特殊警察

白兎

特殊警察

 ある日の事、俺が車で信号待ちをしていた時、歩道でうずくまる男性を見かけた。周りには誰もいない、とても苦しそうにしている姿を見て、このまま放っておけず、俺のこれからの用事も、大して急ぎではなかったので、車を邪魔にならないような路肩に、ハザードランプを付けて停車させ、男性の元へ駆け寄り声をかけた。しかし、男性は呻くだけでまともに答えることも出来ないようだった、額には汗が滲み、苦痛の表情をしている。俺は急いで救急車を呼んだ。暫くして、救急車が到着し、救急隊員に説明すると、すぐに男性を搬送していった。救急隊員に俺にもついて来るようにと言われたので、自分の車で、搬送先の病院まで行った。事件性はないだろうけど、警察を呼んだので、事情聴取があると言う。ただ通りかかり、親切心から声をかけて、救急車まで呼んであげたのに、何だか嫌な気分だった。悪い事をしたわけでもないのに、警察から事情聴取されるとは。


 暫くして、警察官がやって来た。そして、俺に向かってこう言った。

「特殊警察だ。あれといつ接触した? 少し話を聞きたい」

 そして、俺は何故だか連行されたのだ。白黒のいわゆるパトカーではなく、真っ黒な車種の分からない車に乗せられた。

「ちょっと待ってくれ! 俺は何もしていない」

 俺は慌てて弁明しようとしたが、

「黙って乗れ」

 と一蹴された。


 取り調べ室へ入ると、椅子に座るよう促され、テレビで見るような容疑者と刑事の構図が出来上がった。

「では、聞こう。あれとはいつ接触した?」

 特殊警察と言った男が聞く。

「ついさっきだ。歩道でうずくまって苦しそうだったから、車を止めて声をかけた。ただそれだけだ」

 特殊警察の男は黙って頷き、

「そうか。お前はあれが何者か知らないのか?」

 と聞いた。

「知らない。一体、あの男は何者なんだ?」

 俺が聞くと、

「お前は知る必要はない」

 と突っぱねる。事情聴取しておきながら、俺には何の説明もない。全く理不尽だ。

「俺はあんたに従って、ここまで来て話をしているんだ。あの男がそんなに重要な人物なら、俺に感謝してもいいんじゃないか? あの男が一体何者かぐらい教えてくれてもいいだろう?」

 俺がたまりかねて、強い口調で聞くと、

「まあ、いいだろう。だが、これを知れば、お前も普通には過ごせないと覚悟するんだな」

 と前置きして、特殊警察の男は言った。

「あれはエイリアンで諜報員だ。この地球の情報を盗んでいる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

特殊警察 白兎 @hakuto-i

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ