。良い光景でございます。

こちらまで幸せになります。


私も名前を見つけました。『雪ねえさま』『雪ねえさん』

私も沢山の妹たちから愛されていますね。ありがとうございます。


『お嬢』


・・・姫子さんもありがとうございます。私も書きましたからね。


『あかね』『おっぱいのおねえさん』『姫子お姉さん』


姫子さん 愛されていますよ。



恋愛以外の願いも叶って欲しいですね。

百合さん 一緒に祈ってくれますか


「もちろんです。雪ねえさま」


「「みなさんの願いが星に届きますように」」


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――――


さらさらと 五色の恋を 纏う笹 ただ静かに 想い届ける









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「じゅうななさい」は世界樹まつりの夢を見る 音無 雪 @kumadoor

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